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お見合い狂想曲
同舟
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「おや」
今度こそ集中しようとイライラを吹っ切るように身構えた瞬間、どこか聞き覚えのある不快な声が背後から上がった。
顔は向けず、横目だけで確認すると、予想通り、いけ好かない最低イケメンキモヲタ野郎が突っ立っていた。どうしてヲタクのこいつがもてるのか不思議でしょうがないが、しょせん女は外見でしか男を判断しないということの何よりの証左なのだろう。
さらに残念なお知らせ。
その後方にはキモヲタ一号、二号のヲタ仲間もいやがる。最悪だ。
「これは、皆さんお揃いで」
白のシングルライダースをいかにも軽く羽織りました、といった感じのさわやか加減が腹立たしい五百旗頭は型通りの笑顔を頼みもしていないのに、俺たちに振り撒いていた。
「……と、意外な組み合わせですね」
レズノと俺のことをいってるのだろう。お嬢様が追い討ちをかけた。
「わたくしも驚きました」
「……だから違うって」
勘違いされた女の方はもう突っ込む気などないのか、ちらとヲタトリオを認めただけで、すぐさま砂場に目線を戻していた。
「あれは……」
藍色のワークジャケットを着込んだ眼鏡のキモヲタ一号・五十棲がくいっとアンダーリム――当人は逆ナイロールという呼称に拘っていたが本気でどうでもいい――を中指で直した。こいつはいちいち言動が芝居がかってるのがムカつく。こともあろうにかけているお洒落眼鏡がナナミさんの見立てというのもさらに俺を苛立たせる。
そもそもどういうわけでかナナミさんから全幅の信頼を寄せられ専属カメラマンの地位に収まっているのが納得できない。
「ナナミ殿ですな」
五十棲につられて五百旗頭もロビーラウンジに頭を振る。カーキ色のワークシャツを着た、唯一ヲタトリオでは地味なキモヲタ二号の五月女だけは一、二歩後退した。理由は不明だが、なぜかこいつはナナミさんが苦手らしい。首肯しかねる話ではあるが、五十棲みたいになれなれしくされるのに比べたら、むしろ歓迎すべき美点といえるかもしれない。意外と悪くないと思われたシャツの胸に縫いつけられた箒らしき五芒星はなんとなくアニメグッズを連想させるが、変にファッショナブルなふたりに比べれば、その気取り気のなさは俺を苛立たせることはない。
「デート……のように見えますが」
「なワケねーだろ」
徹底的に無視を決め込むつもりが、意味ありげな五百旗頭の言葉につい反応してしまう。
「お見合いです。男性はわたくしのいとこにあたる方で、一君のお姉さまはわたくしにとっても知己ですので本日は付き添いとして参りました」
とてもいいお話ですし、ぜひぜひ上手くいって欲しいのですが、などと左衛門三郎のお嬢様は至極余計なことを仰る。
……いや待て、なんで俺のときは何も教えようとはしなかったくせに最低イケメンキモヲタ野郎には自分との関係を含めてそう簡単に教えるんだよ。
ひとこと文句をいってやろうと振り返って、目に留まったのは態度のおかしい三次だった。
妙にそわそわと落ち着きがなく、無用な所作など拒否するようなさっきまでの厳然たる居住まいは崩壊していた。
ひざの上の置かれた手を揉んだり組んだり擦ったり忙しなく動かしては、ちらちらと振り返っている。すでに要人警護官はそこにはいなかった。
なんなんだ、いったい。
「……む、終わったようですな」
五十棲の声に全員の視線が一点に注がれる。
詫びているのか礼をいっているのか男が何度も何度も頭を下げていた。ゆっくりと立ち上がったナナミさんはそれに答える形でさらに深く一礼していた。
男はこちらがドン引きするくらい顔を下に向けたまま頭を垂れまくり、ナナミさんがそれを慰めるかのように声をかけていた。
