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お見合い狂想曲
呉越
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ホテル・アピアランスは瓊紅保駅のそばに最近できたばかりのシティホテルだ。外資系ファンドの子会社が運営してるとか聞いた気もするが正直、そんなことは今の自分には何の関係もないし興味もない。
ここ数年で瓊紅保は我が於牟寺より都市開発が着々と進み、地元では見られないようなショッピングモールや飲食チェーン店などの誘致に成功している。そのため学生連中は平日休日問わずよく遊びに来ているようだ。もちろん俺も例外ではない。
事前に訊いていた鬼門ともいえる問題の場所はペドストリアンデッキとかいう聞き慣れない立体歩道橋を介せば駅からそのまま行くことができる。
二階のエントランスをくぐってしばらく歩くと、なんだか公園の砂場を思わせる円形に縁取られたロビーラウンジが眼下に広がった。
軽食を提供する空間でもあるそこにはテーブルと椅子、鉢植えが円形の内外を問わずに点在しており、すでに数組がお茶を楽しみにつつ歓談に興じていた。
デートとかの待ち合わせにはさぞかし絶好の場所であろうが、忌々しいことに今日は傍観するしかない立場だ。
吹き抜けのアトリウムから降り注ぐ闌春の日差しをたっぷりと吸い込んだ大理石の照り返しが起きて一時間ちょっとの惚けた脳と目に心地よい刺激を与えてくれる。
なるべく近くで偵察したところだが、コンビニより若干広い程度の砂場だ。気づかれない方がおかしい。ここはぐっと我慢でこの階でめぼしい場所を探すことにする。
開放感あふれるロビーラウンジに沿って回廊になっている二階には割烹や中華料理、高級惣菜など学生には無縁な店が居並び、昼食時を前に賑わいつつあった。
一般客の俺はそれを横目に身の丈に合った――とはいえホテルだけあって少々お高い――喫茶店に向かう。店の前の通路にはオープンスタイルのスペースも取られており、ロビーラウンジを見下ろすにはこれ以上ないロケーションであった。
いくつか空いていたテーブルの椅子に手をかけ、着席しようとしたときだった。
やはり同じテーブルに腰掛ける気配を真向かいに感じた。
女。それも若い、俺と同じくらいの……女子高生といった感じ。なんだかイヤな方向に見覚えのあるその顔立ちをじっと観察し、それが誰であるのか答えを導き出した瞬間、その女の不愉快そうな声が小さく響いた。
「……どうしてあなたがここにいるの?」
今、なぜ、ここにこの女がいるのかという疑問よりも、こっちがいいたかったセリフを先にいわれたことの方に腹が立った。
いかにも春物といった感じの薄手のショート丈ジャケットにミニスカート、足元をウエスタンブーツで固めた羽二生カヤノは攻撃的なまなざしを隠そうともせずにこちらを睨み続けている。そういやこの女の私服姿なんて初めて見るな。
いや、そんなことはどうでもいい。
いい返す代わりにレズノよりはやく席に着いてテリトリーを主張する。
「……ちょっと、なにしてるのよ。ここは私が座ろうとしていたの、別の席に移動してくれないかしら」
無視。
「……………!」
ロビーラウンジに視線を固定していると、微かに怒気を孕んだ呼吸を感じた。
優越感に浸っていると、移動するべく身を翻したのか、靴音が鳴った。
多少、不快な思いはしたものの、これで心置きなく観察に集中できる。
と、ほどなく誰かが椅子を引く音がした。
顔を向けると去ったはずのレズノが澄ました顔で着席している。
「……おい、なに座ってんだよ」
「………」
さっきの仕返しのつもりか、何も答えない。
「ここは俺が先に座ったんだ、他へ行けよ」
沈黙。
無視は自分がする分にはいいが、されるとムカつく。
