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屋敷に戻されたエレナはさっきの部屋に入れられた。フェルナンドとイネスも一緒だ。
「お前、どうやってこの部屋を出た!」
フェルナンドの怒声が響く。エレナは口を引き結び、決して答えようとはしなかった。
パシン、と乾いた音が鳴る。エレナは頬を平手打ちされ、痛みに顔を歪めた。
「フェルナンド様! 傷をつけてはいけません」
「ふん、強情な娘よ。必ず自白させてやる。イネス、面会の約束は取り付けたか?」
「はい。半時後に」
「よし。俺が皇太子になるまであと半時か。もう逃げ出せぬように、それまで俺がここで見張っていよう。イネス、少し席を外せ」
「フェルナンド様、何をなさるつもりですか」
「自白魔法では気を失ってしまうかもしれんからな。軽く尋問するだけだ」
「どうか、無体なことはなさらぬよう」
ニヤリと笑うフェルナンド。
「どうせ、ウィルフレドが既に手をつけているのだろう? ならば俺が味見したところで減りはせん」
「そんなことはしておりません! 私が証言します」
「うるさいな、お前は。皇子に対して不敬だぞ、早く出て行け」
イネスは唇を噛み、部屋を出て行った。
(何? 何をするつもりなの、この男は)
後ろ手に縛られているエレナにフェルナンドがジリジリと近寄ってきた。
「短いが綺麗な金の髪だ。伸ばせば美しくなるだろう」
そう言いながらエレナの髪を触る。その手の感触がたまらなく気持ち悪くてエレナは顔を背けたが、顎を掴まれてクイと上を向かされた。フェルナンドと至近距離で見つめ合う形になる。
「こうして見ると顔も整っている。そして身体も」
服の上からではあるが、フェルナンドがエレナの胸を鷲掴みにした。
「やめて! 触らないで」
縛られたままエレナは身体をよじって逃げようとした。
だがフェルナンドに抱きつかれ、暴れれば暴れるほど強く抱きしめられてしまう。フェルナンドはエレナの背中から尻に手を動かし、その柔らかな感触を楽しんでいた。
(嫌だ! 気持ち悪い……! やめて)
涙を浮かべて身体を動かすエレナだが男の力には敵わず、抜け出すことはできない。
「コンテスティの第一皇子に抱かれて暴れる女も初めてだな。こういうのを組み伏せるのもまた一興。父との面会が終わったらたっぷり可愛がってやろう」
もう一度顎を持たれ上を向かされるエレナ。フェルナンドの顔が近づいてくる。
(いや……!)
唇が重ねられる瞬間、エレナはフェルナンドの唇をガリッと噛んだ。
「痛えっ」
フェルナンドはパッと身体を離し自分の唇を拭って血が出ているのを見た。その瞬間、目がギラリと邪気を帯びた。
「お前、高貴なる俺様にこんなことをしてただで済むと思うなよ」
さっきよりも力強く、フェルナンドはエレナの頬を叩いた。その衝撃に立っていられず、エレナは床に倒れ込む。頬がジンジンとし、口の中に嫌な味が広がっていった。
倒れたエレナの腹の上に足を乗せて爪先にグリグリと力を入れる。
「ぐっ……」
「いいか。コンテスティ皇太子である俺に逆らうなど許されない。高貴な血を流させた罪、その身体で贖ってもらうから覚悟しておけ」
フェルナンドは兵士を呼び、エレナの足も縛らせた。そして肩に担いで馬車に運ぶよう命じる。
「フェルナンド様! 何をなさったのですか!」
エレナの顔が腫れ、グッタリとしているのを見たイネスが駆け寄ってくるが、兵士に止められてしまう。
「お前ももうよい。用済みだ。縛って部屋に放り込んでおけ」
「なっ……フェルナンド様!」
兵士がイネスも後ろ手に縛る。魔力を封じる縄で縛られてしまうと、イネスにもどうにもできない。
「お待ち下さい、フェルナンド様!」