まるで粗相した生徒を慰める女教師である。
男は幾度も何事かを口にしながら頭を下げつつ退去した。どこかしょげ返っているようにも見えるその様子はどう考えても上手くいったとは思えない。
それを見送ったナナミさんは再び腰を下ろすと、組んだ両手を斜めにかたく閉じた腿に差し込んで、澄んだ海の水面のような天井を見上げていた。
何かをやり遂げたようにも何かをやり残したようにも、どっちとも取れる姿になんだか心がざわめく。
そこにふたりの女性が近づいた。ナナミさんの親友であるアツミさんはすぐに分かったが、もう一人は誰だろうか、見覚えがない。
知らないうちに声に出ていたのか、レズノが妹さんよと答えた。
「知ってんのか」
「春休みにナナミさんと会ったとき、アツミさんと一緒にいたの。そのとき妹だって紹介されたのよ」
聞けば俺たちと同じ学年だという。名前は上四元クシナ。瓊紅保女子というからナナミさんたちの後輩ということになる。
ナナミさんやアツミさんは女性にしては立っ端がある方だが、それに負けないくらいすらっと高くいやに目立つ女子だった。遠目に見ても美人だと分かる。
黒尽くめなその格好はいやにパンキッシュだ。
その上四元クシナがこちらを見た。なんとなく周りを見回していてたまたま目があったといった感じではなく、明らかに俺たちを見据え、視線を固定している。
「何か……我々を睨んでいるようにも見えますが」
五百旗頭がいかにも困ったという風に笑う。
上四元クシナの射るような目つきは俺の抱えている悩みや秘密といったごくプライベートな部分を否応なく暴き出すのではないかというくらいの強引で非情な力を湛えている気さえして顔を逸らしたい気持ちに駆られる。
ナナミさんとアツミさんが楽しげな様子で談笑している横でただただひたすらに俺たちを殴りかからんばかりの力強さでもって見据えていた上四元クシナはしばらくしてホテルを出るのか、ナナミさんたちが歩き出してもまだこちらを睨めつけていた。
飲まれたようにその場にフリーズしていると、左衛門三郎のお嬢様たちが席を立ち、三次が会計に向かった。
ちゃりちゃりという音に振り向くとレズノがテーブルに硬貨を置いていた。支払いはお前がやれということらしい。
「皆さんはこれからどうされるんですか」
五百旗頭の問いかけにお嬢様は特に予定はありませんが、せっかく出てきたのだしどこかでお食事をして行きますと答えた。
「よろしかったら、我々と一緒に行きませんか」
五百旗頭の提案にお嬢様は頷き、会計から戻ってきた従者にその旨を伝えた。
三次はえっ、と驚いたように五百旗頭たちを見、すぐに慌ててうつむいた。気のせいか顔が赤いように思える。
……まさか、こいつ。
レズノは興味がないといった体でお嬢様たちに「私はこれで失礼します」と軽く会釈し、駅と繋がっている二階のエントランスではなく、ナナミさん一行と合流する気なのか、ロビーラウンジに続く階段へ向かった。
もちろん俺だってこのまま帰るつもりなどない。一刻も早く見合いのことを聞きたいのは俺も同じだ。越されてたまるか。
「俺もパス」
お嬢様たちにそういい残し伝票を掴むと速攻で会計を済ませた。
しかし、なんて声をかけるか。
先周りをして気づいてもらうのがベストではあるが……。
その際はなんていったらいいのだろう。日曜日のホテルに何の用があって来たっていえば自然に話を持っていけるのか。
踏み慣れない瀟洒で鏡のような反射を見せる幅広の階段をかけ降りながら、そんなことを考えていると、ロビーラウンジに着いた。
さっきまではただ眺めているだけだった砂場に実際に立つと、非常に雰囲気がよく、もしナナミさんとお茶を愉しむのが自分だったらと想像し思わずにやけそうになる。
すでにナナミさんたちの姿は周辺にはなく、レズノの途方に暮れた、俺にとっては非常にどうでもいい姿しか確認できなかった。
