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義母と妹
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「はじめまして、レティシアお姉様。ヘザーです。驚いちゃった、お姉様ってあまりご令嬢っぽくないんですね。貴族の方ってみんなお父様みたいに金髪なんだと思ってたわ」
自然なウェーブのついた金色の髪をこれ見よがしに揺らしながらヘザーは嫌な笑みを浮かべた。どうやら、『勝った』と思っているらしい。確かに、明るいプラチナブロンド、ブルーの瞳は平民には珍しい。色だけでなく顔の造形も父に似て美しいのは間違いない。
(それにしても、お母様が亡くなったのはたった半年前なのに……)
ポーレット伯爵家当主のダニエルは、一年間の喪に服することもなく後妻を迎え入れた。しかも、その後妻は娘を連れてポーレット家に現れた。
「お父様……この方は?」
「お前の妹だ。名前はヘザーという。歳は十五になったところだ」
(なんてこと! 私の一つ下なの? ではお父様は、私が生まれた頃には既にお母様を裏切っていたということなのだわ)
「レティシア、ヘザーと仲良くしてあげてね。この子は伯爵様の血を引くあなたの妹なの。これからはあなたと同じ暮らしをここでしていくことになるのよ。あなたとこの子は同等な身分なのだから」
後妻のデミはいきなりレティシアを呼び捨てにして母親然と振舞った。レティシアの首の後ろ辺りがゾワゾワとしたのは、デミの態度が不快だからか、もしくは怒りからか。
「今後は家の事はデミに任せる。お前もデミの言うことをよく聞き、ヘザーを可愛がるんだぞ」
「……はい、お父様」
父の言葉に異を唱えることなど出来はしない。心の中で嘆息しながらレティシアは頭を下げた。
レティシアはポーレット伯爵家の一人娘である。女にも相続権があるこの国では、紛れもなく次期伯爵家当主だ。そのための勉強もしっかりと頑張ってきた。亡くなった母フローラが抜かりなく教育をしてくれたおかげである。
母には愛されていたという確信があるレティシアだが、父からの愛はあまり感じたことがなかった。
「お父様はお仕事でお忙しいのよ」
ほとんど帰ってこない父のことを母に尋ねると、いつも少し眉を下げて寂しげに言った。
(あの二人がいたからお父様は帰ってこなかったのね……)
レティシアは自分が金髪ではないから父に嫌われているのだと思っていた。レティシアの髪は母と同じ赤毛。
「いつ見ても嫌な赤い髪だな。私と少しも似ていない」
ダニエルは明るい金髪に青い瞳、いかにも貴族的な美しい男性である。そしてその美しさを自慢にしており、自分と違う赤毛の娘を疎ましく思っていた。
ダニエルとフローラは恋愛結婚ではなく、親同士が決めた婚姻だ。顔は綺麗だが全く能の無い息子を心配した祖父が、才媛で知られたスミス伯爵家のフローラと縁を結び領地経営に携わってもらおうと考えたのである。
貴族では珍しい燃えるような赤い色の髪を持つフローラ。ダニエルはその色を、そして親に勝手に決められた自分よりも優秀な妻を嫌った。
後妻のデミはかつてポーレット家のメイドだった。髪も目も平凡な茶色だがぽってりした唇と泣きぼくろ、豊満な身体を持ちいわゆる蠱惑的な女だった。フローラがレティシアを身籠った頃にポーレット家に雇われたデミは、半年も経たずに辞めた。恐らくその頃からダニエルにどこかで囲われていたのだろう。
デミがヘザーを産んだ時、ダニエルは大いに喜んだ。自分と同じ、金髪に青い目の娘だったからだ。
「なんと美しい子だ! この子はいずれ必ず引き取り、良い結婚をさせてやろう。しばらくは日陰の身で我慢してくれ」
そしてフローラが亡くなるとすぐに屋敷に迎え入れたのである。
自然なウェーブのついた金色の髪をこれ見よがしに揺らしながらヘザーは嫌な笑みを浮かべた。どうやら、『勝った』と思っているらしい。確かに、明るいプラチナブロンド、ブルーの瞳は平民には珍しい。色だけでなく顔の造形も父に似て美しいのは間違いない。
(それにしても、お母様が亡くなったのはたった半年前なのに……)
ポーレット伯爵家当主のダニエルは、一年間の喪に服することもなく後妻を迎え入れた。しかも、その後妻は娘を連れてポーレット家に現れた。
「お父様……この方は?」
「お前の妹だ。名前はヘザーという。歳は十五になったところだ」
(なんてこと! 私の一つ下なの? ではお父様は、私が生まれた頃には既にお母様を裏切っていたということなのだわ)
「レティシア、ヘザーと仲良くしてあげてね。この子は伯爵様の血を引くあなたの妹なの。これからはあなたと同じ暮らしをここでしていくことになるのよ。あなたとこの子は同等な身分なのだから」
後妻のデミはいきなりレティシアを呼び捨てにして母親然と振舞った。レティシアの首の後ろ辺りがゾワゾワとしたのは、デミの態度が不快だからか、もしくは怒りからか。
「今後は家の事はデミに任せる。お前もデミの言うことをよく聞き、ヘザーを可愛がるんだぞ」
「……はい、お父様」
父の言葉に異を唱えることなど出来はしない。心の中で嘆息しながらレティシアは頭を下げた。
レティシアはポーレット伯爵家の一人娘である。女にも相続権があるこの国では、紛れもなく次期伯爵家当主だ。そのための勉強もしっかりと頑張ってきた。亡くなった母フローラが抜かりなく教育をしてくれたおかげである。
母には愛されていたという確信があるレティシアだが、父からの愛はあまり感じたことがなかった。
「お父様はお仕事でお忙しいのよ」
ほとんど帰ってこない父のことを母に尋ねると、いつも少し眉を下げて寂しげに言った。
(あの二人がいたからお父様は帰ってこなかったのね……)
レティシアは自分が金髪ではないから父に嫌われているのだと思っていた。レティシアの髪は母と同じ赤毛。
「いつ見ても嫌な赤い髪だな。私と少しも似ていない」
ダニエルは明るい金髪に青い瞳、いかにも貴族的な美しい男性である。そしてその美しさを自慢にしており、自分と違う赤毛の娘を疎ましく思っていた。
ダニエルとフローラは恋愛結婚ではなく、親同士が決めた婚姻だ。顔は綺麗だが全く能の無い息子を心配した祖父が、才媛で知られたスミス伯爵家のフローラと縁を結び領地経営に携わってもらおうと考えたのである。
貴族では珍しい燃えるような赤い色の髪を持つフローラ。ダニエルはその色を、そして親に勝手に決められた自分よりも優秀な妻を嫌った。
後妻のデミはかつてポーレット家のメイドだった。髪も目も平凡な茶色だがぽってりした唇と泣きぼくろ、豊満な身体を持ちいわゆる蠱惑的な女だった。フローラがレティシアを身籠った頃にポーレット家に雇われたデミは、半年も経たずに辞めた。恐らくその頃からダニエルにどこかで囲われていたのだろう。
デミがヘザーを産んだ時、ダニエルは大いに喜んだ。自分と同じ、金髪に青い目の娘だったからだ。
「なんと美しい子だ! この子はいずれ必ず引き取り、良い結婚をさせてやろう。しばらくは日陰の身で我慢してくれ」
そしてフローラが亡くなるとすぐに屋敷に迎え入れたのである。
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★感想いただきまして、さすがにちょっと可哀想かなと最後の35話、文を少し付けたしました。私めの表現の力不足でした…それでも読んで下さいまして嬉しいです。
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