「……そんっっっっっなに俺のそばがいいのか? 好きになるのは勝手だが、お前なんかぜんぜんタイプじゃねえからな、いっとくけど」
予想通り、レズノは澄まし顔を崩して空気を震わせるような声で噛みついてきた。
「思い上がりもいい加減にして! あなたみたいな品ない人はこちらからお断りよ。今度そんなふざけたこと口にしたら、ただじゃ済まさないんだから!」
「じゃあ、なんでここに座るんだ」
レズノは他がもう座るところがないからと口惜しそうにいった。
「そうでもなければ、誰が好き好んであなたみたいな下品な人と……」
なるほどさっきまではちらほら空いていた席が見事に埋まっている。
さらに皮肉をかましてやろうかと思案していると、店員さんが注文を取りにきたのでアイスカフェオレを頼んだ。
レズノは「セントジョーンズワート」という何かの呪文みたいな言葉を吐き、食い入るようにロビーラウンジを見つめている。
店員さんとの会話からおそらく紅茶なのだろうがそんな種類があるのだろうか。
「ハーブティーよ。あなたみたいな人がそばにいるから頼んだの」
そのハーブとやらの詳しい効用はよく知らないが、おそらくバカにされているのだろう。さっきまで精神的リードから一転、完全に形勢逆転な状況が俺を苛立たせる。
「どうしてここが分かったんだよ」
ハーブの話をごまかすわけでもないが、成り行き上、相席になったんだしどうでもいいことではある。が、ここは一応聞いておこう。
「一君に教えてもらったに決まってるでしょう」
さも当たり前のように仰る。
……なんで教えたんだよ、ナギのやつ。まあ、どうせナナミさんのこととなると手段を選ばない百合女だ、あまりのしつこさにナギも屈してしまったってところか。
本来ならば、実弟として姉であるナナミさんの見合いについていくくらいの気概を見せて欲しかったのだが、用があるとかで今日は不参加だ。
シギヤにも声を掛けたのだが、あいつも用があるとかで断られた。ちょうど同じ日に用があるというのでふたりでよろしくやるのかと期待したが、シギヤは八百板さんと遊ぶという。
八百板さんはシギヤの幼稚園以来の親友らしいのだが、小学校以降は別の学校へ行ったとかで俺はよく知らない。シギヤとつき合いの古いナギですら、数回会った程度らしい。
中学のとき一度だけ会った八百板さんはポニーテールの似合う活発な感じの女子だった。シギヤによると同性によくモテるとかで本人は困惑しきりらしいのだが。
ぼんやりとそんなことを考えていると、レズノがあっという小さな声を上げた。
引っ張られるように砂場に目を向けると、待ち焦がれた女性の姿が飛び込んできた。
清麗で優美な空気を纏わせた遠目にもはっきりと分かる雪を欺くような透明感あふれる肌をしたナナミさんは夜会巻きといわれるアップスタイルにしており、丈の短い黒のストライプジャケットにスカートというスーツ姿だった。
家でどうか知らないが、俺の知る限りナナミさんはうなじを見せるような髪型をしたことはない。未だかつて見たことのない新鮮なヘアスタイルにこれから行われる理不尽な出来事のことなど忘れてテンションも上がる。
ナナミさんは中央寄りの4人がけのテーブルに腰を下ろすと辺りを眺めていた。
その横顔にはいつものやわらかい笑みを湛えており、今このときを楽しんでいるかのようにも思えた。
端末で時間を確認すると指定の時間まではまだ若干余裕はあった。とはいえ、女を、いやナナミさんを待たせるとか何様なんだ。
アイスカフェオレも半分ほど消化した頃、若い女を三人従えたスーツ姿の男がやって来て、ナナミさんの前で止まると、深々と頭を下げた。
グレーでストライプのそれはスーツに無縁な俺にも上質だと分かる仕立てだった。
呼応するようにナナミさんが立ち上がり、会釈を返す。