一階のエントランスから外に出たが、やはりナナミさんの姿は確認できなかった。
今の時間帯を考えればアツミさんたちとは昼食を共にするつもりなのだろう。他に行くつもりで駅に向かったのか、地元だとして百貨店もあれば、ファミレスも相当数ある。二階に上がって来なかったのだから、ここではないだろう。
どうしたものかと辺りを見渡していると、レズノが出てきた。俺の顔を見ると、眉間を歪めてわざとらしく顔を背けた。
また先にこっちがしようとした態度を取られてムカついていると、この場にはまったくそぐわないヲタボイスがホテル・アピアランスのメインエントランスに響いた。
「いやあ、まさかナナミ殿に出会えるとは思ってもいませんでした」
五十棲の癇に障る声は興奮している。
「本日こちらにお見えだとは知りませんでした」
五十棲、五百旗頭のヲタふたりを先頭にナナミさんとアツミさん、お嬢様一行、上四元クシナ、ずっと離れて五月女が出てくるのが見えた。
「おや」
楽しげにナナミさんたちと話していた五十棲が俺たちを認めた。
「六反園君と……羽二生さん?」
ナナミさんも俺、そしてレズノに気づいた。
アップの髪はすでに下ろされている。残念。
「急いでいたようですが、まだいたんですねえ。それもおふたり揃って」
眼鏡をわざとらしく動かしながら五十棲が含み笑いを見せる。どこか勝ち誇ったようなその口ぶりに思わず拳を握り込む。こいつはいつかぶっ飛ばしてやろう。
「どうしたの、あなたたち」
目を丸くするアツミさんに左衛門三郎のお嬢様がデートのようですと澄まし顔で答えた。
「あら、そうなの?」
「や、いえ、違いますよ!」
否定しようと適当なセリフを捻りだすべく慌てふためく俺を尻目にレズノがナナミさんに駆け寄った。
「誤解なんです。全然違いますから。こんな男と休みの日を過ごす趣味なんてありません、信じてください!」
ナナミさんのこととなると本当に手段を選ばない女だ。こういうところは真似はしたくはないが、うらやましくもある。
ナナミさんはいつもの笑顔で頷いてみせ、レズノの頭をなでていた。こういうとき、女子は得だ。
「左衛門三郎さんたちは先方の付き添いで五百旗頭君たちは絵画展に来たそうだけど」
アツミさんの言葉に五十棲が頷く。
「ナナミ殿がぜひ観ておいた方がいいとおっしゃる通り、素敵な絵画ばかりでした」
よかった、とナナミさんは微笑んでみせる。キモヲタ軍団がここにいた理由はそれか。
「気韻が生動している、とはまさにああいうのをいうのでしょうなあ」
「そうね」
なんだか楽しそうに話をしているナナミさんと五十棲の隣で、アツミさんがあなたたちはどうしたの? と振ってきた。
「……っと、ですね」
問いかけに詰まっていると、聞きなれない嬌声が上がった。
「ナナミさんのお見合いを覗きに来たんじゃないの」
声の主はあさっての方角に視線を送りながら、退屈そうにしていた。俺たちに向けていた挑発的な目つきに負けず劣らず、話しぶりも実に生意気そうな感じである。
「えーっと、こちらのお美しいお嬢さまはどちら様で?」
自分ではありったけの皮肉を込めたつもりであったが、相手はまるでその皮肉も折り込み済みで発言したといわんばかりの不適な笑みを見せるだけであった。
「クシナ!」
アツミさんの抑えた、しかし厳しい声が辺りに緊張を強いる。
「ごめんなさいね。この子、私の妹なの。名前は」
「上四元クシナです」
姉の紹介を遮るように、上四元クシナは頭を下げつつ自ら名乗った。
しかし間近で見る上四元クシナの格好はその言動を象徴するかのようであった。
パンキッシュというよりゴスロリといった方がいいかもしれない。
肩から胸に走るフリルが印象的なビスチェといい、薄いレザーのミニスカートにワカメみたいな、パッと見ボロ切れの寄せ集めのようなラップスカートを重ね、仕上げは膝まであるブーツ。手にしたレザーのバッグもお安くはなさそうだ。
