DEATH GAME ー宝玉争奪戦

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2章

37話 それぞれの本気

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共同クエスト発生から数十秒後、ついに馬根に動きがあった。


「……殺す殺す殺す殺す」

呪文のようにぶつぶつと呟きながら立ち上がる馬根。体中に刻まれた黒の紋様が脈を打つように光る。

更に馬根の腕から黒の瘴気が溢れて出す。
そして、首のみがギギギっと回転し、和歌太郎の方へと向く

「ーーコロ…ス!!」

濃厚な殺意が和歌太郎達を突き刺す。

「和歌太郎、あの黒の瘴気に触れれば身体が破壊されるぜ。慎重に行くぜ」

「うん、ヨーキも気をつけて」

 和歌太郎とヨーキが一言ずつ言葉を交わし、馬根のいる方へと駆けだした。
和歌太郎は右からヨーキは左からそれぞれ向かう。

竹が密集する竹林ゾーンを駆ける2人

「任せたわよ……2人とも」

madderは馬根へと向かう2人の背中に小さく呟いた。
そして、赤のロングコートを脱ぎ腰に巻き、地面の未だ乾かぬ自身の血溜まりに手を当てる。

「発動《鮮血の姫王ブラッディ・ローズ》」

地面に染み込んだはず血が重力に逆らい宙へ浮き上がり、madderを中心に浮いた血が漂う

「私も本気を出す。電脳世界サイバーワールド

宙に浮いた血が数字、英語、記号となり、madderの周囲に展開される。

電脳世界サイバーワールド
madderが自身の称号である鮮血の姫王ブラッディ・ローズを発動中のみ行使できるmadderの奥義
世界の理を読み解き、改編する。
部分的になら未来さえも見通す事が可能な力

だが強力な力には代償が伴う

(やはり長くは使えなさそうね……)

急激に消耗する体力に顔を顰めるmadder
歯を食いしばり耐える。

本作戦の肝はmadderによる馬根の解析。
核の場所の特定である。

そのため全力で馬根の情報を解析していく。

(2人共どうか耐えて……)

madderは前線で馬根と戦う2人に心中で声援を送る。
"電脳世界サイバーワールド"の行使中はその場を動く事ができないのである。

そのためmadderへの注意を外すため、猛攻撃を行う和歌太郎とヨーキ

 和歌太郎は、竹を盾に犬人族の機動力を活かし、四方八方から攻撃、撤退のヒットアンドアウェイで馬根を攻撃する。

 一方、ヨーキも僅かに回復した魔力を使い"魔装"状態になり、粘土創造クレイメイカーを駆使し、絶えず攻撃を行う。

だが和歌太郎もヨーキも共に表情は冴えない

(黒衣を着てた時より動きが速くなっている。しかも、黒の瘴気がさっきより増している。)

馬根の身体能力は黒衣の時に比べ、格段に速くなり、加えて触れると破壊される黒い瘴気も時間と共に増してきていた。

また更に

(ちっ!硬い!!)

 ヨーキの短刀が馬根の背中に当たるが薄皮を削るのみで斬ることができない。痩せ細った肉体にも関わらず、鉄の刃も通さぬ程硬質化してきているのだ。

(これはヤバいぜ……。だが今madderに注意を向けるわけにはいけねぇし、あの紋様が徐々に広がってるのも気になるし…よし)

「和歌太郎、あれをやるぜ!!」

ヒットアンドアウェイを繰り返す和歌太郎に向けて叫ぶ

「了解。喰らえ!これはおまけだ!」

和歌太郎は馬根から離れる際に大量の鉄粉を投げつけた。
馬根が唸りながら手を闇雲に振るい、鉄粉を消滅させていく。

その隙に和歌太郎は、近くの竹に向かい走る。

「いくぜ和歌太郎!!"粘度創造クレイメイカー!!」

ヨーキが瞬時に複数の粘土の塊を創造し、馬根の周囲の竹に向けて飛ばす。飛ばされ竹に付着した粘土は即座に硬化。
馬根を囲む竹に粘土の足場が階段のように出来上がった。

(ナイスタイミング!)

未だ馬根は鉄粉に対処している。
和歌太郎は馬根を横目に粘土の階段を駆け登っていく。
足場が無くなる頃には地面から10メートルの高さに至っていた。

(びびるな!!俺!)

最後の足場を踏見込むとそのまま下へと飛び降りた。
和歌太郎が飛び降りるのと、馬根の状態が回復するのは同時であった。

ーーしかし、真上からの落下は馬根の視界に入っていない

和歌太郎が空中で異次元boxより取り出すは

"巨大な杭"

短めの鉛筆のような形状であり
持ち手は粘土、先端は鉄製で鋭く尖っている。
大きさは和歌太郎の腕より一回りも太い。

その腕より太いその杭を両手で持ち、落下の速度を合わせて馬根の脳天にぶっ刺した。

ーーだが頭まで硬化しているらしく、先端は数十センチ刺さった所で止まる。しかし、和歌太郎の落下による力は加わり続け、持ち手の部分が押し込まれていく。

「貫けぇぇ!"穿孔ポンチ"」

"ダァッーン"

次の瞬間、止まっていた先端がまるでパイルバンカーの如く射出され、馬根の脳天から股下までを貫いた。
だが反動により和歌太郎も吹き飛び、竹に激突する。

バネの力を利用し鉄部品などに凹みをつける工具であるオートポンチを金属加工メタルワークで武器として再現したのだ。
ちなみに取手のコーディングはヨーキに作ってもらったのだ。

 かなり反発力が強いバネを利用しているため、通常利用はできないとお蔵入りになるかと思われていた武器である。
 和歌太郎は落下の衝撃により強力なバネを縮ませ、鋼鉄製の先端の射出に成功したのだ。

 威力は絶大、しかし強力なバネ故に反動も大きく和歌太郎も小さく無い怪我を負った。

馬根の動きが完全に止まった。
白目を剥き、貫かれた穴より大量の血が流れている。

「すごい威力だぜ。例え回復するとしても数時間は稼げるは………」

口を開けたまま固まるヨーキ
一気に顔色が青ざめ、その場に座り込む。

「はははは……これは一体何の冗談だぜ…」

いつもの軽口を叩くが、笑い声は乾き、声は微かに震えている。

"絶望"がそこにはあった。


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