どうやらこいつのようだ。しかし女連れで見合いとは何考えてるんだ。……いや、男の方は付添い人が来るとかナギがいっていたような気もする。
にしても普通、若い女を三人も連れて見合いに来るだろうか。妹たちなのかもしれないが、女どもは俺たちくらいにも見える。
「……んんん?」
「あれって……」
ほぼ同時だった。男について来た女たちが誰なのか俺とおそらくレズノも理解した。
あれは左衛門三郎のお嬢様と三次、そして三苫ちゃんだ。
「何で左衛門三郎のお嬢様がいるんだよ」
「状況的に考えて、相手方の関係者だと思うけど」
無関係な人を連れて来るわけないでしょう、とレズノがいう。言辞に嘲弄の響きは感じられなかった。
左衛門三郎のお嬢様はナナミさんといくつか言葉を交わすと、従者コンビとともにそそと退去した。
どこからどう見ても温室育ちのお坊ちゃん然とした相手の男はこういう場に慣れていないのか、うやうやしくオーダーを取りに来たウエイターを相手にうろたえているように思えた。
見るに見兼ねたナナミさんが代わりにオーダーを伝えると、男は立ち上がって何度も頭を下げていた。
「何やってんだ、あれ」
思い切り鼻で笑ってやると、レズノの小さな嘲笑が漏れてきた。こいつも可笑しいらしい。
と思いきや、
「じゃあ、あなたは慣れているとでもいうの?」
いちいち癇に障るヤツだ。
「女の前で注文も満足に出来ないとか男じゃないだろ」
「そういう男性がいいっていう人だっているでしょう」
「お前、そういうのがタイプなのか」
「そういう人もいるだろうっていってるの。大体、女性の前で注文ができるできないで男を語られても、ね」
「何がいいたいんだ」
「何も。あなたの前では特に」
本当、ムカつく女だ。
オーダーの件で分かったことだが、男はこういう場というか、女そのものに免疫がなさそうで、主導権は明らかにナナミさんにあった。
話しかけるのはナナミさんで、男はただそれに答えるだけであった。果たしてこういうのを見合いと呼べるのだろうか。
話の内容などもちろん、知りようもないが、ナナミさんの笑顔を見ている限りつまらないわけではなさそうだ。もっとも俺の知るナナミさんは年中笑顔の女性なんだが。
ただ見守るしかない現状にやきもきと組んだ指をせわしなく動かしていると、通路に複数の人の気配を感じた。
振り返ると、ついさっきまで砂場にいた、よく見知った三人がいる。
「こちらで何をなさっているのですか」
ウエストにドレープというのかシワが寄ったシンプルな、でもきっとお高いものであろうワンピースと肩にショールを引っ掛けた左衛門三郎のお嬢様は冷徹な外貌を隠そうともせずにこちらをみていた。
いつもの能面ぶりでこちらに関心などなさげな直立不動でお嬢様の左隣に佇む三次は、ピンストライプのパンツスーツ姿も手伝って本物の要人警護官にも見えた。長めのサイドテールが唯一、若さを感じさせる。
驚いたのは三苫ちゃんだ。伏し目がちにお嬢様の右隣で身を隠すようにじっとしている彼女はダブルのライダースにフリルのミニスカートという、普段からは考えられないなかなか扇情的な格好であった。意外と大胆な一面もあるのだろうか。
「すごいな、三苫ちゃん。今日はまたずいぶん過激っつうか、パンツ見えそうじゃん」
俺の軽口に頬をさらに染め上げた三苫ちゃんは世辞抜きで可愛かった。
「三苫ちゃんのファンって意外に多いんだぜ。自信持ちなって」
ちょっとした嬉しさを覚えてそんなことを口走った途端、刺すような視線が飛んできた。
発信源は三次。
「そんな下劣な目で三苫を見るんじゃない」
必要最低限の言葉しか発しない三次の肉声は貴重ではある。もっとも左衛門三郎のお嬢様と授業等で先生たち以外に向けられる言葉はこんな感じで攻撃的なのだが。
「下劣な目ってどんな目だよ」
「化粧室に行って鏡を覗いてみるといい」
本ッッッ当に可愛げのないヤツだ。
「わざわざ喧嘩を売りに来たのか。こっちは忙しいんだ」