フラワープリントシャツにティアードスカートを合わせたアツミさんとは性格、嗜好ともに真逆なのだろう。
「ああ、これ? そんなに高くなかったかな。5万くらい」
こちらの視線に気づいたのか、上四元クシナがバッグを掲げながらしれっという。心を読まれたことも驚いたが、女子高生が5万のバッグって。
「……クシナ」
アツミさんは目を閉じ、こめかみの辺りをひくつかせていた。いつもこんな感じで妹に苦労させられているのだろうか。
「今日、ナナギがいると思ってついて来たのにいなんだもん」
上四元クシナが周囲を見渡しながらさもつまらなそうにいう。わざわざやって来たらこんな連中しかいなかった、そういいたげだ。しかしその顔は笑っていた。
「ごめんね、あの子、今日は用があるって」
友人の妹だ。ナナミさんはもう馴れっこなのだろう、買い物をし忘れて質素な夕食になったことをごねる我が子を諭す母のような笑みを見せる。
しかし、ナナギってなんだ。ナギ本人から上四元クシナのことは聞いた覚えはない。教えてもらういわれはもちろんないが、そんなに親しい仲だったのか。
「上四元さんは……ナギとは古いつき合いなの?」
あまり口を利きたい相手ではないが、とりあえずそんな質問を振ってみた。
「小さい頃から知ってるナナミさんの弟だし、ずっと前から名前は聞いてた。ただ本人に会ったのはついこの間が初めて」
……なんだ、それじゃあ知らないも同然だろ。くせのあるヤツだとは思っていたが、相当図々しい女のようだ。
「なんだ、この女。一回しか会ってないナギを呼び捨てにしやがって。そんな顔してる」
思い通りの反応を見せてくれた、そんな顔だった。どうもこの女は人の心を読むのが得意らしい。
「どう呼ぼうがあたしの勝手じゃない。これからナナギとは仲良くなる予定なんだし」
一瞬、三苫ちゃんがムッと眉を寄せた。なんとなくそうではないかと思ってはいたのだが、やはり三苫ちゃんはナギに特別な感情を抱いているようだ。ひょっとすると、今日の格好はナギに会う前提でのコーディネイトだったのかもしれない。シギヤのことがなければ、素直に応援してやりたいところではあるが……。
「ねえ、お昼にするなら早く行こうよ」
アツミさんの怒りのこもった表情など気にする様子も見せずに上四元クシナは先に歩き出した。
どうやらナナミさんたちは左衛門三郎のお嬢様一行、キモヲタ軍団とこれから食事に行くようだ。
「さっきみんなで行こうかと誘ったんですが、六反園君と羽二生さんのおふたりには振られまして」
五百旗頭の言葉に五十棲が追随する。
「先ほどの仲よくお茶していましたし、我々とは別行動したいのでしょう」
キモヲタ一号を睨むべく振り返るとその横でレズノはナナミさんに向かって必死に涙目で違います、違いますと首を振っていた。
「ところでナナミさんたちとどこで会ったんだ」
左衛門三郎のお嬢様に訊くと、ホテル内のレストラン街を歩いていたら、やはり昼食の店を探しているナナミさんたちと出会ったのだという。
……ん? ナナミさんたちは二階へ上がって来なかったが。
「階をつなぐルートが一つだけなわけないでしょう」
お嬢様の呆れ声を聞きながら、自分の間抜けさ加減にうんざりする。ナナミさんと合流するべく焦って先を急いだのが悪かったか。
ここは恥も外聞もなく相伴に預かりたいといえばいいのだろうか。ちっぽけなプライドを抱え込みながら躊躇しているとナナミさんがすべてを包み込むような笑みを見せた。
「もし用がないんだったら、六反園君も羽二生さんも一緒に行きましょう。せっかくみんなが揃っているんだし、大勢の方が楽しいわよ。ね?」
レズノの顔がみるみる紅潮するのが分かった。きっと俺も同じだろう。
だから、俺はナナミさんが好きなんだ。
