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やっと6歳
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ヘンリー殿下は満足したようで、来なくなりました。
と、言いたいのですが、毎日ではなくなったものの相変わらず電撃訪問が続いています。
追い返そうとすると、「私をガクガクいわせたのは、君が初めてだよ」とか言って、ニヤニヤ脅してくるのです!
しかも何を思ったのか、テトラディル侯爵邸での鍛錬に参加してもいいといった旨の、そこで怪我をしても不問に処すといった内容も盛り込んだ書状を持参し、私の鍛錬の時間に現れたのです。
よく許されましたね。誰ですか?! こんなものを書いたのは!! あ、国王陛下ですか、そうですか。
それを受け取った父は、渋い顔で「このような訪問を続けられるならば、相応のおもてなししかできませんよ」と苦言を呈しました。そして悪びれもしない殿下に「どうぞお構いなく」と、返されて、父は諦めきった表情で私の肩をたたいてくれましたよ。
はぁぁ。
なぜか世界より、私の日常が混乱しているような。
やっと殿下が帰ってくれて、湯あみを終えて自室でくつろいでいたところに、父が現れました。
「カーラ、ヘンリー殿下と何を話したんだい?」
先日のヘンリー殿下への狼藉を咎められるかと思いきや、父に予想外のことを聞かれました。向かいのソファに座る父は、どうせ厄介ごとだろうと言いたげに、腕を組んで私を軽くにらんでいます。
『相談されなかったのが不満なようだ』
あら。不機嫌の理由はそちらですか。でも父も、ヘンリー殿下の訪問を止められませんでしたよね。
どうしましょう。契約の話をしてもいいと思いますか?
『カーラの父の精霊は複数属性だ。王子の二の舞になる可能性が高いぞ』
へえ。複数属性の精霊は、契約を了承するかもしれないんですか。確かに、父の髪色は菖蒲色ですからね。水と、火でしょうか。直接、聞いてみましょう。
「お父様が使える魔法の属性はなんですか?」
質問を返されるとは思わなかったのか、父が少し驚いた顔をしましたが、答えてくれました。
「水と、火が扱えるが・・・関係あるのか?」
大ありです。どう思います?
『あー。我は今、カーラの父の精霊に期待の目を向けられている』
あはは。契約成立は確実そうですね。
父が無詠唱で魔法が使えるようになっても、私に問題はありません。いっそ味方が増えるようなものなので、巻き込んでしまいましょうか。
「お父様も詠唱なしで魔法が使えるようになりたいですか?」
「必要性は感じないが・・・まさか、その方法を殿下にお教えしたのか?!」
父が立ち上がりました。
怒られるかと思って、ぎゅっと目をつむり身構えましたが、それはありませんでした。父は体を投げ出すように再びソファに腰かけると、呆れた顔でこちらを見ました。
「口止めはしたのか?」
「はい。方法については口止めしました。しかしヘンリー殿下がこう頻繁にお見えになるのでは、きっと面倒な噂が立つでしょう」
二人そろって、ため息をつきます。
あの方を止める方法が思い浮かばないのですよ。最終手段、闇魔法抜きで、ですけど。
「参考までに、方法を聞いておこう」
「精霊に名付けるだけです。精霊が答えるかどうかは、その方の精霊次第なのでわかりません」
父は考えるように顎を撫でます。どうやら名付けるつもりのようです。
「では・・・アメジスト」
奇遇ですね。父も石の名をつけましたか。
想像よりあっさりと契約が成立したようで、父はテーブルの上の何もない虚空を見つめています。口が空いたままですよ。
『我らに謝意があるならば、我が主に姿を見せよ』
オニキスが重々しく言うと、私の前にこれぞ精霊! といった感じの美しい全身菖蒲色の、20センチくらいの女の人が浮いていました。顔は・・・母に似ているような。
『お初にお目にかかります、主の娘様。このたびは私に契約の機会をお与えいただき、誠にありがとうございます』
「いいえ。どうぞ、お父様の力になってあげてくださいませ」
ごく普通にやり取りする私と、父の精霊アメジストを、父は信じられないというように交互に見ています。
今、オニキスも父に見えていますか?
