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その少し前、トリシャはアビーと別れて一人で渡り廊下を歩いていた。すると突然、後ろから布で口を塞がれ、そのまま二人の男に抱えられて連れ去られてしまった。
(誰……? なぜ学園内でこんなことが……?)
とにかく、逃げなければ。手足をばたつかせて逃げ出そうとするが、がっしりと掴まれていて出来ない。声を出したくても布で猿ぐつわをされていて叫ぶことが出来ない。
(助けて、誰か……! ラリー……!)
人気のない裏庭まで来ると、乱暴に地面に放り出された。そして手を縛られ、ニヤニヤとした男たちに上から見下ろされた。
「へええ、デカ女だって聞いていたけど上玉じゃん」
「あいつよりか全然綺麗だよな、出るとこ出てていい身体だし」
「制服を切り裂くだけでいいって言われたけどなー、それだけじゃ勿体ないな」
「せっかくだから頂いちゃおうぜ」
そうして二人が手を伸ばしてきた。
(やめて! 私に触らないで……!)
トリシャは足を伸ばして男を蹴ろうとしたが、あっさり両足を掴まれてしまった。
「じゃあ俺からだ」
男の顔が近づいてきた時、バタバタと足音が聞こえた。
振り向いた男の顔面に、思いっきり飛んで蹴り上げたアビーの編み上げブーツが命中した。
「痛えっ」
思わずふらついた男の頭にすかさず頭突きを食らわすと、もう一人の男の股間を蹴り上げた。
「ぐわっ」
腹を抱えてうずくまった男をブーツで蹴り倒し、トリシャを助け起こした。
「トリシャ!」
すぐに猿ぐつわと手を縛っていた紐をほどく。
「アビー!」
トリシャが泣きながら縋り付いてきた。どんなに恐ろしかったことだろう。アビーはトリシャを背後に回し、男たちからかばうように立ちはだかった。
「くそう、このデカ女。喧嘩慣れしてやがる」
「ふん、所詮は女だ。痛い目見せてやる」
そう言って一人の男が折り畳みナイフを取り出し、パチンと開いた。
(まずいわ、ナイフなんて兄さまとのケンカでは出てこなかった……)
アビーは急いでジャケットを脱ぎ、これを振り回して防御しようと決めた。
「服と一緒に顔も切り刻んでやるぜ」
男が向かって来た。その時。
「そこまでだ!」
突然現れたジーンが男の腕をねじり上げ、男はたまらずナイフを取り落とした。もう一人の男は、ものすごい勢いで走ってきた殿下の、体重が乗ったパンチを顔に受けて地面に倒れ込んだ。
「この野郎! トリシャに何をした!」
既に気を失った男を、殿下は殴り続けている。そこへ殿下の護衛が到着し、二人の男の身柄を拘束した。
「トリシャ!」
殿下はトリシャの元へ走り寄ってきた。
「ラリー!」
殿下はトリシャを固く抱きしめ、涙を流していた。
「すまない、トリシャ。私のせいでこんな怖い思いをさせてしまった」
「大丈夫です、ラリー。こうして助けていただいて嬉しい……! それに、アビーが来てくれました」
殿下はハッとしてアビーを見た。
「アビー、ありがとう。どんなに感謝しても足りない。トリシャを守ってくれてありがとう……!」
アビーは慌てて言った。
「ラリー、頭を上げて下さい。私なら大丈夫です。兄としょっちゅうケンカしていたのが役に立ちました。トリシャを守ることが出来て本当に良かった」
「アビー、ありがとう……!」
トリシャも涙に濡れた顔でアビーに抱きついてきて感謝した。
「トリシャ、医務室へ行こう。私が連れて行く」
そう言って殿下はトリシャを抱き上げた。
「ラリー! 私、重いですわ。歩いて行けます……!」
「ダメだ。どこを怪我しているかわからないだろう。それに全然重くない」
「でも……」
「いいから。私はそれほどやわじゃないぞ。安心して抱かれてくれ」
「ラリー……」
トリシャはついに恥ずかしさを捨てて殿下に身体を預けた。殿下は微笑むと、
「ジーン、先に行っている。お前もすぐ来い」
そう言って医務室に向かった。
アビーは二人を見届けるとホッとして、脚の力が抜けてしまった。
「おっと」
倒れる寸前でジーンが受け止めた。
「よく頑張ったな」
ジーンはアビーを抱き上げてそう言ってくれた。
「ジーン、私も重いんですよ」
「何言ってる。軽いもんだ。もう少し肉を付けなきゃいけないくらいだ」
「そんな。それこそ巨人になってしまいます」
「私のそばにいれば巨人には見えないさ」
そんなことを言ってくれた気がしたが、安堵したアビーはそのまま気を失ってしまっていた。
(誰……? なぜ学園内でこんなことが……?)
