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第三章 出会いと契約
閑話 カルナーク戦線03
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結局攻撃していたサイクロプスの部隊はクラレッタとシャーの部隊が到着すると、数発の射撃の後撤退していった。
軌道上の巡洋艦に索敵してもらった場所に偵察を送ると、悪名高いカルナーク陸軍のニールスト対機械人用ライフルが放棄されていた。
この銃はカルナーク軍がアンドロイド用に開発した銃で、29.3mm炸裂弾を使用する強力な銃だった。
サイクロプスが用いた場合の有効射程は四キロに及び、一部のエース級になると五キロ先から当ててくる事すらある恐ろしい銃だった。
「陣地構築しての待ち伏せだ。ざっとサイクロプスの小隊規模……二、三十人はいるな」
「あら、ライフルも放棄しているし、狩り時じゃないかしら?」
シャーとクラレッタの会話を聞いたパパは追撃を決断した。
罠の可能性ももちろんあったけど、それ以上にあの厄介なサイクロプスたちを倒す機会を逃したくなかった。
この時期にはすべての収容所と牧場が解放されていたため、今残っているカルナーク軍のサイクロプスを全滅させれば敵の脅威を大きくそぐことが出来ると言われていた。
だから、この判断は仕方がなかった。
シャー達先発部隊の後ろから本隊も進撃を開始して数時間後。
その間に数度小銃のみの襲撃を受けたものの、部隊は逆襲で八人のサイクロプスを仕留めていた。
損傷は軽微で、連隊は久しぶりの戦果に浮かれていた。
そんな時、一番会いたくない奴らに会ってしまった。
「くそ……来やがった。本部! こちら先発隊のシャーだ。カルナーク人の避難民を発見、数は約千人、馬車を用いて街道をこちらに向かっている」
カルナーク軍がこの当時行った作戦のうち、最も恐れられたのがこれだった。
避難民や難民に偽装した……いや、真実彼らは避難民ではあった。
ともかく、避難民や難民の集団を武装させて、近距離に近づいたところで襲撃をかけるのだ。
これだけなら大した事はなかったが、奴らの目的はこちらの損害ではなかったのだ。
やつらはこちらの心を攻撃していたのだ。
「シャー、クラレッタ! 威嚇射撃しつつ拡声器でその場にとどまるように指示しろ! そのあとは子供と妊婦、特に赤ん坊を連れた人間を集団から隔離しろ、急げ!」
矢継ぎ早に指示を出すとパパは頭を抱えた。
「ああ……畜生またかよ……神よ、罪深き我と異界の無垢なる者をお救いください……」
この当時の異世界派遣軍の前線指揮官の人間は大概こうだった。
罪悪感と恐怖で心が押しつぶされていた。
「動くな! 全員荷物を置いて両手を上げろ!」
装甲車から下車したSS達が、携行式レールガンを構えて難民に近づいていく。
本当なら問答無用で発砲したいところだが、一般人への先制攻撃は連邦政府、特に大統領の意向で強く禁じられていた。
このバカげた規制が解除されるまで、カルナーク戦の地獄は終わらなかった。
「撃たないで! もう子供は限界なんだ!」
「おなかが痛いの……陣痛が始まったかも……」
「この子にミルクを……お願い……ミルクを……」
口々にわめきながら近づいてくる難民達。
SS達は危機感を覚えてレールガンの発砲準備を行う。
この携行式レールガンは発砲前に銃身の冷却とバッテリーの通電を行う必要があるという欠陥品だった。
総重量18キロ、弾倉とバッテリーの双方を携行する必要があり、発射の手間と信頼性の低さから初期異世界派遣軍の負の象徴とも言われる悪名高い通称、「バッテリー内蔵式鉄パイプ」だ。
当然、そんな銃の事はカルナーク人にとっては常識であり、突くべき弱点だった。
銃の冷却が終了まで数秒の所で、必死に赤ん坊を抱きかかえていた親たちが一斉に泣きわめく赤ん坊をSS達に投げつけた。
瞬間、激しい爆発が起き、SS達の方に向かって無数の鉄球が飛び散った。
赤ん坊の体内にアンドロイド用の小型爆弾を仕掛けるという、カルナーク陸軍の正式兵器。
「ダニャテテ(かわいいあんよ)」と呼ばれる兵器だった。
爆発は小規模だが、高い貫通力を持つ鉄球を内蔵センサーによって投げ手を避けて、アンドロイドや人工物に向かって射出する高性能爆弾だった。
ちなみに、仕掛けられた赤ん坊は数時間しかもたない。
この気の狂った兵器を開発したカルナーク軍の将官は演説でこう言っている。
このダニャテテは百発投げても一人の地球人をも殺せないかもしれない。
しかし、ダニャテテ十発の爆発を見た地球人の心はもう、無事ではない。