『いや。見せるか?』
はい。お願いします。
行ったり来たりしていた父の視線が、私の隣に控えるオニキスに固定されました。
「こちらが私の精霊、オニキスです」
「・・・これが、カーラに見えている世界か」
こっくり頷き、悪役風の笑みを作って両手を広げます。
「ようこそ、規格外の世界へ」
父は渋面でため息をつきました。その表情のまま自分の精霊であるアメジストを見つめ、口を開きます。
「ヘンリー殿下も契約を?」
「はい。残念ながら」
さらに父の眉間のしわが深まりました。腕を組んで、探るような視線を私に向けます。
「カーラ、何を企んでいるんだい?」
企むというか、行き当たりばったりの結果なのですけど。こうなったら、父には本音で語ってみましょう。
「お父様、私は「夜の女神」に、なりたくありません」
父の片方の眉が、ぴくりとしました。私の存在を公にしたことに、まだ負い目を感じているようです。
じっと父の目を見ながら、続けます。
「ですから結婚をしたくないのです。対象となる年齢の殿方を遠ざけたくて、殿下の望むものを与えてしまえば離れていくと、思ったのですが・・・」
「失敗したと」
「はい」
父の表情が、ほっとしたような、残念なような、何とも言えない感じになりました。
「本心か?」
「はい」
にっこりとほほ笑んでみせます。父が協力してくれると、とても助かるのですが。
何とも言えない表情を隠すように、父は顔を両手で覆い、そのままソファに背中を預けて天井を仰ぎました。しばらくその姿勢で固まっていましたが、顔を覆っていた手を下ろすと、いつものキリリとした表情で私を見て言いました。
「わかった。できる限り、カーラの意思を尊重しよう」
やった! 父の言質をとりましたよ!!
思わずぐっと拳を握った私の頭を撫でると、父は精霊と一緒に部屋を出ていきました。
と、言いたいのですが、毎日ではなくなったものの相変わらず電撃訪問が続いています。
追い返そうとすると、「私をガクガクいわせたのは、君が初めてだよ」とか言って、ニヤニヤ脅してくるのです!
しかも何を思ったのか、テトラディル侯爵邸での鍛錬に参加してもいいといった旨の、そこで怪我をしても不問に処すといった内容も盛り込んだ書状を持参し、私の鍛錬の時間に現れたのです。
よく許されましたね。誰ですか?! こんなものを書いたのは!! あ、国王陛下ですか、そうですか。
それを受け取った父は、渋い顔で「このような訪問を続けられるならば、相応のおもてなししかできませんよ」と苦言を呈しました。そして悪びれもしない殿下に「どうぞお構いなく」と、返されて、父は諦めきった表情で私の肩をたたいてくれましたよ。
はぁぁ。
なぜか世界より、私の日常が混乱しているような。
やっと殿下が帰ってくれて、湯あみを終えて自室でくつろいでいたところに、父が現れました。
「カーラ、ヘンリー殿下と何を話したんだい?」
先日のヘンリー殿下への狼藉を咎められるかと思いきや、父に予想外のことを聞かれました。向かいのソファに座る父は、どうせ厄介ごとだろうと言いたげに、腕を組んで私を軽くにらんでいます。
『相談されなかったのが不満なようだ』
あら。不機嫌の理由はそちらですか。でも父も、ヘンリー殿下の訪問を止められませんでしたよね。
どうしましょう。契約の話をしてもいいと思いますか?