今度こそ集中しようとイライラを吹っ切るように身構えた瞬間、どこか聞き覚えのある不快な声が背後から上がった。
顔は向けず、横目だけで確認すると、予想通り、いけ好かない最低イケメンキモヲタ野郎が突っ立っていた。どうしてヲタクのこいつがもてるのか不思議でしょうがないが、しょせん女は外見でしか男を判断しないということの何よりの証左なのだろう。
さらに残念なお知らせ。
その後方にはキモヲタ一号、二号のヲタ仲間もいやがる。最悪だ。
「これは、皆さんお揃いで」
白のシングルライダースをいかにも軽く羽織りました、といった感じのさわやか加減が腹立たしい五百旗頭は型通りの笑顔を頼みもしていないのに、俺たちに振り撒いていた。
「……と、意外な組み合わせですね」
レズノと俺のことをいってるのだろう。お嬢様が追い討ちをかけた。
「わたくしも驚きました」
「……だから違うって」
勘違いされた女の方はもう突っ込む気などないのか、ちらとヲタトリオを認めただけで、すぐさま砂場に目線を戻していた。
「あれは……」
藍色のワークジャケットを着込んだ眼鏡のキモヲタ一号・五十棲がくいっとアンダーリム――当人は逆ナイロールという呼称に拘っていたが本気でどうでもいい――を中指で直した。こいつはいちいち言動が芝居がかってるのがムカつく。こともあろうにかけているお洒落眼鏡がナナミさんの見立てというのもさらに俺を苛立たせる。
そもそもどういうわけでかナナミさんから全幅の信頼を寄せられ専属カメラマンの地位に収まっているのが納得できない。
「ナナミ殿ですな」
五十棲につられて五百旗頭もロビーラウンジに頭を振る。カーキ色のワークシャツを着た、唯一ヲタトリオでは地味なキモヲタ二号の五月女だけは一、二歩後退した。理由は不明だが、なぜかこいつはナナミさんが苦手らしい。首肯しかねる話ではあるが、五十棲みたいになれなれしくされるのに比べたら、むしろ歓迎すべき美点といえるかもしれない。意外と悪くないと思われたシャツの胸に縫いつけられた箒らしき五芒星はなんとなくアニメグッズを連想させるが、変にファッショナブルなふたりに比べれば、その気取り気のなさは俺を苛立たせることはない。
「デート……のように見えますが」
「なワケねーだろ」
徹底的に無視を決め込むつもりが、意味ありげな五百旗頭の言葉につい反応してしまう。
「お見合いです。男性はわたくしのいとこにあたる方で、一君のお姉さまはわたくしにとっても知己ですので本日は付き添いとして参りました」
とてもいいお話ですし、ぜひぜひ上手くいって欲しいのですが、などと左衛門三郎のお嬢様は至極余計なことを仰る。
……いや待て、なんで俺のときは何も教えようとはしなかったくせに最低イケメンキモヲタ野郎には自分との関係を含めてそう簡単に教えるんだよ。
ひとこと文句をいってやろうと振り返って、目に留まったのは態度のおかしい三次だった。
妙にそわそわと落ち着きがなく、無用な所作など拒否するようなさっきまでの厳然たる居住まいは崩壊していた。
ひざの上の置かれた手を揉んだり組んだり擦ったり忙しなく動かしては、ちらちらと振り返っている。すでに要人警護官はそこにはいなかった。
なんなんだ、いったい。
「……む、終わったようですな」
五十棲の声に全員の視線が一点に注がれる。
詫びているのか礼をいっているのか男が何度も何度も頭を下げていた。ゆっくりと立ち上がったナナミさんはそれに答える形でさらに深く一礼していた。
男はこちらがドン引きするくらい顔を下に向けたまま頭を垂れまくり、ナナミさんがそれを慰めるかのように声をかけていた。
まるで粗相した生徒を慰める女教師である。
男は幾度も何事かを口にしながら頭を下げつつ退去した。どこかしょげ返っているようにも見えるその様子はどう考えても上手くいったとは思えない。
それを見送ったナナミさんは再び腰を下ろすと、組んだ両手を斜めにかたく閉じた腿に差し込んで、澄んだ海の水面のような天井を見上げていた。
