137 / 288
第十三章 三年になって
第137話 チュートリアル:BAR
しおりを挟む
「で? ダンジョンに潜る授業はどうだったんだ? 噂じゃアクシデントがあったって」
「どうも何もそのままだって。合格貰うための水が無くて、引率の攻略者と一緒に調査しに行ったんだよ」
ダンジョンに潜ってから翌日。
今はお昼休みで食堂にて大吾、進太郎、ダーク=ノワールの四人で昨日のダンジョンの話をしている。ちなみに瀬那は女子グループでワイワイと盛り上がっている。
「俺と大吾の方はアクシデントどころか順調すぎる程だった」
「いいじゃん。アクシデントなんて起こらないに越したことないって」
このダンジョンに潜って課題をする授業は、しばらく続く予定。その初っ端にアクシデント。大吾と進太郎の班は恙なく捌いたそう。
「♰まさか洞窟の奥に氷結――」
「おい! ッシ! だろ」
「え、あ、そうだった。ン゛ン゛、そうだった♰」
一応アクシデントの原因であったモンスター――氷結の怪鳥の事は阿久津先生から箝口令が出ている。理由は分からないけど、ただのアクシデントじゃないのは先生の雰囲気で分かった。まぁ相変わらずやる気無さそうだったけど。
「……そっか。じゃあこの話はこれで終わり! 引率の攻略者の話しようぜー」
察した大吾が無理やり話題を変えた。なかなか気の利く男だ。やっぱイケメンはチゲーわ。
「こっちの人らはアレだな。五人兄弟だった」
「五人も居もいたのか」
「しかも驚く事なかれ! 驚異の五つ子だ!!」
「五つ子!?」
五人兄弟って聞いてまず思ったのが親御さん頑張ったなという感想。そして五つ子と聞かされ、俺はさらに驚愕。お母さん頑張ったな。
「しかも長男から末っ子までそれぞれパーソナルカラーだった。赤から始まってピンクで終わる」
「そう! それと醸し出す昭和感! なんだろうなぁあの空気感は」
それってもう実質おそ松くんじゃん。その昔に放送されたって言う昼ドラマの「大好き!五つ子」しか俺にはわからん。
「それと、次男の人が大吾と声が似ていた」
「らしいんだけど、俺はさっぱりでなぁ」
「うん。何となく想像がつく」
あと長男の人は不倫しそうだな。俺の毒電波受信乳首がそう言ってるから間違いない。
「萌ちゃんたちはどうなんだよ」
「……ビーエフとリゾネーターとティージーだった」
「……は?」
俺の率直な言葉が分からないのか、大吾がきょとんとしている。
「だよな、戸島」
「♰そうだな。BFとリゾネーターとTGだった♰」
「……」
ダーク=ノワールは俺と同意見。つかもうこれ以上の分かりやすい説明が無い。
そんな事を思っていると、進太郎が眉毛をハノ字にし優しい目で俺たちを見た。
「言えないからってわざわざ頭文字を使わなくてもいい。……大変だったんだな」
「別に言えない訳じゃねーから!?」
そんなこんなで休憩が終わり、授業再開。
放課後、大吾と進太郎、戸島がまたバトルをしに行くと言い出した。
「ごめん。用事あんだわ」
そう言って俺は断った。
帰宅し、軽くシャワーを浴びて黒のジャージに着替える。
「よし」
着替え終わった俺はリャンリャンの部屋へ。
コンコンと二回ノックし、ドアを開けて部屋に入った。
テレビも無く椅子も無く、ただベッドが一つだけあるなんとも殺風景な部屋。そのベッドの上でリャンリャンが座禅を組んでいた。
「仙人みたいだな」
「仙人だからネ☆」
もともと目が細くて目を瞑っているのか開いているのかわからん。その状態でリャンリャンの身体から滲み出る可視化した力――仙気。
どうやら瀬那も習った仙気の循環をしてるのだろうか。
「今から行くけど、お前もくるか?」
「もちろんサ☆」
正直リャンリャンと街を歩くと悪目立ちするから考え物だ。だって中華風礼服着こなして後ろ付いてくるもんだからな。しかも細目イケメンのせいで女性の視線を釘付けにしてるし……。
「もうちょっと離れて歩けよ」
「ダメ☆ 私は大哥の家臣だからネ☆」
「そう言うところ律儀なんだから……」
まぁリャンリャンへの信頼度は家族同然だからな。正直リャンリャンの朝食無しの生活は考えられないほどだ。
「……んー」
繁華街の端の入り組んだ路地。そこを進んでいくと、途中で地下へと続く階段がある。
そこを降りていくと、あった。
『BAR~黄金の風~』
「ジョ○ョかよ」
しかも五部。