品のない発言のとき、話に乗ってくるかとも思ったが、レズノは三人を認めたあとは一切、関わることを拒否したようにロビーラウンジを凝視している。
そういや、レズノと左衛門三郎のお嬢様は俺たちとずっと同じ学校だったはずだが、このふたりはあまり接点がない気がする。ナギやシギヤがそうなように、親睦会に参加したことがないはずだ。
まあ女子は何かというと細々と派閥を形成しては分裂、再集結を繰り返すような生き物だ。男が感知し得ない微妙な力関係が存在するんだろう。
「もう一度お訊きします。ここで何をなさっているのですか」
三苫ちゃん以下のやり取りなどなかったように左衛門三郎のお嬢様がいう。語気や表情に険は確認できない。
「……いや、お茶を、な」
適当な受け答えすら満足にできずにしどろもどろになる自分にうんざりする。
「おふたりでさきほどからどこを見ていらっしゃるのですか」
いいたいことはもちろん、分かってる。
「いや、たまたまロビーラウンジ見てたらさ、ナナミさんいるから驚いてたんだ。そこにお嬢様まで現れて二度びっくりって感じで」
左衛門三郎のお嬢様の双眸は疑心であふれていた。
「それにしても」
俺とレズノを見比べてると、目を閉じ、ツンとあごを上げてお嬢様は続けた。
「おふたりがおつき合いなさっているとは驚き入りました」
………は? 何をいい出すんだ、このお嬢様は。
俺のことはもちろん、左衛門三郎のお嬢様一行の存在を無視してずっとナナミさんを見ていたレズノまで振り返る。
「冗談でもそういう発言はやめてください。何が悲しくてこんな男とつき合わなくちゃいけないんですか。何も関係ありません」
「そりゃあ、こっちのセリフだ」
「休日にホテルの喫茶店で仲良く、ではなさそうですが、同じテーブルでお茶を頂いていて、何の関係もないといわれても説得力はありません」
いいながら左衛門三郎のお嬢様は後方へ移動した。
いつの間にか前のお客が席を立ち、店員さんがテーブルを片付けているところだった。
空くのを待って三次が椅子を引くと、お嬢様はそのまま座った。
「何してるの」
注文をし終えたお嬢様は見ての通りです、と返した。
「あなたがたが妙な行動を起こさないか、ここで監視させて頂きます」
楚々とした居住まいを崩すことなく、そんなことをいう。
見合いを壊すつもりなど毛頭ない、とはいえなくもないが、少なくともナナミさんに迷惑になるようなことなどするつもりはない。
妙な流れに飲まれつつある現状に困惑する中、気になったことを訊いてみる。
「ナナミさんの見合い相手ってお嬢様とどういう関係なの?」
「それが六反園君とどういう関係があるのでしょう」
………そう来たか。
「あの」
小さな声を出したのは三苫ちゃんだった。背を向けて座ってる彼女は小ぶりな顔をこちらに向けている。
「タケフさんはミカさんの親戚の方です」
あの男はタケフというらしい。それにしても三苫ちゃんの気遣いっぷりはどうだ。男子の間で密かに人気があるのが分かる気がする。今日のライダースとミニスカのキュートでセクシーな姿など見たらさらにファンも増えることであろう。
「三苫、余計なことはいわなくていい」
到底、血が通っているとは思えない三次の低音が隣の三苫ちゃんに浴びせられる。
萎縮するミニスカ天使の華奢な背中に義憤が頭をもたげた。
「おい、そこの能面SP、三苫ちゃんをいじめるんじゃない」
さっきの仕返しのつもりで挑発したのだが、女子高生要人警護官はまるで乗ってこない。ある意味本物だ。
お嬢様軍団に気を取られている間もレズノのナナミさんウォッチングは続いていた。というか俺の本来の目的もそれなのだ。女SP相手に時間を潰している暇などない。
相変わらずナナミさんのリードで話は弾んでいるように見えた。
すっごく楽しそうだ。
ちくしょう。
