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2章
19話 約束
しおりを挟むプレイヤー10人以上を返り討ちにした宝玉保持者"madder"
"鮮血の姫王"と称されるプレイヤーを倒す事に対して不可能の2文字しか浮かばない和歌太郎に対して、ヨーキは違った。
「作戦次第では勝てるぜ」
片方の口角を上げ、自信ありげに言い切るヨーキ
「作戦?」
「あぁ、作戦だ。実は前回俺が失敗したのは、"知らなかったからだ"」
「知らなかった?何を知らなかったの?」
「戦いに置いて最も重要なのは情報、そして、その次に数。その二つが俺には無かったんだ。要するに“鮮血の姫王"奴は王だったんだぜ」
「王?一体何のこと?話に含みを入れすぎて理解しづらいよ」
和歌太郎とヨーキ、2人の間にはかなりの温度差があったようだ。
「はぁ…お前案外せっかちだな。簡単に言うとmadderには配下がいると言う事だ」
「えっ!配下!?」
「あぁ、その配下ってのは2名のプレイヤーと村人達だぜ」
「村人達も?プレイヤー2名っての驚きだけど、村人が配下ってどう言う事!」
「プレイヤーはおそらく違うが、村人達はスキルか魔法かは分からないが操られている。実はmadderの正体を俺も知らないんだぜ。」
「あれ?」
ふと疑問が浮かんだ和歌太郎
「思ったんだけど、挑んだ人達はほとんど返り討ちにされているし、ヨーキは会ったこともないのに"鮮血の姫王"とか"madder"って名前は良くわかったね……あっ!」
もしかして、ヨーキが勝手に名付けたのかと思い、言わない方が良かったかなと口を噤む
「あっ!じゃねぇぜ。なに人を痛い奴のように見てんだ!ほんとに!で、何故知っているかはクエストだぜ。」
和歌太郎の頭を軽く小突き、知っているかの理由について明かす。
「クエスト?」
「お前も戦闘になれば出るだろうが、先に内容教えてやるぜ」
そう言って、ヨーキは粘土の板を創造し、そこに文字を書いていく
----------------
【クエスト】
○"鮮血の姫王"madderから宝玉を奪取せよ
成功条件:madderの持つ宝玉を手に入れる。
クエスト期限:残り1週間
----------------
「ちなみに"鮮血の姫王"というのは二つ名といって、特殊なクエスト、又はある条件を満たすと得ることができるらしいぜ。ちなみに二つ名には特殊な効果もあるそうだし、この"madder"ってのは相当な実力者ってことだぜ」
「二つ名持ちはかなり強いってことだね。後、これは?」
和歌太郎はクエスト期限の部分を指差す。これは今までのクエストには無かった表示である。
「これはクエストの有効期限だぜ。切れてもクエストが無くなるだけで宝玉は奪える。だがクエストの発生は極めて稀だし、期限つきは、追加報酬の可能性もあるから俺はこの期間内に奪いたい」
チュートリアルを全て確認し、自らでも情報を集めたヨーキでさえ、クエストの発生の仕組みは不明とのこと。
それ故に自身を強化するチャンスであるクエストは確実に成し遂げたいとのことだった。
「うん、話はなんとなくわかるよ。でも実際問題厳しく無いかな。宝玉を手に入れるには、まずはmadderに操られている村人の対処、そして、その次に2人の配下のプレイヤーを倒し、最後に二つ名を持つ強者のmadder……正直、2人だけでは」
宝玉の奪取について難色を示す和歌太郎
「普通に考えればそうだろうな。だが心配ない。特に村人に対しては秘策があるぜ」
クフフフッと不敵に笑うヨーキ
「え!どんな秘策なの?」
前のめりに耳を向ける和歌太郎。どのような作戦か知りたくて仕方ない様子だ。
「知りたいか?」
「うん、めっちゃ知りたいよ!」
「あっ!」
すると突然思い出したかのようなヨーキ
「そういえば今回の宝玉は俺が貰う予定だけど良かったか?」
それは宝玉が権利。かなり今更の質問であった。
ーーしかし
「うん、いいよ」
和歌太郎は即答で宝玉の権利を手放した。
「えっ!マジかよ」
宝玉の権利について反対されると思ったヨーキは軽い肩透かしを受ける。
「正直今の俺じゃ。宝玉を手に入れても奪われるだけだしね」
「今は……か。って事はお前もゲームクリアの報酬を狙ってるのか?」
ヨーキの目がスッと細まる。
空気が僅かに張り詰める。
「うん、狙ってるよ。俺は、俺に良くしてくれたあの村人達を救う。絶対に」
その言葉には強い意志が感じられた。
「面白いぜ!って事は俺ともいつかは戦うという事か?」
「戦うよ。ヨーキにも譲れない願いがあるように俺にもある。」
「やっぱお前は面白ぇぜ。約束だ。俺とお前でゲームクリアを賭けて決闘だ。だからそれまで俺たちは誰にも負けちゃならねぇ!いいか?」
「あぁ……いいよ。約束だ。」
和歌太郎とヨーキ、両者の間に約束が結ばれた。
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