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拳塔町に行くの巻
幻想
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まるで先生のようなニノマエナナミの言葉を聞きながら、ユウコ先生に似ているは顔だけじゃないんだなと感心する一方でぶつけようのない苛立ちを舌打ちすることでむりやり自分を納得させ、慰める。惨め極まりない。
食事の最後にと取っておいた好物を食べる直前で掻っ攫われた脱力感。
イク寸前で時間になりもう少しだけ延長してくれと風俗嬢に泣きつく童貞みたいに間抜けな言い訳を駆使して縋ることもできたかもしれない。いっそ恥も外聞も捨てて、あんたの本気の一発を浴びせてくれ、殴ってくれと哀願してもいいかもしれない。
――バカか。
あの女はそういうことはしないだろう。見ず知らずの、憎くもない相手を殴り飛ばすことができる女じゃない。あれだけの技術を持ってはいるが、おそらく競技としてのボクシングは未経験、ボクサーとしてリングに上がったことはないはずだ。信じられない、信じたくないことだが。
俺の告白を受け入れてくれたのも、いわゆるお友達としてなら、ってやつだろう。
どの道、俺を殴り殺すための殺人パンチどころか赤湖をKOしたストレートすら見舞う気はなかったのだ。
「ナナミさぁーん!」
白ビキニのお嬢さんが対戦を終えた憧れのお姉さんに抱きつくのを見ながら、たった今味わった四度目の失恋を噛み締めていた。
ニノマエナナミは少女を愛しそうに抱きかかえながら、心配かけちゃったわねと何度もアタマを撫ででいた。カメラ小僧は相当数、一眼にニノマエナナミを収めたであろう、満足そうにカメラのモニタをチェックしていた。
ニノマエナナミは器用にグローブを外すと、そういえばと振り返った。
「賞品のことなんですが」
一瞬、何のことかと緑池と黄沼が顔を合わせていたが、すぐに血の気が引くのが分かった。ニノマエナナミは赤湖に勝ったのだ。本来のルールではなく、試合形式とはいえ、赤湖をノックアウトしたのは事実だ。難癖をつければいくらでも言い逃れはできそうだが、肝心の首謀者は絶賛失神中、さてどうしたものか。
(どうしよう)
緑池と黄沼の心の声が聞こえるようだ。きっとアタマの中では粉飾賞品に怒ったニノマエナナミからリングの上できついお仕置きを受けている真っ最中なんだろう。
「そちらは辞退します」
その申し出に緑池たちが固まる。かくゆう俺も。
「その代わり、といってはたいへん図々しいお願いなんですが」
非常に申し分けなさそうに切り出すニノマエナナミはどこか幼く見えた。
「グローブを頂けないでしょうか?」
どこかもじもじと恥かずかしそうにいう。仕草こそ可愛いものだが、手にしたボクシンググローブと巻かれたバンテージ、リングという舞台装置が尋常じゃない。
「……えっと、それですか?」
ニノマエナナミが手にしているピンク色を指したのは緑池。俺もてっきりそうだと思った。しかし、あれは……。
「いえ、こちらはどなたかの私物ですよね?」、
グローブ裏側のいちばん下、紐を通す穴の隅を示して見せた。R・O。所有者だった桃姐のイニシャルだ。
リングを降りて長机に並べられたグローブ群の中からニノマエナナミが取り上げたのは、赤いグローブだった。最近の角ばったタイプとは違う、形状が丸っこい8オンスでブランドタグが筆記体という、メーカーが復刻版として限定発売した別注品だ。その目敏さに笑ってしまう。
「いいんじゃねえか」