BARの店名は扉の左にある。大理石っぽいのにわざわざ彫ってるのがみそなのかもしれない。
扉自体は木製で小さなすりガラスがはめ込まれている。上には小さな鈴が付いているのはご愛嬌か。
時間は夜の八時頃。
この少し薄暗い廊下。俺みたいな学生には似つかわくないのは重々承知だけど、俺はここに用がある。というか、呼ばれた。
「よし」
意を決して扉を開け、店内へいざ突入。
「いらっしゃいませ……」
人生初BARを期待する初っ端、耳障りの良いイケメンボイスが俺を出迎えてくれた。
『チュートリアル:BARに入ろう』
『チュートリアルクリア』
『クリア報酬:魅+』
「めっちゃ様になっててスゲーカッコいい」
「ありがとうございます。ここでの私はサイと名乗っております故、どうぞ、そうお呼びください」
頭を軽く下げ余裕のある表情をしたのはこのBARを切り盛りするテンダー――虚無家臣の宰相だ。グラスを拭いている仕草が映画のソレ。
濃い青色の生地のシャツにテンダーってわかる服……カマーベストだったかな。首元のボタンをあえて外し、少し開放的な首元がどことなくセクシーに見える。ちなみに俺はホモじゃない。
店内はシックな青色を基本としている様で、所々に金色の装飾が施されている。店内の明るさも明るすぎず暗すぎずのいい塩梅。当然他の店は知らないけど、そこそこ広いと思う。
客層はどうだろうか。
まずはカウンターに二人。一人は青い髪の毛のおにいさん。
透明感のある真っ青なカクテルを一口だけ飲んだおにいさん。
「こちら、『静寂』でございます……」
俺の視線に気が付いたバーテンダーのサイが、カクテルの名前を教えてくれた。
「……いい名だ。ラムベースか」
「はい。カラメルを焦がしたような苦みと甘み、そして鼻腔をくすぐる甘い香りが特徴です」
なんか知らんけど大人の世界って感じがする……。
「――ンク」
おにいさんの正体はルーラーのネクロスさんだ。赤髪のフリードさんに突っかかってるイメージだけど、飲んでいる『静寂』がそうさせるのか今はクールな印象を受ける。
カウンターにもう一人居るのは女性。
「まあ、サイったら美味しいお酒作れるのねぇ」
「お褒めに預かり光栄です……」
ピンクの髪、濃いピンクのドレスを着た女性。自己主張の激しい胸部をカウンターに乗せている姿はどこか俺の彼女を彷彿とさせる。
「こちら、『ピュアラブ』でございます……」
ルーラーであるヴェーラさんが飲んでいるカクテル、ピュアラブ。
色味はジンジャーエールっぽいけど。
「ライムとジンジャーエールの爽やかさ、フランボワーズの甘酸っぱさの風味が特徴的です。初恋のときめきを思い出してはいかがと……」
「んー美味しいけど恋ってした事ないからぁ~。……宰相が恋人になってくれる?」
「お戯れを。大変光栄ですが、死んでしまいます」
「あらそう? 残念♡」
こ、ここでも大人の雰囲気が……。
「おうティアーウロング! 突っ立ってないでこっちに座れよ!」
「フリードさん。じゃあお言葉に甘えて」
ソファ席に座ると思いのほか柔らかくて驚いた。フカフカだ。
「宰相は何でもできる奴だな。俺の家臣にくら替えしないか?」
「嬉しい限りですがそれは出来ません。私はあくまでも虚無家臣なので」
「まぁ分かってたけどよ! ンク」
机に置いてある赤いカクテルを飲むフリードさん。
「そちらはベルモッドカシスでございます。カシスの甘酸っぱい味わい、ベルモットの香草、薬草が持つスパイシーな風味と程よく溶け合い、甘口ではあるがさっぱりと頂くことができます」
「へー」
これでも興味はある。何なら漢たるもの、一度はBARのテンダーになってカッコよくキメたい思いあるし。
ほら、想像してみよう。
「こちら、セックスオンザビーチです」
「キャー素敵! 抱いて!」
もうこれ。これ。
テンダーの俺がカッコよくドレス姿の瀬那に酒を提供。もうカクテルを混ぜるシェイカーを振るのと一緒に腰まで振ってる始末。
銀○マの近藤さんと同じ要領だぞおい。
「チュー」
隣の席でルーラーのガスタくんがストローで何か飲んでる。
「抹茶オレです」
「お、美味しいー」
ショタショタのガスタくん。かわいい。
「ッカアアアア!! やっぱビールが最高だよなあ!!」
ガンッと勢いよく置いた黄金のグラス。隣の席で見慣れた奴がビールをあおっていた。みんな人間体の中、見知った奴が居て悔しくも安心した。
「ティアーウロング様。お飲み物はいかがいたしましょうか」