どうにもならない苛立ちを舌に乗せて、じっとりと汗の引かない手のひらを俺は何度もこすった。
ここ数年で瓊紅保は我が於牟寺より都市開発が着々と進み、地元では見られないようなショッピングモールや飲食チェーン店などの誘致に成功している。そのため学生連中は平日休日問わずよく遊びに来ているようだ。もちろん俺も例外ではない。
事前に訊いていた鬼門ともいえる問題の場所はペドストリアンデッキとかいう聞き慣れない立体歩道橋を介せば駅からそのまま行くことができる。
二階のエントランスをくぐってしばらく歩くと、なんだか公園の砂場を思わせる円形に縁取られたロビーラウンジが眼下に広がった。
軽食を提供する空間でもあるそこにはテーブルと椅子、鉢植えが円形の内外を問わずに点在しており、すでに数組がお茶を楽しみにつつ歓談に興じていた。
デートとかの待ち合わせにはさぞかし絶好の場所であろうが、忌々しいことに今日は傍観するしかない立場だ。
吹き抜けのアトリウムから降り注ぐ闌春の日差しをたっぷりと吸い込んだ大理石の照り返しが起きて一時間ちょっとの惚けた脳と目に心地よい刺激を与えてくれる。
なるべく近くで偵察したところだが、コンビニより若干広い程度の砂場だ。気づかれない方がおかしい。ここはぐっと我慢でこの階でめぼしい場所を探すことにする。
開放感あふれるロビーラウンジに沿って回廊になっている二階には割烹や中華料理、高級惣菜など学生には無縁な店が居並び、昼食時を前に賑わいつつあった。
一般客の俺はそれを横目に身の丈に合った――とはいえホテルだけあって少々お高い――喫茶店に向かう。店の前の通路にはオープンスタイルのスペースも取られており、ロビーラウンジを見下ろすにはこれ以上ないロケーションであった。
いくつか空いていたテーブルの椅子に手をかけ、着席しようとしたときだった。
やはり同じテーブルに腰掛ける気配を真向かいに感じた。
女。それも若い、俺と同じくらいの……女子高生といった感じ。なんだかイヤな方向に見覚えのあるその顔立ちをじっと観察し、それが誰であるのか答えを導き出した瞬間、その女の不愉快そうな声が小さく響いた。
「……どうしてあなたがここにいるの?」
今、なぜ、ここにこの女がいるのかという疑問よりも、こっちがいいたかったセリフを先にいわれたことの方に腹が立った。
いかにも春物といった感じの薄手のショート丈ジャケットにミニスカート、足元をウエスタンブーツで固めた羽二生カヤノは攻撃的なまなざしを隠そうともせずにこちらを睨み続けている。そういやこの女の私服姿なんて初めて見るな。
いや、そんなことはどうでもいい。
いい返す代わりにレズノよりはやく席に着いてテリトリーを主張する。
「……ちょっと、なにしてるのよ。ここは私が座ろうとしていたの、別の席に移動してくれないかしら」
無視。
「……………!」
ロビーラウンジに視線を固定していると、微かに怒気を孕んだ呼吸を感じた。
優越感に浸っていると、移動するべく身を翻したのか、靴音が鳴った。
多少、不快な思いはしたものの、これで心置きなく観察に集中できる。
と、ほどなく誰かが椅子を引く音がした。
顔を向けると去ったはずのレズノが澄ました顔で着席している。
「……おい、なに座ってんだよ」
「………」
さっきの仕返しのつもりか、何も答えない。
「ここは俺が先に座ったんだ、他へ行けよ」
沈黙。
無視は自分がする分にはいいが、されるとムカつく。
「……そんっっっっっなに俺のそばがいいのか? 好きになるのは勝手だが、お前なんかぜんぜんタイプじゃねえからな、いっとくけど」
予想通り、レズノは澄まし顔を崩して空気を震わせるような声で噛みついてきた。
「思い上がりもいい加減にして! あなたみたいな品ない人はこちらからお断りよ。今度そんなふざけたこと口にしたら、ただじゃ済まさないんだから!」