懸念が消えた安心感も手伝って、そんなことを口にしてみる。一時的とはいえ、惚れた女の頼みだから、さっきのおねだりポーズが可愛かったから、というわけでもなくはない。
「彼女が赤湖に勝ったのは事実だし、こっちはルール破りをしてあの少年を殴り飛ばした負い目もある。グローブのひとつやふたつ、かまわんだろう」
なんなら、全部持っていくかい。俺の軽口にニノマエナナミはさすがにこれだけたくさんはむりです、と笑った。すっと心にしみわたるような自然な笑み。数分前までこの女と殴り合っていたと思うと全身が熱くなってくる。
無言で顔を合わせていた緑池と黄沼は弾かれたように前傾姿勢を取ると、右手をさっと前に差し出した。
「どうぞどうぞどうぞ」
こうして新品同様の限定品は誰もなし得なかった赤湖KOを実現させたニノマエナナミの手に渡った。
うれしそうに旧式の赤いグローブを胸に抱いたニノマエナナミはベンチで絶賛失神中の赤湖を見やった。その顔には若干の憂慮が浮かんでいる。
「大丈夫だ、そいつも条件を飲んだ時点で覚悟はできてたんだ」
そう、女だと舐めてかかったがために不意打ち気味のきつい一発を浴び、パニくっているうちにとどめの二発目でカタがつく、そんな茶番とは違う。ニノマエナナミはきちんと対等に渡り合えると赤湖に示唆してみせたうえでリングの流儀にのっとって対戦相手をノックアウトした。自分を見くびった相手に不意打ちで勝って得意になってるやつとは違う。
「あんたは正々堂々と闘って勝った。心配する必要はない」
そもそも自分をKOした相手から気遣かわれて喜ぶボクサーなどいない。
俺の言葉に小さく頷くと、彼女はこちらに向かってきた。柄にもなく、胸が高鳴る。
「開始直前のコンビネーション、返しの左は本当に驚きました」
世辞には聞こえなかったが、それを瞬時にスリッピング・アウェーでやり過ごしたやつにいわれたくはない。
あらためて間近で見るニノマエナナミは文句なく美しかった。いいたいこと、聞きたいことは山ほどあったが、もういい。
「今まででいちばん充実した試合だった。その、なんだ……あ、ありがとう」
気がついたら手を差し出していた。顔が赤い。こそばゆい。穴があったら入りたくなるような状況を作り出した自分自身の青臭さを呪っていると、手にやさしいぬくもりを感じた。
ニノマエナナミはずっと飾っていたくなるようなやさしい眼差しで俺の手を両手で包むように握っていた。
「こちらこそ。とても素敵なひとときをありがとうございました」
人間、うれしいとめまいがすることを初めて知った。
告白をして受け入れてもらえたものの、デートを一度しただけでけっきょくはそれっきり。この状況はそんなところなのかもしれない。でもそれでいい。実に俺らしいじゃないか。
お騒がせしました。丁寧な辞儀を見せるニノマエナナミに緑池と黄沼は戸惑い照れつつ、何度もアタマを下げ返していた。
「か、彼は俺たちが運びますから。なあ、黄沼」
「お、おう。担架持ってくるわ」
未だ目を覚ます気配のないロクタンゾノ君を彼女たちの元へ送り届けるべく、緑池たちがにわかに張り切りだす。まるで好きな子の気を引く悪ガキのようで微笑ましくなる。
「では、失礼します。本当にありがとうございました」
集会所の入り口でもう一度、恭しくアタマを下げて見せた。前に添えた手は左前。
顔も、スタイルも、性格も、振舞いも、そして腕っぷしもすべてにおいて腹が立つくらい最高の女だよ、あんたは。
あんないい女をモノにできるなんてどんなやつなんだ。顔も知らない男にむなしい嫉妬心を抱きつつ、浜風に靡くニノマエナナミの長くきれいな髪とこれ以上のものは存在しないだろうと断言できる最高のヒップを目に焼き付けるようにいつまでも眺めていた――。
