祓え 溝口華南

斉藤 延廣

文字の大きさ
7 / 27
1章 妖を祓え

6話

しおりを挟む
『 強いのは我 』



 とある町、空は太陽が強く照り付ける。
 歩く人々は手で仰いだり軽装になったり冷たいものを飲む。
 さらには日陰で休んだり自転車を漕ぐ男性はアイスや飲み物を売る。

 ビーチではバカンスをする人々の姿。




 華南もあまりの暑さに服を手に持ってワイシャツ姿。
 市場を歩くと露店でフローズンを注文する。

「そんな格好で大変でしょ、このへんは初めて?」
華南「はい、ずっとこんな感じですか?」
「半年前ではこうじゃなかったんだけど。」


 大きな水鉄砲を持って遊ぶ子ども達。
 再び歩く華南によそ見をしていた水鉄砲を持った男の子がぶつかる。

「ゴメンなさい・・・」
華南「ケガしないように気をつけて遊べ。」

 華南は仕切りの中にいる水やりをする男の子を見る。

華南「ねえ、あの子は誘わなくていいの?」
「別にいいんだよ、こういうことには興味ないんだから。」
「いつも一人であんなことして楽しいのかな?」

 花壇に水をあげる男の子(ソウ)。
 水鉄砲の水が散る。

ソウ「なにするの!?」
「花になんか見とれて、女の子か?」
「悔しかったらやり返してみろ。」

 ソウは蛇口をひねってホースで勢いよく飛ばす。
 子ども達に散るが離れていく。

「ほら、ここまで来たら届かないだろ!」

 ソウは水を止めて断念する。

 子ども達は笑いながら走り、華南を通り過ぎる。
「?」



 町から歩いてすぐに小さな山脈があり、華南は登る。
 てっぺんまで来るとなにかを見つける。
 その姿は水色の衣装とオレンジの衣装を来た宙に浮く少年達。
「!」



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


〔 風来坊、日向坊 〕

風と日の光をそれぞれ操ることができる妖
互いに力を競い合うのが趣味であり直接人が襲われた件はない


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



 華南は構える。
日向坊「ねえ、あの人見えてるんじゃない。」
風来坊「そうだね、ちょうどいいや。」

 華南は刀を抜く。

風来坊「君に問題だ。」
日向坊「オイラ達。 」


「「 どっちが強い? 」」


華南「なに? そんなの知るか!!」
日向坊「残念。」
風来坊「愚か者!!」

 強い風が吹くと華南は飛ばされる。
 態勢を直して向かおうとするが炎の壁が邪魔をして足止めされる。



 山脈を下りて反対側に来る華南。
 そこでは日が照らず、風が吹いている。
 華南は風を遮ろうとする。
「なんだこれ、さっきのところと正反対だ。」


 行き交う人々も厚着をしている。
 華南は歩いていると民家で板を打ちつける男性を見る。
 打つ途中でよろけて板を落としてしまい、華南は支える。

華南「無理しないで。」
「こうでもしないとすき間風が入って眠れないんだ。」
華南「ここに打てばいいの?」
 板と金槌を持って壁のすき間を確認する。



ぎょろり



「わあ!!」

 すき間から誰かが覗くと年老いた女性。
「寒いのは苦手じゃ・・・・・・」


 作業を終えて民家をあとにすると突然 雨が降る。
 行き交う人々も傘をさすが、飛ばされたり捲れたりしそうになる。
「やっぱり、ただの風じゃなさそうだな。」

 人々に紛れて目の前を通り過ぎるレインコートを着た子。
 手には植木鉢。





 山脈の頂上に華南は来る。

風来坊「君に問題だ。」
日向坊「オイラ達。 」


「「 どっちが強い? 」」


華南「そんなもの競ってる場合か! 人が病気やケガをしたらどうする!」
日向坊「残念。」
風来坊「愚か者!!」

 強い風が吹き、華南は飛ばされる。
 再び向かおうとすると炎の壁に遮られる。


 山脈を下りて再び暑い町に向かう。
「やつらの言ってる強さとは気候のことか?
 ほとんど互角くらいだしどうすれば。」

 歩いてる途中で倒れてる人を見かける。
 近くにはリヤカーがあり、厚着をしている。

「大丈夫か!? もしかして隣の町から?」
 華南は服のチャックを外して楽にさせる。



 男性は診療所に運ばれ、ベッドに寝かされる。
華南「熱中症と診断されたわ。」
「すまん、見ず知らずのやつにこんな・・・」
華南「仕事も大事だけど、体調が優れないことにはどうもならないから。
 まあ、ゆっくり治せば。」


 華南は道を歩き、暑そうにしている。
 例の家でソウを見かける。

華南「ねえ君。」
ソウ「?」
華南「向こうの町にもいたよね。」




華南「ソウくん。 君に頼みたいことがある。」




 山脈の頂上に華南は来る。 その後ろにソウ。

日向坊「今回は違う子なんだね。」
風来坊「まあいいや、それじゃあ君に問題だ。」
日向坊「オイラ達 」

「「 どっちが強い? 」」





ソウ「どっちも強いよ。 理由だってある。


 こんな、見たこともない花を咲かせたんだから。」

 植木鉢を持って色鮮やかな花を出す。



 小回想。

華南「向こうの町まで鉢を持って何してたのかな?」
ソウ「実はね、これなんだ。」
華南「珍しい花ね。」
ソウ「そうでしょ。 前までこんな花咲かなかったんだけど。
 暑すぎず、寒すぎずにこことあっちの町みたいな場所に交互に行ってたら成長していったの。」
華南「(前まで、こんな環境じゃなかったら咲かなかったってことか?)」

「ソウくん、君に頼みたいことがある。」
 華南は手を合わせる。
「この通りだ、この極端な気候のせいで苦しんでいる人達がいるんだ。」





 風来坊と日向坊はこらえる。





日向坊「おめでとう!!」
風来坊「しかも、納得できる答えだ。」
日向坊「それじゃあオイラ達はこれで 」

「「 さようなら!! 」」

 二人は消滅する。


華南「ソウくん、ありがとう。」
ソウ「お姉ちゃん。 」



 数日後、両方の町は気温もちょうどいいくらいになり、人々は活気づく。




 小回想。

ソウ「でも、もとの気候に戻ったら、花はこれ以上育たなくなるんだよね?」
華南「まあそれもなくはないかもしれない。」
ソウ「それじゃボクからもお願い。
 この種をあげるから、お姉ちゃんが育ててくれない?」
華南「・・・分かった。」



 華南は道を歩きながら謎の種を持って町を後にする。




[報告書]
怪異調査協会本部宛

_____の町の異なる環境の調査、妖を討伐

溝口 華南

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...