何かをやり遂げたようにも何かをやり残したようにも、どっちとも取れる姿になんだか心がざわめく。
そこにふたりの女性が近づいた。ナナミさんの親友であるアツミさんはすぐに分かったが、もう一人は誰だろうか、見覚えがない。
知らないうちに声に出ていたのか、レズノが妹さんよと答えた。
「知ってんのか」
「春休みにナナミさんと会ったとき、アツミさんと一緒にいたの。そのとき妹だって紹介されたのよ」
聞けば俺たちと同じ学年だという。名前は上四元クシナ。瓊紅保女子というからナナミさんたちの後輩ということになる。
ナナミさんやアツミさんは女性にしては立っ端がある方だが、それに負けないくらいすらっと高くいやに目立つ女子だった。遠目に見ても美人だと分かる。
黒尽くめなその格好はいやにパンキッシュだ。
その上四元クシナがこちらを見た。なんとなく周りを見回していてたまたま目があったといった感じではなく、明らかに俺たちを見据え、視線を固定している。
「何か……我々を睨んでいるようにも見えますが」
五百旗頭がいかにも困ったという風に笑う。
上四元クシナの射るような目つきは俺の抱えている悩みや秘密といったごくプライベートな部分を否応なく暴き出すのではないかというくらいの強引で非情な力を湛えている気さえして顔を逸らしたい気持ちに駆られる。
ナナミさんとアツミさんが楽しげな様子で談笑している横でただただひたすらに俺たちを殴りかからんばかりの力強さでもって見据えていた上四元クシナはしばらくしてホテルを出るのか、ナナミさんたちが歩き出してもまだこちらを睨めつけていた。
飲まれたようにその場にフリーズしていると、左衛門三郎のお嬢様たちが席を立ち、三次が会計に向かった。
ちゃりちゃりという音に振り向くとレズノがテーブルに硬貨を置いていた。支払いはお前がやれということらしい。
「皆さんはこれからどうされるんですか」
五百旗頭の問いかけにお嬢様は特に予定はありませんが、せっかく出てきたのだしどこかでお食事をして行きますと答えた。
「よろしかったら、我々と一緒に行きませんか」
五百旗頭の提案にお嬢様は頷き、会計から戻ってきた従者にその旨を伝えた。
三次はえっ、と驚いたように五百旗頭たちを見、すぐに慌ててうつむいた。気のせいか顔が赤いように思える。
……まさか、こいつ。
レズノは興味がないといった体でお嬢様たちに「私はこれで失礼します」と軽く会釈し、駅と繋がっている二階のエントランスではなく、ナナミさん一行と合流する気なのか、ロビーラウンジに続く階段へ向かった。
もちろん俺だってこのまま帰るつもりなどない。一刻も早く見合いのことを聞きたいのは俺も同じだ。越されてたまるか。
「俺もパス」
お嬢様たちにそういい残し伝票を掴むと速攻で会計を済ませた。
しかし、なんて声をかけるか。
先周りをして気づいてもらうのがベストではあるが……。
その際はなんていったらいいのだろう。日曜日のホテルに何の用があって来たっていえば自然に話を持っていけるのか。
踏み慣れない瀟洒で鏡のような反射を見せる幅広の階段をかけ降りながら、そんなことを考えていると、ロビーラウンジに着いた。
さっきまではただ眺めているだけだった砂場に実際に立つと、非常に雰囲気がよく、もしナナミさんとお茶を愉しむのが自分だったらと想像し思わずにやけそうになる。
すでにナナミさんたちの姿は周辺にはなく、レズノの途方に暮れた、俺にとっては非常にどうでもいい姿しか確認できなかった。
一階のエントランスから外に出たが、やはりナナミさんの姿は確認できなかった。
今の時間帯を考えればアツミさんたちとは昼食を共にするつもりなのだろう。他に行くつもりで駅に向かったのか、地元だとして百貨店もあれば、ファミレスも相当数ある。二階に上がって来なかったのだから、ここではないだろう。
