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第1章
第0話 【名津視点】運命の出会い
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合格発表なんて、今時ネットで確認すれば済む話だ。でも母親が「一生に一度、あるかないかのことだから」と言うので、2人で見に行った。
自信はあった。一生懸命受験勉強をしたわけではないけれど、試験はそれなりにできたと思う。
「あったわ」
「あら、あっさりしてるのね。まあ、おめでとう」
掲示板に自分の受験番号を見つけても、あまり驚きはない。
都内でも有数の名門中高一貫校。ここで俺の青春が始まる。
「りょう!あった、あったー!」
一際大きな喜びの声の方を見ると、成人男性2人と、男の子の3人組が目に入った。
(お父さんと、お兄さん?)
2人の男性に何度も頭をなでられ、恥ずかしがりながらも喜んでいる「りょう」という男の子に、妙に惹かれて目が離せなかった。
入学してからの中学時代は、「りょう」という男の子と同じクラスになることはなかったけれど、学級委員長をやっているのは知っていた。
「りょう」が全校生徒の前で話すこともあって、そのときもやっぱり目線は釘付けになった。廊下ですれ違ったときも、体育祭で見かけたときも、なぜか目で追ってしまっている自分がいた。
これが「一目惚れ」というものだと気づいたのは、随分後だった。女子以外にそのような感情を抱くなんて思わなかったし、やっぱり女子はかわいい。
何人かの女子に告白されて付き合って、初めてのセックスも経験した。女子との付き合いは楽しいし、幸せを感じることもあった。でも、何か心の奥の方で引っかかっているものがあるのも、分かっていた。
高校1年のときのクラス替えで、とうとうその「りょう」と同じクラスになった。名前は向原りょう。やっぱり学級委員長をやっていて、クラスや先生のために頑張っている姿に見惚れた。
話す機会は以前よりぐっと多くなったけれど、事務的なものばかり。同じクラスになれば自然と仲良くなれると思っていたけれど、そうではなかった。
毎日のように、りょうを気にかける日々が続いた。そんな中、月に一度、りょうから「甘いにおい」がすることに気づいた。
そのにおいをかいでしまうと、あふれる欲望が止まらなくて、何度もトイレで自慰行為をするようになった。
「それって、アルファとかオメガとか、そういう類の何かじゃないかしら?」
ユイに「甘いにおい」について聞いてみると、想像していなかった答えが返ってきた。ユイは元彼女で、俺と同じアルファだ。だからなのか、考え方や好みが似ていて、別れた今も話しやすい。
「…ってことは、委員長はアルファってこと?」
「…どうかしらね。私は名津に、その『甘いにおい』というのを感じたことはないわ」
「俺もユイに感じたことはないな…」
「なら、委員長はオメガなんじゃない?」
「えっ!まさか。委員長が?」
「そもそもオメガは全人口の0.1%も満たない稀有な存在。そしてここはそこそこ偏差値の高い学校だから、オメガが存在している方がおかしいかもね」
「そう、だよな……」
そう、オメガが自分の周りに存在しているなんて、考えたこともない。でも、りょうがオメガだとすると、自分の感じるさまざまな感情に説明がつく気がした。
「そんなことより、エッチしたくなったなら、なんで私のこと誘ってくれなかったの?」
「俺たちはもう別れただろう」
ユイは俺の口を塞ぐように、自身の唇を重ねてきた。
「っおい!俺が春久に怒られるだろう」
「春久とはもう別れたわよ」
「……早いな」
「次は誘ってよ。じゃあ先行くわ」
ユイは持参していた弁当を片付けて、先に教室に行ってしまった。
りょうがオメガかもしれないと思うと、余計に気になって、もっとりょうから目が離せなくなった。
また「甘いにおい」がする日がやってきたある日。りょうの表情が喘いでいるような、何かをそそる顔をしていることに気づいた。用があるフリをして話しかけたら、脳震とうが起きたような衝撃が身体を貫いた。
高まる欲望に抗えず、隣の教室にいるユイのところまで一気に走った。
自信はあった。一生懸命受験勉強をしたわけではないけれど、試験はそれなりにできたと思う。
「あったわ」
「あら、あっさりしてるのね。まあ、おめでとう」
掲示板に自分の受験番号を見つけても、あまり驚きはない。
都内でも有数の名門中高一貫校。ここで俺の青春が始まる。
「りょう!あった、あったー!」
一際大きな喜びの声の方を見ると、成人男性2人と、男の子の3人組が目に入った。
(お父さんと、お兄さん?)