「じゃあ、なんでここに座るんだ」
レズノは他がもう座るところがないからと口惜しそうにいった。
「そうでもなければ、誰が好き好んであなたみたいな下品な人と……」
なるほどさっきまではちらほら空いていた席が見事に埋まっている。
さらに皮肉をかましてやろうかと思案していると、店員さんが注文を取りにきたのでアイスカフェオレを頼んだ。
レズノは「セントジョーンズワート」という何かの呪文みたいな言葉を吐き、食い入るようにロビーラウンジを見つめている。
店員さんとの会話からおそらく紅茶なのだろうがそんな種類があるのだろうか。
「ハーブティーよ。あなたみたいな人がそばにいるから頼んだの」
そのハーブとやらの詳しい効用はよく知らないが、おそらくバカにされているのだろう。さっきまで精神的リードから一転、完全に形勢逆転な状況が俺を苛立たせる。
「どうしてここが分かったんだよ」
ハーブの話をごまかすわけでもないが、成り行き上、相席になったんだしどうでもいいことではある。が、ここは一応聞いておこう。
「一君に教えてもらったに決まってるでしょう」
さも当たり前のように仰る。
……なんで教えたんだよ、ナギのやつ。まあ、どうせナナミさんのこととなると手段を選ばない百合女だ、あまりのしつこさにナギも屈してしまったってところか。
本来ならば、実弟として姉であるナナミさんの見合いについていくくらいの気概を見せて欲しかったのだが、用があるとかで今日は不参加だ。
シギヤにも声を掛けたのだが、あいつも用があるとかで断られた。ちょうど同じ日に用があるというのでふたりでよろしくやるのかと期待したが、シギヤは八百板さんと遊ぶという。
八百板さんはシギヤの幼稚園以来の親友らしいのだが、小学校以降は別の学校へ行ったとかで俺はよく知らない。シギヤとつき合いの古いナギですら、数回会った程度らしい。
中学のとき一度だけ会った八百板さんはポニーテールの似合う活発な感じの女子だった。シギヤによると同性によくモテるとかで本人は困惑しきりらしいのだが。
ぼんやりとそんなことを考えていると、レズノがあっという小さな声を上げた。
引っ張られるように砂場に目を向けると、待ち焦がれた女性の姿が飛び込んできた。
清麗で優美な空気を纏わせた遠目にもはっきりと分かる雪を欺くような透明感あふれる肌をしたナナミさんは夜会巻きといわれるアップスタイルにしており、丈の短い黒のストライプジャケットにスカートというスーツ姿だった。
家でどうか知らないが、俺の知る限りナナミさんはうなじを見せるような髪型をしたことはない。未だかつて見たことのない新鮮なヘアスタイルにこれから行われる理不尽な出来事のことなど忘れてテンションも上がる。
ナナミさんは中央寄りの4人がけのテーブルに腰を下ろすと辺りを眺めていた。
その横顔にはいつものやわらかい笑みを湛えており、今このときを楽しんでいるかのようにも思えた。
端末で時間を確認すると指定の時間まではまだ若干余裕はあった。とはいえ、女を、いやナナミさんを待たせるとか何様なんだ。
アイスカフェオレも半分ほど消化した頃、若い女を三人従えたスーツ姿の男がやって来て、ナナミさんの前で止まると、深々と頭を下げた。
グレーでストライプのそれはスーツに無縁な俺にも上質だと分かる仕立てだった。
呼応するようにナナミさんが立ち上がり、会釈を返す。
どうやらこいつのようだ。しかし女連れで見合いとは何考えてるんだ。……いや、男の方は付添い人が来るとかナギがいっていたような気もする。
にしても普通、若い女を三人も連れて見合いに来るだろうか。妹たちなのかもしれないが、女どもは俺たちくらいにも見える。
「……んんん?」
「あれって……」
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「何で左衛門三郎のお嬢様がいるんだよ」