諸君、それが、勝利だ。
爆発が収まると、パニックを起こした民衆があちこちに走り始めた。
虐殺が始まった。
軌道上の巡洋艦に索敵してもらった場所に偵察を送ると、悪名高いカルナーク陸軍のニールスト対機械人用ライフルが放棄されていた。
この銃はカルナーク軍がアンドロイド用に開発した銃で、29.3mm炸裂弾を使用する強力な銃だった。
サイクロプスが用いた場合の有効射程は四キロに及び、一部のエース級になると五キロ先から当ててくる事すらある恐ろしい銃だった。
「陣地構築しての待ち伏せだ。ざっとサイクロプスの小隊規模……二、三十人はいるな」
「あら、ライフルも放棄しているし、狩り時じゃないかしら?」
シャーとクラレッタの会話を聞いたパパは追撃を決断した。
罠の可能性ももちろんあったけど、それ以上にあの厄介なサイクロプスたちを倒す機会を逃したくなかった。
この時期にはすべての収容所と牧場が解放されていたため、今残っているカルナーク軍のサイクロプスを全滅させれば敵の脅威を大きくそぐことが出来ると言われていた。
だから、この判断は仕方がなかった。
シャー達先発部隊の後ろから本隊も進撃を開始して数時間後。
その間に数度小銃のみの襲撃を受けたものの、部隊は逆襲で八人のサイクロプスを仕留めていた。
損傷は軽微で、連隊は久しぶりの戦果に浮かれていた。
そんな時、一番会いたくない奴らに会ってしまった。
「くそ……来やがった。本部! こちら先発隊のシャーだ。カルナーク人の避難民を発見、数は約千人、馬車を用いて街道をこちらに向かっている」
カルナーク軍がこの当時行った作戦のうち、最も恐れられたのがこれだった。
避難民や難民に偽装した……いや、真実彼らは避難民ではあった。
ともかく、避難民や難民の集団を武装させて、近距離に近づいたところで襲撃をかけるのだ。
これだけなら大した事はなかったが、奴らの目的はこちらの損害ではなかったのだ。
やつらはこちらの心を攻撃していたのだ。
「シャー、クラレッタ! 威嚇射撃しつつ拡声器でその場にとどまるように指示しろ! そのあとは子供と妊婦、特に赤ん坊を連れた人間を集団から隔離しろ、急げ!」
矢継ぎ早に指示を出すとパパは頭を抱えた。
「ああ……畜生またかよ……神よ、罪深き我と異界の無垢なる者をお救いください……」
この当時の異世界派遣軍の前線指揮官の人間は大概こうだった。
罪悪感と恐怖で心が押しつぶされていた。
「動くな! 全員荷物を置いて両手を上げろ!」
装甲車から下車したSS達が、携行式レールガンを構えて難民に近づいていく。
本当なら問答無用で発砲したいところだが、一般人への先制攻撃は連邦政府、特に大統領の意向で強く禁じられていた。
このバカげた規制が解除されるまで、カルナーク戦の地獄は終わらなかった。
「撃たないで! もう子供は限界なんだ!」
「おなかが痛いの……陣痛が始まったかも……」
「この子にミルクを……お願い……ミルクを……」
口々にわめきながら近づいてくる難民達。
SS達は危機感を覚えてレールガンの発砲準備を行う。
この携行式レールガンは発砲前に銃身の冷却とバッテリーの通電を行う必要があるという欠陥品だった。
総重量18キロ、弾倉とバッテリーの双方を携行する必要があり、発射の手間と信頼性の低さから初期異世界派遣軍の負の象徴とも言われる悪名高い通称、「バッテリー内蔵式鉄パイプ」だ。
当然、そんな銃の事はカルナーク人にとっては常識であり、突くべき弱点だった。
銃の冷却が終了まで数秒の所で、必死に赤ん坊を抱きかかえていた親たちが一斉に泣きわめく赤ん坊をSS達に投げつけた。
瞬間、激しい爆発が起き、SS達の方に向かって無数の鉄球が飛び散った。
赤ん坊の体内にアンドロイド用の小型爆弾を仕掛けるという、カルナーク陸軍の正式兵器。
「ダニャテテ(かわいいあんよ)」と呼ばれる兵器だった。
爆発は小規模だが、高い貫通力を持つ鉄球を内蔵センサーによって投げ手を避けて、アンドロイドや人工物に向かって射出する高性能爆弾だった。
ちなみに、仕掛けられた赤ん坊は数時間しかもたない。
この気の狂った兵器を開発したカルナーク軍の将官は演説でこう言っている。
このダニャテテは百発投げても一人の地球人をも殺せないかもしれない。
しかし、ダニャテテ十発の爆発を見た地球人の心はもう、無事ではない。
諸君、それが、勝利だ。
爆発が収まると、パニックを起こした民衆があちこちに走り始めた。
虐殺が始まった。
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