「俺の奢りだから好きなの頼めよー」
「じゃあオレンジジュースで」
「承りました」
「じゃあ私はコレ☆」
「承りました」
こんな店で頼むドリンクなんて高いだろと身構えたけど、エルドラドが奢ってくれるなら安心だ。
リャンリャンもドリンクを頼み、隣に座ってタブレットを開いた。
「で? ここに呼びだしたのは開店祝いでもするのか?」
「そうしたいのはやまやまだが、実は耳に入れて欲しい話がある」
「……それここで言う必要性ある? 俺ん家でいいじゃん」
「これだからガキんちょはぁ。こうした雰囲気の中で伝えるのが、最高にイケてるだろ」
「わかる」
刑事ドラマとか海外ドラマとか、大人のディープな雰囲気で話絵が最高にカッコいい。このおっさん分かってるな。
「昨日の授業でトラブったろ。滝が凍ったって」
「耳が早いな。どこ情報だよ……」
この酒飲みの情報網がマジで謎過ぎる。
「氷結モンスター。いや、氷結界。それらに心当たりがある」
「氷結界……?」
――なにそれ。
そう言いだそうとした時。
「大哥、大変だヨ☆」
ウキウキ気分で大変だとは意味不明。リャンリャンがタブレットを見せて来た。
《――繰り返します。ロシア南東部にある観光名所、バイカル湖が凍結したとの情報が入りました。情報によりますと、凍結したバイカル湖にダンジョンへ続く巨大なゲートが出現している模様です。近隣に住む住民は避難――》
物々しい雰囲気でニュースを読むキャスター。事態の重さを物語る。
このニュースを聞き、真っ先に思い出したのは去年の夏の泡沫事件。それと同等のヤバさも感じ、同時に昨日倒した氷結怪鳥も脳裏に過る。
「あ~あ。来ちゃったか」
「なんか知ってんのかエルドラド!」
「今日はそれの事話したかったんだが、ゲートが現れたなら悠長なこと言ってられんな――ンク、っぷはー!」
言葉とは裏腹に呑気にビールを飲むエルドラド。俺の焦りが面白いのか、実に良い笑顔だ。
その時だった。
「サイ。良いカクテルだった」
「お褒めに預かり嬉しく思います」
唐突にカウンターから席を外したネクロスさん。整った綺麗な横顔、見せる背中はどこか冷淡さを感じる。
青い空間が開き、彼はその中へ消えていった。
「っま! 国連も動くし大丈夫っしょ!」
一抹の不安を覚えながら、サイに差し出されたオレンジジュースを飲むのだった。
「どうも何もそのままだって。合格貰うための水が無くて、引率の攻略者と一緒に調査しに行ったんだよ」
ダンジョンに潜ってから翌日。
今はお昼休みで食堂にて大吾、進太郎、ダーク=ノワールの四人で昨日のダンジョンの話をしている。ちなみに瀬那は女子グループでワイワイと盛り上がっている。
「俺と大吾の方はアクシデントどころか順調すぎる程だった」
「いいじゃん。アクシデントなんて起こらないに越したことないって」
このダンジョンに潜って課題をする授業は、しばらく続く予定。その初っ端にアクシデント。大吾と進太郎の班は恙なく捌いたそう。
「♰まさか洞窟の奥に氷結――」
「おい! ッシ! だろ」
「え、あ、そうだった。ン゛ン゛、そうだった♰」
一応アクシデントの原因であったモンスター――氷結の怪鳥の事は阿久津先生から箝口令が出ている。理由は分からないけど、ただのアクシデントじゃないのは先生の雰囲気で分かった。まぁ相変わらずやる気無さそうだったけど。
「……そっか。じゃあこの話はこれで終わり! 引率の攻略者の話しようぜー」
察した大吾が無理やり話題を変えた。なかなか気の利く男だ。やっぱイケメンはチゲーわ。
「こっちの人らはアレだな。五人兄弟だった」
「五人も居もいたのか」
「しかも驚く事なかれ! 驚異の五つ子だ!!」
「五つ子!?」
五人兄弟って聞いてまず思ったのが親御さん頑張ったなという感想。そして五つ子と聞かされ、俺はさらに驚愕。お母さん頑張ったな。
「しかも長男から末っ子までそれぞれパーソナルカラーだった。赤から始まってピンクで終わる」
「そう! それと醸し出す昭和感! なんだろうなぁあの空気感は」
それってもう実質おそ松くんじゃん。その昔に放送されたって言う昼ドラマの「大好き!五つ子」しか俺にはわからん。
「それと、次男の人が大吾と声が似ていた」
「らしいんだけど、俺はさっぱりでなぁ」
「うん。何となく想像がつく」
あと長男の人は不倫しそうだな。俺の毒電波受信乳首がそう言ってるから間違いない。