*
最高にいい女とリングの上で一戦交える。
数時間前に体験した濃密で常軌を逸した艶事にも似た出来事を思い返しながら、軽い徒労感が残るカラダを横たえた。
全身にまんべんなく広がった火照りはやがて、下半身に集中し出した。
下卑た熱とともに隆起しはじめた猥らなそれを眺めているうちに、滾った劣情も合わせるように膨らんでいき、気がつくとゆっくりと撫ぜていた。
ニノマエナナミのカラダを必死に脳裏に浮かべ、叶わなかった最高の結末を姑息な妄想で塗り替える作業は思いの外、楽しかった。
俺を殴り飛ばしている相手はやがて、ユウコ先生にすり替わっていた。
憧れだったユウコ先生が俺を殺さんばかりに拳を振るう様は、気が狂いそうになるほど美しくセクシーだった。
いつしか右手は生地の上からではなく、直に触れていた。
止め処なく流れ出る粘液が指を濡らしはじめる。
とてもじゃないが人に見せられるような行為ではない。
そうじゃなくても岩陰とはいえ屋外だ。
尋常ならざる状況がとどまる所を知らない昂ぶりに拍車をかける。
もう、限界だった。
「こんばんわ」
クロップドパンツに手をかけた瞬間だった。
突然降って湧いたやわらかいその声に膨張しまくった卑俗な感情が霧散する。
自分が今までしていた愚行を見られたかもしれない恥ずかしさよりも、どこか懐かしさを覚える声の安堵感が勝っていた。
ついさっきまで俺を殴り殺そうと懸命にパンチを繰り出していた初恋の人のあまりに現実的な声音に自分の想像力を称えたくなる。
それくらいの立体感だった。
いや、ただの幻聴かもしれない。
妙なリアルさはやはり、あの女が原因か。
「青川さん」
おいおい、ユウコ先生が俺をさん付けするわけないだろう。
目の端で人の気配を感じて、首を振ると本当にユウコ先生がいた。艶やかなロングヘアをなんつうんだったか髪飾りでまとめて、肩から垂らす髪型はまさに憧れだったあの人。
たった3パーのアルコール分で視覚聴覚まとめておかしくなっちまったか。それとも夢でも見てるのか。だいぶ会わないうちに背が伸びたのか、あの頃より大きく見える。
月明かりでもしっかり映える、清潔そうな白の半そでシャツにミニスカート、足を編み上げのサンダルで固めている。
「桃海さんからここにいるんじゃないかってお聞きして」
オウミさん? 桃姐から聞いたのか。
「お隣り、よろしいですか?」
ユウコ先生が俺の隣に腰を下ろした。
ユウコ先生が何の目的でここに来たのか、そういうごく当たり前な疑問よりも意図が掴めないとはいえ憧れだった人の登場の喜びの方が上回っていた。おかしな話ではあるが、軽い酔いに加えて今日はあまりにイベントが起こり過ぎた。真っ当な思考を働かせるには情報が雑多すぎて整理し切れない。不自然とはいえ安易な拠り所に縋ってもいいはずだ。
「今日さ、先生にそっくりな女に会ったんだ」
波の音が心地いい。
「顔もスタイルも振舞いもすんげー似てた。あと、たぶん性格も。何から何まで瓜ふたつと思ったけど、先生よか背丈はあったし、なによりボクシングが強えんだ。プロまで目指してた赤湖のパンチを浴びることなく、最後は一発でKOだぜ。それ見てるうちにさ、もうリングには上がらないって決めてたのに、急にやりたくなっちまって俺も挑戦したけど……ダメだった」
先生はじっと微笑みながら、俺の話に耳を傾けている。
「この年で恥ずいんだけど、ひと目ぼれしちまったんだ。赤湖相手にダンスでもするみたいにリングで舞っている姿は本当にきれいだったし、実際に一戦交えてるときの彼女はマジで最高だった。こういうこというと、引かれるか笑われると思うんだけどさ」