どうしたものかと辺りを見渡していると、レズノが出てきた。俺の顔を見ると、眉間を歪めてわざとらしく顔を背けた。
また先にこっちがしようとした態度を取られてムカついていると、この場にはまったくそぐわないヲタボイスがホテル・アピアランスのメインエントランスに響いた。
「いやあ、まさかナナミ殿に出会えるとは思ってもいませんでした」
五十棲の癇に障る声は興奮している。
「本日こちらにお見えだとは知りませんでした」
五十棲、五百旗頭のヲタふたりを先頭にナナミさんとアツミさん、お嬢様一行、上四元クシナ、ずっと離れて五月女が出てくるのが見えた。
「おや」
楽しげにナナミさんたちと話していた五十棲が俺たちを認めた。
「六反園君と……羽二生さん?」
ナナミさんも俺、そしてレズノに気づいた。
アップの髪はすでに下ろされている。残念。
「急いでいたようですが、まだいたんですねえ。それもおふたり揃って」
眼鏡をわざとらしく動かしながら五十棲が含み笑いを見せる。どこか勝ち誇ったようなその口ぶりに思わず拳を握り込む。こいつはいつかぶっ飛ばしてやろう。
「どうしたの、あなたたち」
目を丸くするアツミさんに左衛門三郎のお嬢様がデートのようですと澄まし顔で答えた。
「あら、そうなの?」
「や、いえ、違いますよ!」
否定しようと適当なセリフを捻りだすべく慌てふためく俺を尻目にレズノがナナミさんに駆け寄った。
「誤解なんです。全然違いますから。こんな男と休みの日を過ごす趣味なんてありません、信じてください!」
ナナミさんのこととなると本当に手段を選ばない女だ。こういうところは真似はしたくはないが、うらやましくもある。
ナナミさんはいつもの笑顔で頷いてみせ、レズノの頭をなでていた。こういうとき、女子は得だ。
「左衛門三郎さんたちは先方の付き添いで五百旗頭君たちは絵画展に来たそうだけど」
アツミさんの言葉に五十棲が頷く。
「ナナミ殿がぜひ観ておいた方がいいとおっしゃる通り、素敵な絵画ばかりでした」
よかった、とナナミさんは微笑んでみせる。キモヲタ軍団がここにいた理由はそれか。
「気韻が生動している、とはまさにああいうのをいうのでしょうなあ」
「そうね」
なんだか楽しそうに話をしているナナミさんと五十棲の隣で、アツミさんがあなたたちはどうしたの? と振ってきた。
「……っと、ですね」
問いかけに詰まっていると、聞きなれない嬌声が上がった。
「ナナミさんのお見合いを覗きに来たんじゃないの」
声の主はあさっての方角に視線を送りながら、退屈そうにしていた。俺たちに向けていた挑発的な目つきに負けず劣らず、話しぶりも実に生意気そうな感じである。
「えーっと、こちらのお美しいお嬢さまはどちら様で?」
自分ではありったけの皮肉を込めたつもりであったが、相手はまるでその皮肉も折り込み済みで発言したといわんばかりの不適な笑みを見せるだけであった。
「クシナ!」
アツミさんの抑えた、しかし厳しい声が辺りに緊張を強いる。
「ごめんなさいね。この子、私の妹なの。名前は」
「上四元クシナです」
姉の紹介を遮るように、上四元クシナは頭を下げつつ自ら名乗った。
しかし間近で見る上四元クシナの格好はその言動を象徴するかのようであった。
パンキッシュというよりゴスロリといった方がいいかもしれない。
肩から胸に走るフリルが印象的なビスチェといい、薄いレザーのミニスカートにワカメみたいな、パッと見ボロ切れの寄せ集めのようなラップスカートを重ね、仕上げは膝まであるブーツ。手にしたレザーのバッグもお安くはなさそうだ。
フラワープリントシャツにティアードスカートを合わせたアツミさんとは性格、嗜好ともに真逆なのだろう。
「ああ、これ? そんなに高くなかったかな。5万くらい」
