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運命
#14
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「待って!!」
「ちょっ...?!」
「鴻戯さんは...鴻戯さんは不必要な人なんかじゃないよ!私には分かる。一緒に柔軟してた時見てたから。普段から柔軟をしていないとあんなに柔らかくならないし、足もあんなに開かない!スカフリが好きなんでしょ?まだ本当は...」
感情的になって話す私を制するように腕を掴む手を握り、
「ありがとう」
そう言って彼女は微笑んだ。笑顔を見た私はまだ言いたい事も伝えたい事もあったはずなのに口を閉ざしてしまった。
泣きたいのは鴻戯さんなのに、何で私が涙うかべてんだコノヤロー!!
腕で涙を拭い真っ直ぐ彼女を見て伝えた。
「私は鴻戯さんとスカフリをしたい!知識も技術も私には何もかも足りないから教えてもらいたい!一緒に部活がしたいよ。あの日見た様な青い空を鴻戯さんと一緒に見たいよ!だから─」
「フフっ。よくも恥ずかしげもなくそんなことが言えますわね。でもどうしてでしょう。何故か胸の辺りがとても暖かく感じます。私はも冠崎さんと一緒に青い空を飛びたいですわ」
夕日が窓から差し込み鴻戯さんの顔を優しく照らす。そこに映っていたのは優しく微笑んだ彼女の本当の姿だった。
S69を調製しながら秋月が四阿に向かって話しかける。いつもに比べ声が低く何か悩んでることがある事を四阿は察した。
「どうしたの?いつもの奏らしくもないね。何か悩んでる事とかあるの?」
「......別に。ただ、冠崎が部活に入るのか気になってただけだ」
「ふーん...それだけならそんなにテンション下がらなくてもいいんじゃない?」
金属と金属がぶつかる音が二人の間に走る沈黙をただ繋ぐかのように鳴っていた。
「僕は勝ちたい。けど、冠崎が入ってくれると確定した訳じゃない」
「─だから不安で仕方ない、か。うん、分かるよ。でもたまには待ってみるのも良いんじゃないかな?」
四阿はメガネを拭きながら会話を続ける。レンズに着いた埃はまるで秋月に覆いかぶさってる未曾有の不安の様で。綺麗に布で拭き取りながら話す彼もまた不安を優しく拭き取る様に見えた。
「僕達はここまで来るのに1回も立ち止まった事が無かったし、ここら辺で一度止まってみるのもいいと思うよ」
「でも止まったら─」
「天醒が手の届かない場所まで行ってしまう」
「だったら─!」
「焦ってもいい事ないよ、奏」
そう告げる彼の瞳はレンズ越しで見る時よりも冷たく鋭いものに見えた。
「ちょっ...?!」
「鴻戯さんは...鴻戯さんは不必要な人なんかじゃないよ!私には分かる。一緒に柔軟してた時見てたから。普段から柔軟をしていないとあんなに柔らかくならないし、足もあんなに開かない!スカフリが好きなんでしょ?まだ本当は...」
感情的になって話す私を制するように腕を掴む手を握り、
「ありがとう」
そう言って彼女は微笑んだ。笑顔を見た私はまだ言いたい事も伝えたい事もあったはずなのに口を閉ざしてしまった。
泣きたいのは鴻戯さんなのに、何で私が涙うかべてんだコノヤロー!!
腕で涙を拭い真っ直ぐ彼女を見て伝えた。
「私は鴻戯さんとスカフリをしたい!知識も技術も私には何もかも足りないから教えてもらいたい!一緒に部活がしたいよ。あの日見た様な青い空を鴻戯さんと一緒に見たいよ!だから─」
「フフっ。よくも恥ずかしげもなくそんなことが言えますわね。でもどうしてでしょう。何故か胸の辺りがとても暖かく感じます。私はも冠崎さんと一緒に青い空を飛びたいですわ」
夕日が窓から差し込み鴻戯さんの顔を優しく照らす。そこに映っていたのは優しく微笑んだ彼女の本当の姿だった。
S69を調製しながら秋月が四阿に向かって話しかける。いつもに比べ声が低く何か悩んでることがある事を四阿は察した。
「どうしたの?いつもの奏らしくもないね。何か悩んでる事とかあるの?」
「......別に。ただ、冠崎が部活に入るのか気になってただけだ」
「ふーん...それだけならそんなにテンション下がらなくてもいいんじゃない?」
金属と金属がぶつかる音が二人の間に走る沈黙をただ繋ぐかのように鳴っていた。
「僕は勝ちたい。けど、冠崎が入ってくれると確定した訳じゃない」
「─だから不安で仕方ない、か。うん、分かるよ。でもたまには待ってみるのも良いんじゃないかな?」
四阿はメガネを拭きながら会話を続ける。レンズに着いた埃はまるで秋月に覆いかぶさってる未曾有の不安の様で。綺麗に布で拭き取りながら話す彼もまた不安を優しく拭き取る様に見えた。
「僕達はここまで来るのに1回も立ち止まった事が無かったし、ここら辺で一度止まってみるのもいいと思うよ」
「でも止まったら─」
「天醒が手の届かない場所まで行ってしまう」
「だったら─!」
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そう告げる彼の瞳はレンズ越しで見る時よりも冷たく鋭いものに見えた。
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