やさしく囁くような声で、笑いませんと聞こえた。気のせいかもしれない。
「俺、あのまま彼女に殴り殺されてもいいやって思ったんだ。あくまで想像だけど、赤湖をノックアウトしたときの彼女は本気じゃなかった気がする。あれだけの動きを見せただけでもじゅうぶんすごいんだけど、それでもまだ、本気を隠しているように見えた。その本気を俺は全力で受け取りたかったんだ」
そう、俺はあの瞬間、死を覚悟した。惚れた女に殴り殺されるという、傍からみたらずいぶんとばかげた、しかし俺にとっては最高の死に方。それを俺は選んだ。
「でも、振られたよ。彼女はそこまで愚かじゃなかった。赤湖と対戦したのも卑怯な手でノックアウトされた連れの敵討ちだったんだろうし、実際、彼女は一発で赤湖を沈めたんだ。何発も打つチャンスはあったのに、一発だけで決めた。律儀な女だよ。でも、そういうところがムカついたのも事実さ。いい女だけにそういう気づかいが逆に癇に触るっつうか。いや、向こうになんにも非はねえや。理不尽なことに果敢に立ち上がって、実行しただけだ。俺との一戦は気を使ってくれたんだ。滾りまくってる俺に同情してくれたっつうかさ」
「同情じゃありませんよ」
ユウコ先生が首を振る。風呂上りなのか、微風に乗っていい匂いがした。
「青川さんの本気を私も受け取ってみたくなったんです」
初恋の人は諭すみたいに俺の眼をみて語った。
「とても真剣な眼差しで対戦を申し込む青川さんの気持ちはじゅうぶん伝わってきました。私の方でも青川さんとグローブを交えてみたい、そう思ったからお受けしたんです、同情では決してありません」
本ッ当にいい女だったよ、あの女は。ユウコ先生の戯れを排した言葉に泣きそうになる。あんな最高の女に惚れられたら、もう何にも要らねえ。
「ユウコ先生もそう思うだろ?」
「本当に好きだったんですね、ユウコ先生のこと」
ユウコ先生にユウコ先生が好きだったんですねといわれるのも妙な気がする。
「…………ん?」
アタマを振る。いちばん最初に感じ、いっとき追いやっていたシンプルな疑問が急にふくらみ俺に冷静さを取り戻せとささやく。
ここは地元の、俺のお気に入りの場所。他に知っているやつはいないとておきの場所。なのに、なんでここにユウコ先生がいるんだよ。いや、さっき、なんつったっけ。桃姐に聞いた? なんで桃姐が知ってるんだよ。夢にしちゃリアルだし、酔ったっつてもまだ缶チューハイ一本も空けちゃいないのに。
「ユウコ先生だよ……な?」
ユウコ先生はそっと俺の手を取ると、両手でやさしく包んで微笑む。今日の昼過ぎに似たようなことをされたんだ。あのニノマエナナミに。
「今日はたいへんお世話になりました、ニノマエナナミです」
ニノマエナナミと名乗ったユウコ先生はとてもいい笑顔を見せた。……なんで、ユウコ先生がニノマエナナミって名乗るんだよ。いや、ニノマエナナミだからニノマエナナミと名乗ったわけで、つまり目の前にいるのはユウコ先生じゃなく、ニノマエナナミということになる。じゃ、ユウコ先生はどこにいったんだ。
「そんなに似ていますか」
ニノマエナナミと名乗ったニノマエナナミが訊く。俺は頷いた。
「あんた、ニノマエさんなのか? あのイベントで会った、ニノマエナナミさんなのか?」
「はい」
「なんで、ここにいるんだ」
「桃海さんがホテルにいらして、青川さんの話相手になって欲しいと頼まれたんです」
なんで桃姐がそんなことニノマエナナミに頼むんだよ。
「ここを桃姐に聞いたっていったよな」
「はい。きっとここだろうと」
どうしてあの女がここを知ってるんだ。いや、そんなことよりも、ユウコ先生のつもりで話した今さっきのこと、全部本人に聞かれたってことか?