イネスの声が虚しく響き渡っていた。
「お前、どうやってこの部屋を出た!」
フェルナンドの怒声が響く。エレナは口を引き結び、決して答えようとはしなかった。
パシン、と乾いた音が鳴る。エレナは頬を平手打ちされ、痛みに顔を歪めた。
「フェルナンド様! 傷をつけてはいけません」
「ふん、強情な娘よ。必ず自白させてやる。イネス、面会の約束は取り付けたか?」
「はい。半時後に」
「よし。俺が皇太子になるまであと半時か。もう逃げ出せぬように、それまで俺がここで見張っていよう。イネス、少し席を外せ」
「フェルナンド様、何をなさるつもりですか」
「自白魔法では気を失ってしまうかもしれんからな。軽く尋問するだけだ」
「どうか、無体なことはなさらぬよう」
ニヤリと笑うフェルナンド。
「どうせ、ウィルフレドが既に手をつけているのだろう? ならば俺が味見したところで減りはせん」
「そんなことはしておりません! 私が証言します」
「うるさいな、お前は。皇子に対して不敬だぞ、早く出て行け」
イネスは唇を噛み、部屋を出て行った。
(何? 何をするつもりなの、この男は)
後ろ手に縛られているエレナにフェルナンドがジリジリと近寄ってきた。
「短いが綺麗な金の髪だ。伸ばせば美しくなるだろう」
そう言いながらエレナの髪を触る。その手の感触がたまらなく気持ち悪くてエレナは顔を背けたが、顎を掴まれてクイと上を向かされた。フェルナンドと至近距離で見つめ合う形になる。
「こうして見ると顔も整っている。そして身体も」
服の上からではあるが、フェルナンドがエレナの胸を鷲掴みにした。
「やめて! 触らないで」
縛られたままエレナは身体をよじって逃げようとした。
だがフェルナンドに抱きつかれ、暴れれば暴れるほど強く抱きしめられてしまう。フェルナンドはエレナの背中から尻に手を動かし、その柔らかな感触を楽しんでいた。
(嫌だ! 気持ち悪い……! やめて)
涙を浮かべて身体を動かすエレナだが男の力には敵わず、抜け出すことはできない。
「コンテスティの第一皇子に抱かれて暴れる女も初めてだな。こういうのを組み伏せるのもまた一興。父との面会が終わったらたっぷり可愛がってやろう」
もう一度顎を持たれ上を向かされるエレナ。フェルナンドの顔が近づいてくる。
(いや……!)
唇が重ねられる瞬間、エレナはフェルナンドの唇をガリッと噛んだ。
「痛えっ」
フェルナンドはパッと身体を離し自分の唇を拭って血が出ているのを見た。その瞬間、目がギラリと邪気を帯びた。
「お前、高貴なる俺様にこんなことをしてただで済むと思うなよ」
さっきよりも力強く、フェルナンドはエレナの頬を叩いた。その衝撃に立っていられず、エレナは床に倒れ込む。頬がジンジンとし、口の中に嫌な味が広がっていった。
倒れたエレナの腹の上に足を乗せて爪先にグリグリと力を入れる。
「ぐっ……」
「いいか。コンテスティ皇太子である俺に逆らうなど許されない。高貴な血を流させた罪、その身体で贖ってもらうから覚悟しておけ」
フェルナンドは兵士を呼び、エレナの足も縛らせた。そして肩に担いで馬車に運ぶよう命じる。
「フェルナンド様! 何をなさったのですか!」
エレナの顔が腫れ、グッタリとしているのを見たイネスが駆け寄ってくるが、兵士に止められてしまう。
「お前ももうよい。用済みだ。縛って部屋に放り込んでおけ」
「なっ……フェルナンド様!」
兵士がイネスも後ろ手に縛る。魔力を封じる縄で縛られてしまうと、イネスにもどうにもできない。
「お待ち下さい、フェルナンド様!」
イネスの声が虚しく響き渡っていた。
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