「萌ちゃんたちはどうなんだよ」
「……ビーエフとリゾネーターとティージーだった」
「……は?」
俺の率直な言葉が分からないのか、大吾がきょとんとしている。
「だよな、戸島」
「♰そうだな。BFとリゾネーターとTGだった♰」
「……」
ダーク=ノワールは俺と同意見。つかもうこれ以上の分かりやすい説明が無い。
そんな事を思っていると、進太郎が眉毛をハノ字にし優しい目で俺たちを見た。
「言えないからってわざわざ頭文字を使わなくてもいい。……大変だったんだな」
「別に言えない訳じゃねーから!?」
そんなこんなで休憩が終わり、授業再開。
放課後、大吾と進太郎、戸島がまたバトルをしに行くと言い出した。
「ごめん。用事あんだわ」
そう言って俺は断った。
帰宅し、軽くシャワーを浴びて黒のジャージに着替える。
「よし」
着替え終わった俺はリャンリャンの部屋へ。
コンコンと二回ノックし、ドアを開けて部屋に入った。
テレビも無く椅子も無く、ただベッドが一つだけあるなんとも殺風景な部屋。そのベッドの上でリャンリャンが座禅を組んでいた。
「仙人みたいだな」
「仙人だからネ☆」
もともと目が細くて目を瞑っているのか開いているのかわからん。その状態でリャンリャンの身体から滲み出る可視化した力――仙気。
どうやら瀬那も習った仙気の循環をしてるのだろうか。
「今から行くけど、お前もくるか?」
「もちろんサ☆」
正直リャンリャンと街を歩くと悪目立ちするから考え物だ。だって中華風礼服着こなして後ろ付いてくるもんだからな。しかも細目イケメンのせいで女性の視線を釘付けにしてるし……。
「もうちょっと離れて歩けよ」
「ダメ☆ 私は大哥の家臣だからネ☆」
「そう言うところ律儀なんだから……」
まぁリャンリャンへの信頼度は家族同然だからな。正直リャンリャンの朝食無しの生活は考えられないほどだ。
「……んー」
繁華街の端の入り組んだ路地。そこを進んでいくと、途中で地下へと続く階段がある。
そこを降りていくと、あった。
『BAR~黄金の風~』
「ジョ○ョかよ」
しかも五部。
BARの店名は扉の左にある。大理石っぽいのにわざわざ彫ってるのがみそなのかもしれない。
扉自体は木製で小さなすりガラスがはめ込まれている。上には小さな鈴が付いているのはご愛嬌か。
時間は夜の八時頃。
この少し薄暗い廊下。俺みたいな学生には似つかわくないのは重々承知だけど、俺はここに用がある。というか、呼ばれた。
「よし」
意を決して扉を開け、店内へいざ突入。
「いらっしゃいませ……」
人生初BARを期待する初っ端、耳障りの良いイケメンボイスが俺を出迎えてくれた。
『チュートリアル:BARに入ろう』
『チュートリアルクリア』
『クリア報酬:魅+』
「めっちゃ様になっててスゲーカッコいい」
「ありがとうございます。ここでの私はサイと名乗っております故、どうぞ、そうお呼びください」
頭を軽く下げ余裕のある表情をしたのはこのBARを切り盛りするテンダー――虚無家臣の宰相だ。グラスを拭いている仕草が映画のソレ。
濃い青色の生地のシャツにテンダーってわかる服……カマーベストだったかな。首元のボタンをあえて外し、少し開放的な首元がどことなくセクシーに見える。ちなみに俺はホモじゃない。
店内はシックな青色を基本としている様で、所々に金色の装飾が施されている。店内の明るさも明るすぎず暗すぎずのいい塩梅。当然他の店は知らないけど、そこそこ広いと思う。
客層はどうだろうか。
まずはカウンターに二人。一人は青い髪の毛のおにいさん。
透明感のある真っ青なカクテルを一口だけ飲んだおにいさん。
「こちら、『静寂』でございます……」
俺の視線に気が付いたバーテンダーのサイが、カクテルの名前を教えてくれた。
「……いい名だ。ラムベースか」
「はい。カラメルを焦がしたような苦みと甘み、そして鼻腔をくすぐる甘い香りが特徴です」
なんか知らんけど大人の世界って感じがする……。
「――ンク」
おにいさんの正体はルーラーのネクロスさんだ。赤髪のフリードさんに突っかかってるイメージだけど、飲んでいる『静寂』がそうさせるのか今はクールな印象を受ける。
カウンターにもう一人居るのは女性。
「まあ、サイったら美味しいお酒作れるのねぇ」
「お褒めに預かり光栄です……」
ピンクの髪、濃いピンクのドレスを着た女性。自己主張の激しい胸部をカウンターに乗せている姿はどこか俺の彼女を彷彿とさせる。