「……………う」
顔が熱くなってくる。間違いなく、酔いのせいじゃねえ。
「うあァァァァァァァァァァァァ……」
穴があったら入りたいってのはこういうことか。穴など掘ってる暇はない俺に残された道は逃げることだけだ。勢いよく立ち上がって、て、て、て、て……。
がくんと膝が折れる。頭が回る。視界が歪む。視覚と意識が次第に溶け始め、やがて混ざり合うと訳の分からないうちに俺は、今日、二度目のブラックアウトを味わった。
食事の最後にと取っておいた好物を食べる直前で掻っ攫われた脱力感。
イク寸前で時間になりもう少しだけ延長してくれと風俗嬢に泣きつく童貞みたいに間抜けな言い訳を駆使して縋ることもできたかもしれない。いっそ恥も外聞も捨てて、あんたの本気の一発を浴びせてくれ、殴ってくれと哀願してもいいかもしれない。
――バカか。
あの女はそういうことはしないだろう。見ず知らずの、憎くもない相手を殴り飛ばすことができる女じゃない。あれだけの技術を持ってはいるが、おそらく競技としてのボクシングは未経験、ボクサーとしてリングに上がったことはないはずだ。信じられない、信じたくないことだが。
俺の告白を受け入れてくれたのも、いわゆるお友達としてなら、ってやつだろう。
どの道、俺を殴り殺すための殺人パンチどころか赤湖をKOしたストレートすら見舞う気はなかったのだ。
「ナナミさぁーん!」
白ビキニのお嬢さんが対戦を終えた憧れのお姉さんに抱きつくのを見ながら、たった今味わった四度目の失恋を噛み締めていた。
ニノマエナナミは少女を愛しそうに抱きかかえながら、心配かけちゃったわねと何度もアタマを撫ででいた。カメラ小僧は相当数、一眼にニノマエナナミを収めたであろう、満足そうにカメラのモニタをチェックしていた。
ニノマエナナミは器用にグローブを外すと、そういえばと振り返った。
「賞品のことなんですが」
一瞬、何のことかと緑池と黄沼が顔を合わせていたが、すぐに血の気が引くのが分かった。ニノマエナナミは赤湖に勝ったのだ。本来のルールではなく、試合形式とはいえ、赤湖をノックアウトしたのは事実だ。難癖をつければいくらでも言い逃れはできそうだが、肝心の首謀者は絶賛失神中、さてどうしたものか。
(どうしよう)
緑池と黄沼の心の声が聞こえるようだ。きっとアタマの中では粉飾賞品に怒ったニノマエナナミからリングの上できついお仕置きを受けている真っ最中なんだろう。
「そちらは辞退します」
その申し出に緑池たちが固まる。かくゆう俺も。
「その代わり、といってはたいへん図々しいお願いなんですが」
非常に申し分けなさそうに切り出すニノマエナナミはどこか幼く見えた。
「グローブを頂けないでしょうか?」
どこかもじもじと恥かずかしそうにいう。仕草こそ可愛いものだが、手にしたボクシンググローブと巻かれたバンテージ、リングという舞台装置が尋常じゃない。
「……えっと、それですか?」
ニノマエナナミが手にしているピンク色を指したのは緑池。俺もてっきりそうだと思った。しかし、あれは……。
「いえ、こちらはどなたかの私物ですよね?」、
グローブ裏側のいちばん下、紐を通す穴の隅を示して見せた。R・O。所有者だった桃姐のイニシャルだ。
リングを降りて長机に並べられたグローブ群の中からニノマエナナミが取り上げたのは、赤いグローブだった。最近の角ばったタイプとは違う、形状が丸っこい8オンスでブランドタグが筆記体という、メーカーが復刻版として限定発売した別注品だ。その目敏さに笑ってしまう。
「いいんじゃねえか」
懸念が消えた安心感も手伝って、そんなことを口にしてみる。一時的とはいえ、惚れた女の頼みだから、さっきのおねだりポーズが可愛かったから、というわけでもなくはない。
「彼女が赤湖に勝ったのは事実だし、こっちはルール破りをしてあの少年を殴り飛ばした負い目もある。グローブのひとつやふたつ、かまわんだろう」