こちらの視線に気づいたのか、上四元クシナがバッグを掲げながらしれっという。心を読まれたことも驚いたが、女子高生が5万のバッグって。
「……クシナ」
アツミさんは目を閉じ、こめかみの辺りをひくつかせていた。いつもこんな感じで妹に苦労させられているのだろうか。
「今日、ナナギがいると思ってついて来たのにいなんだもん」
上四元クシナが周囲を見渡しながらさもつまらなそうにいう。わざわざやって来たらこんな連中しかいなかった、そういいたげだ。しかしその顔は笑っていた。
「ごめんね、あの子、今日は用があるって」
友人の妹だ。ナナミさんはもう馴れっこなのだろう、買い物をし忘れて質素な夕食になったことをごねる我が子を諭す母のような笑みを見せる。
しかし、ナナギってなんだ。ナギ本人から上四元クシナのことは聞いた覚えはない。教えてもらういわれはもちろんないが、そんなに親しい仲だったのか。
「上四元さんは……ナギとは古いつき合いなの?」
あまり口を利きたい相手ではないが、とりあえずそんな質問を振ってみた。
「小さい頃から知ってるナナミさんの弟だし、ずっと前から名前は聞いてた。ただ本人に会ったのはついこの間が初めて」
……なんだ、それじゃあ知らないも同然だろ。くせのあるヤツだとは思っていたが、相当図々しい女のようだ。
「なんだ、この女。一回しか会ってないナギを呼び捨てにしやがって。そんな顔してる」
思い通りの反応を見せてくれた、そんな顔だった。どうもこの女は人の心を読むのが得意らしい。
「どう呼ぼうがあたしの勝手じゃない。これからナナギとは仲良くなる予定なんだし」
一瞬、三苫ちゃんがムッと眉を寄せた。なんとなくそうではないかと思ってはいたのだが、やはり三苫ちゃんはナギに特別な感情を抱いているようだ。ひょっとすると、今日の格好はナギに会う前提でのコーディネイトだったのかもしれない。シギヤのことがなければ、素直に応援してやりたいところではあるが……。
「ねえ、お昼にするなら早く行こうよ」
アツミさんの怒りのこもった表情など気にする様子も見せずに上四元クシナは先に歩き出した。
どうやらナナミさんたちは左衛門三郎のお嬢様一行、キモヲタ軍団とこれから食事に行くようだ。
「さっきみんなで行こうかと誘ったんですが、六反園君と羽二生さんのおふたりには振られまして」
五百旗頭の言葉に五十棲が追随する。
「先ほどの仲よくお茶していましたし、我々とは別行動したいのでしょう」
キモヲタ一号を睨むべく振り返るとその横でレズノはナナミさんに向かって必死に涙目で違います、違いますと首を振っていた。
「ところでナナミさんたちとどこで会ったんだ」
左衛門三郎のお嬢様に訊くと、ホテル内のレストラン街を歩いていたら、やはり昼食の店を探しているナナミさんたちと出会ったのだという。
……ん? ナナミさんたちは二階へ上がって来なかったが。
「階をつなぐルートが一つだけなわけないでしょう」
お嬢様の呆れ声を聞きながら、自分の間抜けさ加減にうんざりする。ナナミさんと合流するべく焦って先を急いだのが悪かったか。
ここは恥も外聞もなく相伴に預かりたいといえばいいのだろうか。ちっぽけなプライドを抱え込みながら躊躇しているとナナミさんがすべてを包み込むような笑みを見せた。
「もし用がないんだったら、六反園君も羽二生さんも一緒に行きましょう。せっかくみんなが揃っているんだし、大勢の方が楽しいわよ。ね?」
レズノの顔がみるみる紅潮するのが分かった。きっと俺も同じだろう。
だから、俺はナナミさんが好きなんだ。
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同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
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