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2章
38話 絶望
しおりを挟む脳天から股下までを鋼鉄の杭によって撃ち抜かれた馬根
和歌太郎とヨーキが与えられる最大の攻撃
2人は倒すまでとはいかないが、行動不能に陥る程度の相当なダメージを与えたと確信していた。
しかし、その希望は一瞬にして打ち砕かれる。
流れた血が黒い瘴気と化し、馬根の身体に集まり纏い付いていく。
身体から放出される黒の瘴気も増し続け、全身が黒の瘴気に包まれ、黒い瘴気の塊となり本体が隠れた。
そして、黒の瘴気が取り除かれた時
そこには"絶望"が立っていた。
光を反射しない漆黒の肌
背には1対のコウモリのような黒い羽
見るものに恐怖を与える真紅の瞳
尖った耳に鋭い歯
ーーその姿は正しく"悪魔"そのものであった。
ヨーキはその姿を見て、思わず尻餅をつく。
身体の防衛機能である。
(身体が恐怖で動かねぇ…まるで金縛りにあったみたいだぜ。しかも魔力も尽きた)
脳裏に"死"の1文字が浮かぶ
一方、和歌太郎も必死で身体を動かそうとするが、今も尚技の反動で動くことができない。
(くっ……このままじゃ)
"どちらかが殺される"
そう思った時、馬根がニヤリと笑った。
身の毛がよだつ寒気が2人を襲う。
「ヒヒヒヒッ!やっと自由になれた。これもあの野郎のせいだ。絶対見つけて殺してやんぜ。」
ずっと呻くことしか出来なかった馬根が言葉を発したのである。
驚愕の表情を浮かべる2人
「それにしてもほんと痛かったわぁ。脳から串刺しにされるとかめっちゃ痛かった。」
頭を片手で押さえながらわざとらしく痛がる馬根
しかし脳天から貫かれた穴は今ではすっかり塞がっている。
(ただ喋ってるだけなのに息が詰まる……)
和歌太郎は馬根が放つ圧倒的な威圧感に言葉すら発することができない。
先程まで馬根は特に意思もなく力を振り回すだけだったため、付け入る隙はあった。
だが変異した今、馬根の力は遥かに強くなり、即死級の一撃もすっかり回復。更に失っていた理性を取り戻している。
"絶対絶命"
「で、俺にこんな痛いことしたのってさ、お前らだよな?」
馬根の視線が2人を射抜く
((……っく……))
まるで心臓を握られるような感覚が2人を襲う。
和歌太郎とヨーキの額には大量の汗の粒が浮き出し、顔色が真っ青になっている。
「ふーん、弱そっ!お前らみてぇな雑魚を殺すのは後回し」
そういうと馬根はヨーキと和歌太郎から視線を外す。
そして、新たに視線を向けたのは和歌太郎達から少し離れた場所
ーーmadderのいる場所であった。
「おぅ~。いるじゃん!しかも見た事ある顔。確か死刑にしろ、死刑にしろってうるさかった奴じゃん。うざい女1人殺したくれぇでみんなウゼェんだよ。ってわけであの女は、死刑決定」
馬根はそう言うと電脳世界を使用中のmadderの元へと駆け出した。
威圧感から解放された和歌太郎とヨーキに再び戦慄が疾る
「逃げて!!」
「逃げろ!!」
madderに向けて全力で叫ぶ和歌太郎とヨーキ
何とか身体を動かし追おうとするが圧倒的に馬根の方が速く追いつかない。
「ヒャハハハハハハハ」
下劣な奇声を発しながらmadderへと突き進む馬根
その手には再び黒の瘴気を纏っている。
だが当のmadderは未だ宙に浮く無数の血のプログラムを全力で改編している。閉じたはずの傷からは再び血が漏れ出し、息も絶え絶え、限界はとうに越えていた。
「何やってるかしらねぇがそのまま死ねや!」
残り数メートルまで迫る馬根
手には全てを破壊する黒の瘴気
だが逃げる素振りを見せないmadder
"ブシュッ"
瘴気を纏った黒い手刀がmadderを貫いた
madderの電脳世界が消失した…
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