なんなら、全部持っていくかい。俺の軽口にニノマエナナミはさすがにこれだけたくさんはむりです、と笑った。すっと心にしみわたるような自然な笑み。数分前までこの女と殴り合っていたと思うと全身が熱くなってくる。
無言で顔を合わせていた緑池と黄沼は弾かれたように前傾姿勢を取ると、右手をさっと前に差し出した。
「どうぞどうぞどうぞ」
こうして新品同様の限定品は誰もなし得なかった赤湖KOを実現させたニノマエナナミの手に渡った。
うれしそうに旧式の赤いグローブを胸に抱いたニノマエナナミはベンチで絶賛失神中の赤湖を見やった。その顔には若干の憂慮が浮かんでいる。
「大丈夫だ、そいつも条件を飲んだ時点で覚悟はできてたんだ」
そう、女だと舐めてかかったがために不意打ち気味のきつい一発を浴び、パニくっているうちにとどめの二発目でカタがつく、そんな茶番とは違う。ニノマエナナミはきちんと対等に渡り合えると赤湖に示唆してみせたうえでリングの流儀にのっとって対戦相手をノックアウトした。自分を見くびった相手に不意打ちで勝って得意になってるやつとは違う。
「あんたは正々堂々と闘って勝った。心配する必要はない」
そもそも自分をKOした相手から気遣かわれて喜ぶボクサーなどいない。
俺の言葉に小さく頷くと、彼女はこちらに向かってきた。柄にもなく、胸が高鳴る。
「開始直前のコンビネーション、返しの左は本当に驚きました」
世辞には聞こえなかったが、それを瞬時にスリッピング・アウェーでやり過ごしたやつにいわれたくはない。
あらためて間近で見るニノマエナナミは文句なく美しかった。いいたいこと、聞きたいことは山ほどあったが、もういい。
「今まででいちばん充実した試合だった。その、なんだ……あ、ありがとう」
気がついたら手を差し出していた。顔が赤い。こそばゆい。穴があったら入りたくなるような状況を作り出した自分自身の青臭さを呪っていると、手にやさしいぬくもりを感じた。
ニノマエナナミはずっと飾っていたくなるようなやさしい眼差しで俺の手を両手で包むように握っていた。
「こちらこそ。とても素敵なひとときをありがとうございました」
人間、うれしいとめまいがすることを初めて知った。
告白をして受け入れてもらえたものの、デートを一度しただけでけっきょくはそれっきり。この状況はそんなところなのかもしれない。でもそれでいい。実に俺らしいじゃないか。
お騒がせしました。丁寧な辞儀を見せるニノマエナナミに緑池と黄沼は戸惑い照れつつ、何度もアタマを下げ返していた。
「か、彼は俺たちが運びますから。なあ、黄沼」
「お、おう。担架持ってくるわ」
未だ目を覚ます気配のないロクタンゾノ君を彼女たちの元へ送り届けるべく、緑池たちがにわかに張り切りだす。まるで好きな子の気を引く悪ガキのようで微笑ましくなる。
「では、失礼します。本当にありがとうございました」
集会所の入り口でもう一度、恭しくアタマを下げて見せた。前に添えた手は左前。
顔も、スタイルも、性格も、振舞いも、そして腕っぷしもすべてにおいて腹が立つくらい最高の女だよ、あんたは。
あんないい女をモノにできるなんてどんなやつなんだ。顔も知らない男にむなしい嫉妬心を抱きつつ、浜風に靡くニノマエナナミの長くきれいな髪とこれ以上のものは存在しないだろうと断言できる最高のヒップを目に焼き付けるようにいつまでも眺めていた――。
*
最高にいい女とリングの上で一戦交える。
数時間前に体験した濃密で常軌を逸した艶事にも似た出来事を思い返しながら、軽い徒労感が残るカラダを横たえた。
全身にまんべんなく広がった火照りはやがて、下半身に集中し出した。
下卑た熱とともに隆起しはじめた猥らなそれを眺めているうちに、滾った劣情も合わせるように膨らんでいき、気がつくとゆっくりと撫ぜていた。