「こちら、『ピュアラブ』でございます……」
ルーラーであるヴェーラさんが飲んでいるカクテル、ピュアラブ。
色味はジンジャーエールっぽいけど。
「ライムとジンジャーエールの爽やかさ、フランボワーズの甘酸っぱさの風味が特徴的です。初恋のときめきを思い出してはいかがと……」
「んー美味しいけど恋ってした事ないからぁ~。……宰相が恋人になってくれる?」
「お戯れを。大変光栄ですが、死んでしまいます」
「あらそう? 残念♡」
こ、ここでも大人の雰囲気が……。
「おうティアーウロング! 突っ立ってないでこっちに座れよ!」
「フリードさん。じゃあお言葉に甘えて」
ソファ席に座ると思いのほか柔らかくて驚いた。フカフカだ。
「宰相は何でもできる奴だな。俺の家臣にくら替えしないか?」
「嬉しい限りですがそれは出来ません。私はあくまでも虚無家臣なので」
「まぁ分かってたけどよ! ンク」
机に置いてある赤いカクテルを飲むフリードさん。
「そちらはベルモッドカシスでございます。カシスの甘酸っぱい味わい、ベルモットの香草、薬草が持つスパイシーな風味と程よく溶け合い、甘口ではあるがさっぱりと頂くことができます」
「へー」
これでも興味はある。何なら漢たるもの、一度はBARのテンダーになってカッコよくキメたい思いあるし。
ほら、想像してみよう。
「こちら、セックスオンザビーチです」
「キャー素敵! 抱いて!」
もうこれ。これ。
テンダーの俺がカッコよくドレス姿の瀬那に酒を提供。もうカクテルを混ぜるシェイカーを振るのと一緒に腰まで振ってる始末。
銀○マの近藤さんと同じ要領だぞおい。
「チュー」
隣の席でルーラーのガスタくんがストローで何か飲んでる。
「抹茶オレです」
「お、美味しいー」
ショタショタのガスタくん。かわいい。
「ッカアアアア!! やっぱビールが最高だよなあ!!」
ガンッと勢いよく置いた黄金のグラス。隣の席で見慣れた奴がビールをあおっていた。みんな人間体の中、見知った奴が居て悔しくも安心した。
「ティアーウロング様。お飲み物はいかがいたしましょうか」
「俺の奢りだから好きなの頼めよー」
「じゃあオレンジジュースで」
「承りました」
「じゃあ私はコレ☆」
「承りました」
こんな店で頼むドリンクなんて高いだろと身構えたけど、エルドラドが奢ってくれるなら安心だ。
リャンリャンもドリンクを頼み、隣に座ってタブレットを開いた。
「で? ここに呼びだしたのは開店祝いでもするのか?」
「そうしたいのはやまやまだが、実は耳に入れて欲しい話がある」
「……それここで言う必要性ある? 俺ん家でいいじゃん」
「これだからガキんちょはぁ。こうした雰囲気の中で伝えるのが、最高にイケてるだろ」
「わかる」
刑事ドラマとか海外ドラマとか、大人のディープな雰囲気で話絵が最高にカッコいい。このおっさん分かってるな。
「昨日の授業でトラブったろ。滝が凍ったって」
「耳が早いな。どこ情報だよ……」
この酒飲みの情報網がマジで謎過ぎる。
「氷結モンスター。いや、氷結界。それらに心当たりがある」
「氷結界……?」
――なにそれ。
そう言いだそうとした時。
「大哥、大変だヨ☆」
ウキウキ気分で大変だとは意味不明。リャンリャンがタブレットを見せて来た。
《――繰り返します。ロシア南東部にある観光名所、バイカル湖が凍結したとの情報が入りました。情報によりますと、凍結したバイカル湖にダンジョンへ続く巨大なゲートが出現している模様です。近隣に住む住民は避難――》
物々しい雰囲気でニュースを読むキャスター。事態の重さを物語る。
このニュースを聞き、真っ先に思い出したのは去年の夏の泡沫事件。それと同等のヤバさも感じ、同時に昨日倒した氷結怪鳥も脳裏に過る。
「あ~あ。来ちゃったか」
「なんか知ってんのかエルドラド!」
「今日はそれの事話したかったんだが、ゲートが現れたなら悠長なこと言ってられんな――ンク、っぷはー!」
言葉とは裏腹に呑気にビールを飲むエルドラド。俺の焦りが面白いのか、実に良い笑顔だ。
その時だった。
「サイ。良いカクテルだった」
「お褒めに預かり嬉しく思います」
唐突にカウンターから席を外したネクロスさん。整った綺麗な横顔、見せる背中はどこか冷淡さを感じる。
青い空間が開き、彼はその中へ消えていった。
「っま! 国連も動くし大丈夫っしょ!」
一抹の不安を覚えながら、サイに差し出されたオレンジジュースを飲むのだった。
100
あなたにおすすめの小説
うちの冷蔵庫がダンジョンになった
空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞
ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。
そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。
動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!
海夏世もみじ
ファンタジー
旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました
動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。
そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。
しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!
戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
金斬 児狐
ファンタジー
ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。
しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。
しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。
◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~
藤森フクロウ
ファンタジー
相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。
悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。
そこには土下座する幼女女神がいた。
『ごめんなさあああい!!!』
最初っからギャン泣きクライマックス。
社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。
真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……
そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?
ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!
第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。
♦お知らせ♦
6巻発売です! 告知遅れてすみません……。
余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~6巻が発売中!
漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。
よかったらお手に取っていただければ幸いです。
書籍1~9巻発売中。
1~8巻は万冬しま先生が、9巻以降は木々ゆうき先生がイラストを担当してくださっております。
現在別原稿を作業中のため、更新が停止しております。
しばらくしたらまた再開しますので、少々お待ちを……
コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。
漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。
※基本予約投稿が多いです。
たまに失敗してトチ狂ったことになっています。
原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。
現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる