祓え 溝口華南

斉藤 延廣

文字の大きさ
5 / 27
1章 妖を祓え

4話

しおりを挟む
『 私は知ってる 』





 華南は何かを追う。
 黒い小さな影を見つけると、影は向かってきて華南は刀で切ると消滅する。
 黒い影はさらに宙を漂い華南はそれを追っていく。

 華南と戦っている途中で黒い影は遠ざかっていく。
 前にはドレスを着た小さい女の子がいる。

「あぶない!」
 華南は女の子を抱えるとぶつかる寸前で影がかすめて二人は転ぶ。
 女の子を離して華南は近くに来た黒い影を切って消滅させる。

 女の子の近くに来ると手にかすり傷が見える。
 手にはクマのぬいぐるみ。

華南「すまない、ケガをさせるつもりはなかったんだ。」
女の子「ありがとう!」
華南「?」

 女の子(エミリー)は手に包帯が巻かれ、ぬいぐるみを片手で抱き、華南と手をつないで歩く。

エミリー「私をあのおそろしいものから守ってくれたんだよね、ぶつかってたらこれ(手のケガ)よりもっとどうなってたか。」
華南「さっきのが見えるのか?」
エミリー「うん、でもみんな信じてくれないの。
 お姉ちゃんも言ってくれたらわかってもらえるかな。」
華南「言ったところでわかるわけがない。 見える方が特別なんだ。」

エミリー「そうだ、お礼をさせて。 私のおうちはすぐだから。」
華南「いや。私には用事が 」
 二人は大きな屋敷の前に来る。

 門の前に来ると母親らしき女性(エミリー母)が立っている。
 女性はエミリーの手を見る。

エミリー「ママ違うの、お姉ちゃんは 」
エミリー母「うちの子にケガまでさせてどういうつもりかしら! もう関わらないでちょうだい!」

 エミリーはエミリー母に手を引っ張られて連れていかれる。
 エミリーは悲しい顔、華南は心配そうにそれぞれ見る。


 華南は屋敷を後にすると宙を舞う黒い影を見る。

 追っていると影は坂の上のベビーカーに当たり、坂を転がっていく。
 母親の女性はほかの主婦との会話に夢中で気づいていない。

 華南は坂の下にいてベビーカーが転がってくるのを見る。
 さらに転がった先は道路で車が走っている。
 華南は寸前でベビーカーを受け止めて衝突を回避する。

「何やってるのよ、触らないで!」
 女性がやって来ると華南は走り去る。
「もう・・・・・・」
 持ち手を軽く振るう。





 夜、屋敷ではエミリーがベッドで寝ていると寝返りうってクマのぬいぐるみからよそを向いてしまう。
 窓のすき間から何者かが入ってくるとぬいぐるみを持ち去る。





 次の日、屋敷では騒ぎになる。

「いけませんお嬢様!」
「外は危険です!」
エミリー「止めないで、探しに行くの!」

 執事や使用人達は身を案じる。
 屋敷から出ようとする。

「もうすぐお勉強の時間です!」
エミリー「イヤだ! クマちゃんがいないとなにもしたくない!」

 自分の部屋のベッドに飛び込んで一人引きこもる。
 エミリーは窓を開けて脱出しようとするが柵があって断念する。
 大きな声で助けを呼ぼうとするがみんなに気づかれると思い、止める。
 エミリーは方法を考えていると机の上に用紙を見つけ、用紙の一枚を取るとペンで書き、窓に来て柵のすき間から紙飛行機にして飛ばす。


 華南は道を歩いている途中で紙飛行機が飛んでくると近くの出窓の植木鉢に落ちる。
 紙飛行機を手に取ると気になって広げる。




[ HELP MY BEAR!! ]
(訳:クマちゃんをたすけて!!)




「クマ?」
 華南は一緒に手を繋いでいた時のことを思い返す。
「まさか、エミリーの?」

 華南は遠くで黒い影を見る。


 子ども達が道で遊んでいると三輪車で走る小さな男の子。
 三輪車は突然浮き、遊んでいた子達も注目する。
 高いところまで浮かぶと男の子は段々恐くなって泣く。
 三輪車はそれからまっ逆さまに落ちる。

 華南もそれに気づいて走りだし、転落する寸前で飛んで男の子と三輪車を受け止める。
 無事を確認すると走り出し、その後で父親が駆けつける。
「どうした、誰にやられた!?」
 子ども達はわけもわからず華南が去っていった方を指さす。


 華南はやって来たところは家屋がない場所。
 そこに町にいたときよりさらに複数の黒い影が向かって来る。
 華南は切ったり避けたりするが時折かすめたりする。

 洞窟に入ると大きな黒い影がいる。



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


〔 ベビーデビル 〕

小型の悪魔。
子どもを困らせることが大好き。
人に直接取りつくことはない。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



ベビーデビル「小さな女の子どもが来ると思ったらこんなやつかよ。」
華南「子ども達に迷惑をかけてなにになるんだ?」
ベビーデビル「ボクチンはね、子どもの困った顔を見ることが大好きなんだ。」
華南「祓われたくなかったら盗んだものを返せ!」
ベビーデビル「やだね、逆にお前をおもちゃにして遊んでやるよ!」


 華南を取り囲むようにまわりには手下の黒い影達。


 華南は刀で切ったり蹴り飛ばしたり火の玉をぶつけたりする。



 ベビーデビルが向かっていき隙をついて刀で切ると消滅する。
 体からはクマのぬいぐるみが出てきて受け止めると、華南はホッとする。


 屋敷の庭でエミリーは散歩していると鉄柵の近くにクマのぬいぐるみが座っている。
 エミリーは拾って抱き抱える。

「お姉ちゃんありがとー!」



 華南は遠くにいて振り返ることもなく町を去る。



[報告書]
怪異調査協会本部宛

______の町をうろつく妖を討伐

溝口 華南

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...