祓え 溝口華南

斉藤 延廣

文字の大きさ
6 / 27
1章 妖を祓え

5話

しおりを挟む
『 鏡こそ真実 』



 保育園。

「〝鏡よ鏡、この世で一番美しい者はだ~れ?〟
 〝それはあなた様です。〟

 〝女王様はこの言葉を聞くことにとても喜びを感じていました。〟

 〝それから長い年月が経ったある日のこと、女王様は同じように質問をしました。〟

 〝鏡よ鏡、この世で一番美しい者はだ~れ?〟
 〝それはあなた様です。 でも白雪姫はその1000倍美しいです。〟

〝それを聞いた途端、女王様はひどく腹を立てました。〟

〝私より美しいやつがいるなんて、許さない!!〟」

「先生、鏡ってウソつかないの?」
「そうね、昔から鏡は本当のことしか写さないって言われてるからね。」





 とある高校、放課後の教室にいる女子達。

「こんな噂があるんだけど。 4時44分に鏡を見るとさ、出るらしいよ。」
「出るってなにが?」
「分からない。 だからちょっとやってみようよ。」

 廊下にある全身が写る鏡の前。
 女子の一人は押されると鏡の前に飛び込み、鏡を見る。

「何か変わったことは?」
「いや、別に。」
「なんだ、やっぱり迷信か。」
「ていうか急に押さないでよ、ビックリするじゃない。」
 女子達は通り過ぎる。


 ほぼ同じ時間でそれぞれ鏡の前にいる人達。
 洗面台の前でうつむくスポーツ部員、試着室で着替える女性、カーブミラーに写るが通り過ぎる中年の男性 など。


 マンションに帰って来る中年の男性。 部屋には一人。
 脱衣所の鏡には何かが写るが男性が来ると一瞬で消える。

「?」

 脱いでる途中で男性はまわりを気にする。
 近くに忍び寄る影。



 小学校、カーテンで暗くして小さな明かりだけつけて男子達が囲んでいる。

「こんなことがあるらしいんだけど。
 夜中の二時にね、鏡を覗くとさ、未来の自分が見えるんだって。

 だけど事故とかに遭って死んだりする可能性とかもあるでしょ。 そうすると自分の顔が血だらけになって写ることもあるって。」

 周りからはどよめきの声。

「信じるか信じないかは、君達次第。」




 下校中、前髪で目が隠れている女子。
 まわりでは何人かで一緒にはしゃぎながら帰る子らも。



 夜、洗面台で歯を磨く。
 口をゆすいだ後に鏡を見る。

 ニィ・・・
「?」



 次の日、

「おっはよーございまーす!!」

「おい、あいつってあんなだったか?」
「さあ、もうちょっと暗かったような気がするけど。」

 女子は前髪を上げて服も大胆な姿に。

「とてもいい天気! 風も気持ちいいし、なにかいいことありそう!」


 自転車で走りながら慌てる中学生の男子。
「わ~ ブレーキが利かねえ~!!」


 女子は笑いながら道を渡る。
「あぶな~~い!!  」



ガシャーン!!



「いてえ・・・・・・」
 男子は自転車から転ぶ。
「あ、あの子。 大丈夫か!?


 ・・・あれ?」
 女子の姿はなく、ガラスの破片が散乱している。



 華南は道を歩いていると後ろに気配を感じる。

 素早く手を掴んでひねりながら取り押さえるとチャラい男で、手鏡を落とす。

華南「何をしていた?」
「ウソウソ、ゴメンなさい!!」
華南「私にいかがわしいことはするな。」

 手鏡を取って地面に叩きつけて割る。
 男は逃げる。

 再び歩く途中で気づく。
「しまった、あいつにここで起きてることを聞き出せばよかった・・・」

 割れた破片には影のようなものが写る。


 自転車を漕いでいた男子は慌てながら来ると華南と鉢合わせる。

「大変だ、女の子にぶつかったと思ったら誰もいなくて・・・
 こんなこと信じてくれないか。」
「わかった、もう行け。」

 華南は事故があった場所に来ると足元に落ちてる破片を拾う。
 自分の顔が写り、その背後に人影が見える。
 振り向いても誰もいない。


 ビルの前に来ると光るものを見つけ、華南は拾うと腕時計で時刻は4時44分で止まっている。


 中に入り廊下を歩いていると壁に設置された大きな鏡の前に来る。
 華南は通りすぎようとすると鏡に引き込まれそうになり、逃げようとするが持っていた破片からも挟み撃ちになる。


 引き込まれた先は同じような場所。
 鏡を見る。

「写ってない!?」
 
 歩いているとたくさんの人が群がる。
「・・・みんな 」
「努力なんかしなくたって大丈夫、なにせ俺は天才だから。」
「美しいって言葉は私のためにあるのよ。」
「あんなババアの言いなりにならなくても、オレは一人で生きていけるんだ!」



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


〔 裏の目 〕

ひとつ目妖怪の枝分かれ。
憑りつくことで対象を本能のままにする。
(ただし、憑りつくものは人など生き物だけとは限らない)


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



「 働きたくない、寝てても食うものに困らない生活が欲しい。 」
「 俺は誰より優秀なんだ! 理解してくれない奴らはみんなクズだ! 」
「 男なんかいなくたってペットの子がいればいい、むしろ結婚して。 」
「 これでジャ○ーズ入れないなんて、あいつら見る目がねえんだよ。 」
「 ガキは親の言うことさえ聞いていればいいんだ。 」


 華南は思わず耳を塞いでしまう。


「 そう、人はだれしも本当の気持ちを隠して生きている。 でもそれじゃ窮屈でしょうがない。

 だからボクはね、ありのままの彼らを作ったわけ。

 やがてこの世界から抜け出して外にいる本物を倒した後で、それぞれが本物に打って変るんだよ。 」



裏の目「 その都度 邪魔する君は倒さなきゃね。 」


 裏の人々は襲いかかる。

 人々は襲ってくる。
 華南は刀なで切るとガラスのように割れる。 
「!?」
 破片は集まって再び人の姿に戻る。
「 無駄だよ、この世界では不死身なんだ。 」

 華南は逃げるが、所々に設置された鏡には自分の姿が写っていない。


 攻撃を避けたり受けたりしながらやって来た鏡の前、そこには自分の姿が写って近づいてみる。


裏の華南「 はあ、なんで私ばかりこんな目に遭わなきゃいけないんだ。
 ま、悲劇の主人公だからしょうがないか。 」
華南「黙れ!! 」
 鏡を思いっきり殴る。


 鏡はヒビが入るとまわりの空間もひび割れ、次第に崩れていくと裏の顔の人々も落下していく。


「 なんてことを! こうなったらここに一生閉じ込められるんだね! 」


 裏の華南は一瞬だけ裏の目に変わると消滅する。

 足場は徐々に崩れていき成す術が無くなると突然 引き込まれる。


 華南は元の場所に戻ると、同時に鏡も砕け散る。
 道路に散らばった破片もすべて消滅する。

「いったい何が?」
 状況がわからず混乱していると持っていた腕時計の時刻は動き出している。
「・・・・・・。」



 建物の近くに腕時計は置かれ、華南は町を去っていく。



[ 報告書 ]
怪異調査協会本部宛て、

__町で起こる不可解な出来事、妖を1体討伐

溝口 華南
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

処理中です...