「状況的に考えて、相手方の関係者だと思うけど」
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どこからどう見ても温室育ちのお坊ちゃん然とした相手の男はこういう場に慣れていないのか、うやうやしくオーダーを取りに来たウエイターを相手にうろたえているように思えた。
見るに見兼ねたナナミさんが代わりにオーダーを伝えると、男は立ち上がって何度も頭を下げていた。
「何やってんだ、あれ」
思い切り鼻で笑ってやると、レズノの小さな嘲笑が漏れてきた。こいつも可笑しいらしい。
と思いきや、
「じゃあ、あなたは慣れているとでもいうの?」
いちいち癇に障るヤツだ。
「女の前で注文も満足に出来ないとか男じゃないだろ」
「そういう男性がいいっていう人だっているでしょう」
「お前、そういうのがタイプなのか」
「そういう人もいるだろうっていってるの。大体、女性の前で注文ができるできないで男を語られても、ね」
「何がいいたいんだ」
「何も。あなたの前では特に」
本当、ムカつく女だ。
オーダーの件で分かったことだが、男はこういう場というか、女そのものに免疫がなさそうで、主導権は明らかにナナミさんにあった。
話しかけるのはナナミさんで、男はただそれに答えるだけであった。果たしてこういうのを見合いと呼べるのだろうか。
話の内容などもちろん、知りようもないが、ナナミさんの笑顔を見ている限りつまらないわけではなさそうだ。もっとも俺の知るナナミさんは年中笑顔の女性なんだが。
ただ見守るしかない現状にやきもきと組んだ指をせわしなく動かしていると、通路に複数の人の気配を感じた。
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「こちらで何をなさっているのですか」
ウエストにドレープというのかシワが寄ったシンプルな、でもきっとお高いものであろうワンピースと肩にショールを引っ掛けた左衛門三郎のお嬢様は冷徹な外貌を隠そうともせずにこちらをみていた。
いつもの能面ぶりでこちらに関心などなさげな直立不動でお嬢様の左隣に佇む三次は、ピンストライプのパンツスーツ姿も手伝って本物の要人警護官にも見えた。長めのサイドテールが唯一、若さを感じさせる。
驚いたのは三苫ちゃんだ。伏し目がちにお嬢様の右隣で身を隠すようにじっとしている彼女はダブルのライダースにフリルのミニスカートという、普段からは考えられないなかなか扇情的な格好であった。意外と大胆な一面もあるのだろうか。
「すごいな、三苫ちゃん。今日はまたずいぶん過激っつうか、パンツ見えそうじゃん」
俺の軽口に頬をさらに染め上げた三苫ちゃんは世辞抜きで可愛かった。
「三苫ちゃんのファンって意外に多いんだぜ。自信持ちなって」
ちょっとした嬉しさを覚えてそんなことを口走った途端、刺すような視線が飛んできた。
発信源は三次。
「そんな下劣な目で三苫を見るんじゃない」
必要最低限の言葉しか発しない三次の肉声は貴重ではある。もっとも左衛門三郎のお嬢様と授業等で先生たち以外に向けられる言葉はこんな感じで攻撃的なのだが。
「下劣な目ってどんな目だよ」
「化粧室に行って鏡を覗いてみるといい」
本ッッッ当に可愛げのないヤツだ。
「わざわざ喧嘩を売りに来たのか。こっちは忙しいんだ」
品のない発言のとき、話に乗ってくるかとも思ったが、レズノは三人を認めたあとは一切、関わることを拒否したようにロビーラウンジを凝視している。
そういや、レズノと左衛門三郎のお嬢様は俺たちとずっと同じ学校だったはずだが、このふたりはあまり接点がない気がする。ナギやシギヤがそうなように、親睦会に参加したことがないはずだ。