ニノマエナナミのカラダを必死に脳裏に浮かべ、叶わなかった最高の結末を姑息な妄想で塗り替える作業は思いの外、楽しかった。
俺を殴り飛ばしている相手はやがて、ユウコ先生にすり替わっていた。
憧れだったユウコ先生が俺を殺さんばかりに拳を振るう様は、気が狂いそうになるほど美しくセクシーだった。
いつしか右手は生地の上からではなく、直に触れていた。
止め処なく流れ出る粘液が指を濡らしはじめる。
とてもじゃないが人に見せられるような行為ではない。
そうじゃなくても岩陰とはいえ屋外だ。
尋常ならざる状況がとどまる所を知らない昂ぶりに拍車をかける。
もう、限界だった。
「こんばんわ」
クロップドパンツに手をかけた瞬間だった。
突然降って湧いたやわらかいその声に膨張しまくった卑俗な感情が霧散する。
自分が今までしていた愚行を見られたかもしれない恥ずかしさよりも、どこか懐かしさを覚える声の安堵感が勝っていた。
ついさっきまで俺を殴り殺そうと懸命にパンチを繰り出していた初恋の人のあまりに現実的な声音に自分の想像力を称えたくなる。
それくらいの立体感だった。
いや、ただの幻聴かもしれない。
妙なリアルさはやはり、あの女が原因か。
「青川さん」
おいおい、ユウコ先生が俺をさん付けするわけないだろう。
目の端で人の気配を感じて、首を振ると本当にユウコ先生がいた。艶やかなロングヘアをなんつうんだったか髪飾りでまとめて、肩から垂らす髪型はまさに憧れだったあの人。
たった3パーのアルコール分で視覚聴覚まとめておかしくなっちまったか。それとも夢でも見てるのか。だいぶ会わないうちに背が伸びたのか、あの頃より大きく見える。
月明かりでもしっかり映える、清潔そうな白の半そでシャツにミニスカート、足を編み上げのサンダルで固めている。
「桃海さんからここにいるんじゃないかってお聞きして」
オウミさん? 桃姐から聞いたのか。
「お隣り、よろしいですか?」
ユウコ先生が俺の隣に腰を下ろした。
ユウコ先生が何の目的でここに来たのか、そういうごく当たり前な疑問よりも意図が掴めないとはいえ憧れだった人の登場の喜びの方が上回っていた。おかしな話ではあるが、軽い酔いに加えて今日はあまりにイベントが起こり過ぎた。真っ当な思考を働かせるには情報が雑多すぎて整理し切れない。不自然とはいえ安易な拠り所に縋ってもいいはずだ。
「今日さ、先生にそっくりな女に会ったんだ」
波の音が心地いい。
「顔もスタイルも振舞いもすんげー似てた。あと、たぶん性格も。何から何まで瓜ふたつと思ったけど、先生よか背丈はあったし、なによりボクシングが強えんだ。プロまで目指してた赤湖のパンチを浴びることなく、最後は一発でKOだぜ。それ見てるうちにさ、もうリングには上がらないって決めてたのに、急にやりたくなっちまって俺も挑戦したけど……ダメだった」
先生はじっと微笑みながら、俺の話に耳を傾けている。
「この年で恥ずいんだけど、ひと目ぼれしちまったんだ。赤湖相手にダンスでもするみたいにリングで舞っている姿は本当にきれいだったし、実際に一戦交えてるときの彼女はマジで最高だった。こういうこというと、引かれるか笑われると思うんだけどさ」
やさしく囁くような声で、笑いませんと聞こえた。気のせいかもしれない。
「俺、あのまま彼女に殴り殺されてもいいやって思ったんだ。あくまで想像だけど、赤湖をノックアウトしたときの彼女は本気じゃなかった気がする。あれだけの動きを見せただけでもじゅうぶんすごいんだけど、それでもまだ、本気を隠しているように見えた。その本気を俺は全力で受け取りたかったんだ」
そう、俺はあの瞬間、死を覚悟した。惚れた女に殴り殺されるという、傍からみたらずいぶんとばかげた、しかし俺にとっては最高の死に方。それを俺は選んだ。