2人の男性に何度も頭をなでられ、恥ずかしがりながらも喜んでいる「りょう」という男の子に、妙に惹かれて目が離せなかった。
入学してからの中学時代は、「りょう」という男の子と同じクラスになることはなかったけれど、学級委員長をやっているのは知っていた。
「りょう」が全校生徒の前で話すこともあって、そのときもやっぱり目線は釘付けになった。廊下ですれ違ったときも、体育祭で見かけたときも、なぜか目で追ってしまっている自分がいた。
これが「一目惚れ」というものだと気づいたのは、随分後だった。女子以外にそのような感情を抱くなんて思わなかったし、やっぱり女子はかわいい。
何人かの女子に告白されて付き合って、初めてのセックスも経験した。女子との付き合いは楽しいし、幸せを感じることもあった。でも、何か心の奥の方で引っかかっているものがあるのも、分かっていた。
高校1年のときのクラス替えで、とうとうその「りょう」と同じクラスになった。名前は向原りょう。やっぱり学級委員長をやっていて、クラスや先生のために頑張っている姿に見惚れた。
話す機会は以前よりぐっと多くなったけれど、事務的なものばかり。同じクラスになれば自然と仲良くなれると思っていたけれど、そうではなかった。
毎日のように、りょうを気にかける日々が続いた。そんな中、月に一度、りょうから「甘いにおい」がすることに気づいた。
そのにおいをかいでしまうと、あふれる欲望が止まらなくて、何度もトイレで自慰行為をするようになった。
「それって、アルファとかオメガとか、そういう類の何かじゃないかしら?」
ユイに「甘いにおい」について聞いてみると、想像していなかった答えが返ってきた。ユイは元彼女で、俺と同じアルファだ。だからなのか、考え方や好みが似ていて、別れた今も話しやすい。
「…ってことは、委員長はアルファってこと?」
「…どうかしらね。私は名津に、その『甘いにおい』というのを感じたことはないわ」
「俺もユイに感じたことはないな…」
「なら、委員長はオメガなんじゃない?」
「えっ!まさか。委員長が?」
「そもそもオメガは全人口の0.1%も満たない稀有な存在。そしてここはそこそこ偏差値の高い学校だから、オメガが存在している方がおかしいかもね」
「そう、だよな……」
そう、オメガが自分の周りに存在しているなんて、考えたこともない。でも、りょうがオメガだとすると、自分の感じるさまざまな感情に説明がつく気がした。
「そんなことより、エッチしたくなったなら、なんで私のこと誘ってくれなかったの?」
「俺たちはもう別れただろう」
ユイは俺の口を塞ぐように、自身の唇を重ねてきた。
「っおい!俺が春久に怒られるだろう」
「春久とはもう別れたわよ」
「……早いな」
「次は誘ってよ。じゃあ先行くわ」
ユイは持参していた弁当を片付けて、先に教室に行ってしまった。
りょうがオメガかもしれないと思うと、余計に気になって、もっとりょうから目が離せなくなった。
また「甘いにおい」がする日がやってきたある日。りょうの表情が喘いでいるような、何かをそそる顔をしていることに気づいた。用があるフリをして話しかけたら、脳震とうが起きたような衝撃が身体を貫いた。
高まる欲望に抗えず、隣の教室にいるユイのところまで一気に走った。
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