まあ女子は何かというと細々と派閥を形成しては分裂、再集結を繰り返すような生き物だ。男が感知し得ない微妙な力関係が存在するんだろう。
「もう一度お訊きします。ここで何をなさっているのですか」
三苫ちゃん以下のやり取りなどなかったように左衛門三郎のお嬢様がいう。語気や表情に険は確認できない。
「……いや、お茶を、な」
適当な受け答えすら満足にできずにしどろもどろになる自分にうんざりする。
「おふたりでさきほどからどこを見ていらっしゃるのですか」
いいたいことはもちろん、分かってる。
「いや、たまたまロビーラウンジ見てたらさ、ナナミさんいるから驚いてたんだ。そこにお嬢様まで現れて二度びっくりって感じで」
左衛門三郎のお嬢様の双眸は疑心であふれていた。
「それにしても」
俺とレズノを見比べてると、目を閉じ、ツンとあごを上げてお嬢様は続けた。
「おふたりがおつき合いなさっているとは驚き入りました」
………は? 何をいい出すんだ、このお嬢様は。
俺のことはもちろん、左衛門三郎のお嬢様一行の存在を無視してずっとナナミさんを見ていたレズノまで振り返る。
「冗談でもそういう発言はやめてください。何が悲しくてこんな男とつき合わなくちゃいけないんですか。何も関係ありません」
「そりゃあ、こっちのセリフだ」
「休日にホテルの喫茶店で仲良く、ではなさそうですが、同じテーブルでお茶を頂いていて、何の関係もないといわれても説得力はありません」
いいながら左衛門三郎のお嬢様は後方へ移動した。
いつの間にか前のお客が席を立ち、店員さんがテーブルを片付けているところだった。
空くのを待って三次が椅子を引くと、お嬢様はそのまま座った。
「何してるの」
注文をし終えたお嬢様は見ての通りです、と返した。
「あなたがたが妙な行動を起こさないか、ここで監視させて頂きます」
楚々とした居住まいを崩すことなく、そんなことをいう。
見合いを壊すつもりなど毛頭ない、とはいえなくもないが、少なくともナナミさんに迷惑になるようなことなどするつもりはない。
妙な流れに飲まれつつある現状に困惑する中、気になったことを訊いてみる。
「ナナミさんの見合い相手ってお嬢様とどういう関係なの?」
「それが六反園君とどういう関係があるのでしょう」
………そう来たか。
「あの」
小さな声を出したのは三苫ちゃんだった。背を向けて座ってる彼女は小ぶりな顔をこちらに向けている。
「タケフさんはミカさんの親戚の方です」
あの男はタケフというらしい。それにしても三苫ちゃんの気遣いっぷりはどうだ。男子の間で密かに人気があるのが分かる気がする。今日のライダースとミニスカのキュートでセクシーな姿など見たらさらにファンも増えることであろう。
「三苫、余計なことはいわなくていい」
到底、血が通っているとは思えない三次の低音が隣の三苫ちゃんに浴びせられる。
萎縮するミニスカ天使の華奢な背中に義憤が頭をもたげた。
「おい、そこの能面SP、三苫ちゃんをいじめるんじゃない」
さっきの仕返しのつもりで挑発したのだが、女子高生要人警護官はまるで乗ってこない。ある意味本物だ。
お嬢様軍団に気を取られている間もレズノのナナミさんウォッチングは続いていた。というか俺の本来の目的もそれなのだ。女SP相手に時間を潰している暇などない。
相変わらずナナミさんのリードで話は弾んでいるように見えた。
すっごく楽しそうだ。
ちくしょう。
どうにもならない苛立ちを舌に乗せて、じっとりと汗の引かない手のひらを俺は何度もこすった。
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真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
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