「でも、振られたよ。彼女はそこまで愚かじゃなかった。赤湖と対戦したのも卑怯な手でノックアウトされた連れの敵討ちだったんだろうし、実際、彼女は一発で赤湖を沈めたんだ。何発も打つチャンスはあったのに、一発だけで決めた。律儀な女だよ。でも、そういうところがムカついたのも事実さ。いい女だけにそういう気づかいが逆に癇に触るっつうか。いや、向こうになんにも非はねえや。理不尽なことに果敢に立ち上がって、実行しただけだ。俺との一戦は気を使ってくれたんだ。滾りまくってる俺に同情してくれたっつうかさ」
「同情じゃありませんよ」
ユウコ先生が首を振る。風呂上りなのか、微風に乗っていい匂いがした。
「青川さんの本気を私も受け取ってみたくなったんです」
初恋の人は諭すみたいに俺の眼をみて語った。
「とても真剣な眼差しで対戦を申し込む青川さんの気持ちはじゅうぶん伝わってきました。私の方でも青川さんとグローブを交えてみたい、そう思ったからお受けしたんです、同情では決してありません」
本ッ当にいい女だったよ、あの女は。ユウコ先生の戯れを排した言葉に泣きそうになる。あんな最高の女に惚れられたら、もう何にも要らねえ。
「ユウコ先生もそう思うだろ?」
「本当に好きだったんですね、ユウコ先生のこと」
ユウコ先生にユウコ先生が好きだったんですねといわれるのも妙な気がする。
「…………ん?」
アタマを振る。いちばん最初に感じ、いっとき追いやっていたシンプルな疑問が急にふくらみ俺に冷静さを取り戻せとささやく。
ここは地元の、俺のお気に入りの場所。他に知っているやつはいないとておきの場所。なのに、なんでここにユウコ先生がいるんだよ。いや、さっき、なんつったっけ。桃姐に聞いた? なんで桃姐が知ってるんだよ。夢にしちゃリアルだし、酔ったっつてもまだ缶チューハイ一本も空けちゃいないのに。
「ユウコ先生だよ……な?」
ユウコ先生はそっと俺の手を取ると、両手でやさしく包んで微笑む。今日の昼過ぎに似たようなことをされたんだ。あのニノマエナナミに。
「今日はたいへんお世話になりました、ニノマエナナミです」
ニノマエナナミと名乗ったユウコ先生はとてもいい笑顔を見せた。……なんで、ユウコ先生がニノマエナナミって名乗るんだよ。いや、ニノマエナナミだからニノマエナナミと名乗ったわけで、つまり目の前にいるのはユウコ先生じゃなく、ニノマエナナミということになる。じゃ、ユウコ先生はどこにいったんだ。
「そんなに似ていますか」
ニノマエナナミと名乗ったニノマエナナミが訊く。俺は頷いた。
「あんた、ニノマエさんなのか? あのイベントで会った、ニノマエナナミさんなのか?」
「はい」
「なんで、ここにいるんだ」
「桃海さんがホテルにいらして、青川さんの話相手になって欲しいと頼まれたんです」
なんで桃姐がそんなことニノマエナナミに頼むんだよ。
「ここを桃姐に聞いたっていったよな」
「はい。きっとここだろうと」
どうしてあの女がここを知ってるんだ。いや、そんなことよりも、ユウコ先生のつもりで話した今さっきのこと、全部本人に聞かれたってことか?
「……………う」
顔が熱くなってくる。間違いなく、酔いのせいじゃねえ。
「うあァァァァァァァァァァァァ……」
穴があったら入りたいってのはこういうことか。穴など掘ってる暇はない俺に残された道は逃げることだけだ。勢いよく立ち上がって、て、て、て、て……。
がくんと膝が折れる。頭が回る。視界が歪む。視覚と意識が次第に溶け始め、やがて混ざり合うと訳の分からないうちに俺は、今日、二度目のブラックアウトを味わった。
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同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
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