とにかく、逃げなければ。手足をばたつかせて逃げ出そうとするが、がっしりと掴まれていて出来ない。声を出したくても布で猿ぐつわをされていて叫ぶことが出来ない。
(助けて、誰か……! ラリー……!)
人気のない裏庭まで来ると、乱暴に地面に放り出された。そして手を縛られ、ニヤニヤとした男たちに上から見下ろされた。
「へええ、デカ女だって聞いていたけど上玉じゃん」
「あいつよりか全然綺麗だよな、出るとこ出てていい身体だし」
「制服を切り裂くだけでいいって言われたけどなー、それだけじゃ勿体ないな」
「せっかくだから頂いちゃおうぜ」
そうして二人が手を伸ばしてきた。
(やめて! 私に触らないで……!)
トリシャは足を伸ばして男を蹴ろうとしたが、あっさり両足を掴まれてしまった。
「じゃあ俺からだ」
男の顔が近づいてきた時、バタバタと足音が聞こえた。
振り向いた男の顔面に、思いっきり飛んで蹴り上げたアビーの編み上げブーツが命中した。
「痛えっ」
思わずふらついた男の頭にすかさず頭突きを食らわすと、もう一人の男の股間を蹴り上げた。
「ぐわっ」
腹を抱えてうずくまった男をブーツで蹴り倒し、トリシャを助け起こした。
「トリシャ!」
すぐに猿ぐつわと手を縛っていた紐をほどく。
「アビー!」
トリシャが泣きながら縋り付いてきた。どんなに恐ろしかったことだろう。アビーはトリシャを背後に回し、男たちからかばうように立ちはだかった。
「くそう、このデカ女。喧嘩慣れしてやがる」
「ふん、所詮は女だ。痛い目見せてやる」
そう言って一人の男が折り畳みナイフを取り出し、パチンと開いた。
(まずいわ、ナイフなんて兄さまとのケンカでは出てこなかった……)
アビーは急いでジャケットを脱ぎ、これを振り回して防御しようと決めた。
「服と一緒に顔も切り刻んでやるぜ」
男が向かって来た。その時。
「そこまでだ!」
突然現れたジーンが男の腕をねじり上げ、男はたまらずナイフを取り落とした。もう一人の男は、ものすごい勢いで走ってきた殿下の、体重が乗ったパンチを顔に受けて地面に倒れ込んだ。
「この野郎! トリシャに何をした!」
既に気を失った男を、殿下は殴り続けている。そこへ殿下の護衛が到着し、二人の男の身柄を拘束した。
「トリシャ!」
殿下はトリシャの元へ走り寄ってきた。
「ラリー!」
殿下はトリシャを固く抱きしめ、涙を流していた。
「すまない、トリシャ。私のせいでこんな怖い思いをさせてしまった」
「大丈夫です、ラリー。こうして助けていただいて嬉しい……! それに、アビーが来てくれました」
殿下はハッとしてアビーを見た。
「アビー、ありがとう。どんなに感謝しても足りない。トリシャを守ってくれてありがとう……!」
アビーは慌てて言った。
「ラリー、頭を上げて下さい。私なら大丈夫です。兄としょっちゅうケンカしていたのが役に立ちました。トリシャを守ることが出来て本当に良かった」
「アビー、ありがとう……!」
トリシャも涙に濡れた顔でアビーに抱きついてきて感謝した。
「トリシャ、医務室へ行こう。私が連れて行く」
そう言って殿下はトリシャを抱き上げた。
「ラリー! 私、重いですわ。歩いて行けます……!」
「ダメだ。どこを怪我しているかわからないだろう。それに全然重くない」
「でも……」
「いいから。私はそれほどやわじゃないぞ。安心して抱かれてくれ」
「ラリー……」
トリシャはついに恥ずかしさを捨てて殿下に身体を預けた。殿下は微笑むと、
「ジーン、先に行っている。お前もすぐ来い」
そう言って医務室に向かった。
アビーは二人を見届けるとホッとして、脚の力が抜けてしまった。
「おっと」
倒れる寸前でジーンが受け止めた。
「よく頑張ったな」
ジーンはアビーを抱き上げてそう言ってくれた。
「ジーン、私も重いんですよ」
「何言ってる。軽いもんだ。もう少し肉を付けなきゃいけないくらいだ」
「そんな。それこそ巨人になってしまいます」
「私のそばにいれば巨人には見えないさ」
そんなことを言ってくれた気がしたが、安堵したアビーはそのまま気を失ってしまっていた。
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