『カーラの父の精霊は複数属性だ。王子の二の舞になる可能性が高いぞ』
へえ。複数属性の精霊は、契約を了承するかもしれないんですか。確かに、父の髪色は菖蒲色ですからね。水と、火でしょうか。直接、聞いてみましょう。
「お父様が使える魔法の属性はなんですか?」
質問を返されるとは思わなかったのか、父が少し驚いた顔をしましたが、答えてくれました。
「水と、火が扱えるが・・・関係あるのか?」
大ありです。どう思います?
『あー。我は今、カーラの父の精霊に期待の目を向けられている』
あはは。契約成立は確実そうですね。
父が無詠唱で魔法が使えるようになっても、私に問題はありません。いっそ味方が増えるようなものなので、巻き込んでしまいましょうか。
「お父様も詠唱なしで魔法が使えるようになりたいですか?」
「必要性は感じないが・・・まさか、その方法を殿下にお教えしたのか?!」
父が立ち上がりました。
怒られるかと思って、ぎゅっと目をつむり身構えましたが、それはありませんでした。父は体を投げ出すように再びソファに腰かけると、呆れた顔でこちらを見ました。
「口止めはしたのか?」
「はい。方法については口止めしました。しかしヘンリー殿下がこう頻繁にお見えになるのでは、きっと面倒な噂が立つでしょう」
二人そろって、ため息をつきます。
あの方を止める方法が思い浮かばないのですよ。最終手段、闇魔法抜きで、ですけど。
「参考までに、方法を聞いておこう」
「精霊に名付けるだけです。精霊が答えるかどうかは、その方の精霊次第なのでわかりません」
父は考えるように顎を撫でます。どうやら名付けるつもりのようです。
「では・・・アメジスト」
奇遇ですね。父も石の名をつけましたか。
想像よりあっさりと契約が成立したようで、父はテーブルの上の何もない虚空を見つめています。口が空いたままですよ。
『我らに謝意があるならば、我が主に姿を見せよ』
オニキスが重々しく言うと、私の前にこれぞ精霊! といった感じの美しい全身菖蒲色の、20センチくらいの女の人が浮いていました。顔は・・・母に似ているような。
『お初にお目にかかります、主の娘様。このたびは私に契約の機会をお与えいただき、誠にありがとうございます』
「いいえ。どうぞ、お父様の力になってあげてくださいませ」
ごく普通にやり取りする私と、父の精霊アメジストを、父は信じられないというように交互に見ています。
今、オニキスも父に見えていますか?
『いや。見せるか?』
はい。お願いします。
行ったり来たりしていた父の視線が、私の隣に控えるオニキスに固定されました。
「こちらが私の精霊、オニキスです」
「・・・これが、カーラに見えている世界か」
こっくり頷き、悪役風の笑みを作って両手を広げます。
「ようこそ、規格外の世界へ」
父は渋面でため息をつきました。その表情のまま自分の精霊であるアメジストを見つめ、口を開きます。
「ヘンリー殿下も契約を?」
「はい。残念ながら」
さらに父の眉間のしわが深まりました。腕を組んで、探るような視線を私に向けます。
「カーラ、何を企んでいるんだい?」
企むというか、行き当たりばったりの結果なのですけど。こうなったら、父には本音で語ってみましょう。
「お父様、私は「夜の女神」に、なりたくありません」
父の片方の眉が、ぴくりとしました。私の存在を公にしたことに、まだ負い目を感じているようです。
じっと父の目を見ながら、続けます。
「ですから結婚をしたくないのです。対象となる年齢の殿方を遠ざけたくて、殿下の望むものを与えてしまえば離れていくと、思ったのですが・・・」
「失敗したと」
「はい」
父の表情が、ほっとしたような、残念なような、何とも言えない感じになりました。
「本心か?」
「はい」
にっこりとほほ笑んでみせます。父が協力してくれると、とても助かるのですが。
何とも言えない表情を隠すように、父は顔を両手で覆い、そのままソファに背中を預けて天井を仰ぎました。しばらくその姿勢で固まっていましたが、顔を覆っていた手を下ろすと、いつものキリリとした表情で私を見て言いました。
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