祓え 溝口華南

斉藤 延廣

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2章 祓え 妖とともに

15話

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『 ゴールはどこに 』


 教会、新郎新婦がバージンロードを歩く。

「結婚おめでとう!!」
「見事なゴールインだね。」
「いやいや、これからがスタートだよ。」


 新しい家に来る夫婦。
「そして、新生活も始まるんだ。」





 夜明け前の町、鳥が歩いたりする。


ビュン!!


「!!」
 突然の風圧に驚いて鳥達は飛んでいく。



 華南とメタモは目的の町に行く途中。

メタモ「ねえ華南ちゃ~ん、何も変なことしないからさあ、(拘束具を)一つくらい外してよ。」
華南「駄目だ、お前は危険だからな。」
メタモ「なんだよケチだな。」



 華南とメタモは町をまわる。
 その途中で観光スポットを横切り、メタモはネコやハトと戯れたりする。


 高台。

メタモ「とくに変わったところはないニャ。 (ネコに成りすまして)

 本当にここであってるの? 」(人の姿に戻る)
華南「話を聞く限り変わったものを見たことはないと言っていた。」
メタモ「もうここはハズレってことでいいでしょ?」
華南「まだそう決めつけるわけにはいかない。
 もう少し探す。」
 メタモはイヤイヤながら後を追う。


 女子の二人が歩く。
「ふあ~~・・・・・・」
「すごいあくびだね、ちゃんと眠れてる?
 遅くまで本読んでるんでしょ。」
「いや、なんか寝てるときに窓がガタガタって音がして。」
「建付けが悪いんじゃない?」
「そうかな?」



 次の日、夜明け前にジョギングをする中年の男性。

ビュン!!

「!!」
 突風に煽られて男性は転ぶ。


 日が昇り、華南とメタモは探索する。

 その途中で体の所々に包帯が巻かれて松葉づえをつく男性。
 バランスを崩しそうになり、華南とメタモは支える。

華南「大丈夫ですか? ひどいケガ・・・」
メタモ「確か昨日ジョギングやってた。 なにが?」
「今日も日が明ける前から走ってたら急に強い風が吹いて転んじまったんだ。
 おかしいよな、この近くに特急列車なんか走ってねえのに。 おかげでジョギングなんかできやしない。」


 男性と別れる。

華南「ここの妖は風を操ることができるのだろうか。」
メタモ「でも昨日もいろいろ探したけど、そんな風吹かなかったよ。」
華南「常にその場所にいるわけではないのか。」


 次の日、男性から聞いた場所に明け方二人は来る。
 警戒していると遠くから音が聞こえる。

ビュン!!

 突風が吹き、飛ばされそうになるが二人はポールなど近くにあるものにしがみつく。

華南「さっきのか! しかもほぼ同じ時間だ。」

 頭から降りてきて着地。

メタモ「目で追えるようなスピードでもなかったね。」


 次の日、同じ時間に来る二人。

華南「術なんてできるか! どんな姿してるのかもわからないんだぞ。」
メタモ「じゃあさ、捕まえるくらいならどうかな?」

 遠くから音がする。

華南「やっぱり無茶だ。 避難しろ。」
 強い風が吹き、メタモは液状で弾け飛ぶ。
華南「メタモ!!」
 散らばったものが少しずつ集まり、人の姿に戻る。
メタモ「いててて、すごい勢い。
 F1マシンくらいはあるんじゃないかな。」

 華南は足元に焼けたようなブレーキ痕を見る。
「ねえ、これってさ。」
 メタモに言われて少し離れて見る。


[ No me molestes!! ]
(訳:オレの邪魔をしないでくれ!!)


 黒い痕は文字のようになっていた。 
「もしかして、言葉が通じるのか?」


 次の日、大きなボードを持つ。

[ Estas corriendo?  Para qué? ]
(訳:あんたは走っているのか。 何のために?)

[ Yo no sé. Pero tengo que hacer esto. ]
(訳:分からない。 でも、こうしてなきゃいけないんだ。)


 また次の日。

[ Desde cuándo hiciste eso? ]
(訳:いつからそうしている?)

[ olvidé. ]
(訳:忘れてしまった。)



 華南は町の大きな図書館に来て本を探す。
 見つけたのは町で起きた出来事を書いた歴史書。

「これだ。


 “ 1950年、( この町 )でフルマラソンの世界大会が行われた。
 その時に先頭を独走していたヘロニモ選手は誘導員の誘導ミスにより走行中の路面電車と衝突。 そのまま帰らぬ人となった。 ”

 まさか・・・・・・!」


 外でイスに紐でくくりつけられている犬と遊んでいたメタモ。

メタモ「なにか手がかりは見つかった?」
華南「推測が間違っていなければ、あれはマラソンで事故に遭ったヘロニモ選手だ。
 しかも記録はない、リタイア扱いになっている。」



 華南とメタモは当時行われていたマラソンのコースを町の人々から聞く。
 しかし古い出来事なので確信にはなかなかいたらない。



 地図に印をつける。
華南「なかなか難しいな。なにせ当時とかなり道も変わってしまってるから。」
メタモ「若い人なんてそもそもそんなことがあったのも知らないって。」
華南「でもまあ、これでどうにかできるはず。」



― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


〔 ランニングゴースト 〕
(別名:早足お化け)

 目にも止まらぬ速度で走るため、その姿を捉えた者はいない。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―



 次の日。 強い風を吹かしながらやって来るもの。
 道に立て看板。

[ Corre según las indicaciones. ]
(訳:置かれた指示通りに走れ)


 道には所々矢印のついた看板。




 しばらくすると例の場所で華南とメタモが待ち構える。

ビュン!!

 強い風が吹きながら持っていたゴールテープが破れる。


 二人が見た先には息を切らして立ち止まる男性(ヘロニモ)。

メタモ「完走おめでとう。」
華南「すばらしい走りだった。」
ヘロニモ「・・・思い出した。 オレは大会中に事故に遭ってしまったんだ。

 でももうあれから長い時間は経っているし、今さら記録なんて・・・」
 メタモは黙り混んでしまう。
華南「いや、世界記録だ。」
ヘロニモ「?」
華南「その頃からずっと走り続けたんだ、そこまで持久力の続くランナーなんているわけがない。」

 メタモに耳打ちするとどこかから金メダルが出てきて首にかける。

華南「おめでとう、あなたがチャンピオンだ!」
ヘロニモ「二人とも、ありがとう!」
 光の粒子になって消滅する。





 華南とメタモは町を去る。

華南「すまなかったな、急に無理を言って。」
メタモ「別に。」

 メダルを受けとると液状になってメタモの体に戻る。





 [ 後日談 ]


 ヘロニモ選手の記録は“ 50年と2分43秒 ”

 もちろん非公式だ。

 メタモはそれを競技会に提出しようとしたが止めた。

 立ち会っているのは私達だけだし、なによりそれを信じる者はいないからだ。

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