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2章
39話 決着
しおりを挟む悪魔と化した馬根の黒い手がmadderの腹部を貫いた。
madderの白シャツが真っ赤に染まる。
後ろから必死で追いかけてきた和歌太郎とヨーキが膝から崩れ落ちる。
「嘘……だよね?」
「くっ!間に合わなかった」
ーーmadderの死
それは馬根を倒す唯一の手段が失われた事を示す。
2人の瞳から光が消える。
「先に謝るぜ。俺がこんな作戦に誘ったばかりに…」
「悲観的になっちゃダメだよ。最後に一泡くらい吹かせようよ」
謝るヨーキに対し、無理やり作った笑顔で返答する和歌太郎。
2人は死を覚悟していた。
だが途中で異変に気づく
madderの腹部は貫かれているが、一切破壊されていない事に
そして、その異変を最も強く感じていたのは、殺したと確信していた馬根であった。
(何故こいつ破裂しねぇ。神族の力は絶対なはず……。後、全身が…)
馬根は理解不能な状況に焦る。
madderを貫いたまま全身が硬直し動けないのである。
更に神族の強力無比な能力が不発。明らかな異変。
「何をしやがったぁぁぁぁぁ!!!!」
馬根が怒鳴り声を上げる。
すると、死んだはずのmadderの口元にスッと笑みが浮かんだ。
「rewriting completed……アンタの情報を改変させてもらったわ。今のアンタは死ねないダダの人間よ」
madderが口元から血を流しながらも嘲笑を浮かべる。
madderは電脳世界により核の特定だけでなく、悪魔と化した馬根自身の情報も書き換えたのだ。
天才という言葉ですら足りないほどの圧倒的な才能。
「こっ、このクソ女離しやがれ!ぶっ殺すぞ!!」
喚き騒ぎ立てる馬根、しかし、顔から下は一切動かない、
見た目こそ凶悪な悪魔状態だが先程までの絶対的な存在感は無い。
「クズ野郎……やっとアンタを力いっぱい殴れるわね……」
madderは自身の"怪力"のスキルを右手に集中させ、思い切り振りかぶる。
「や、や、やめろ!!やめろぉぉ!」
顔が恐怖に染まる馬根
"グゴッ"
骨が砕ける鈍い音が響き
馬根がまるでピンボールの球の如く吹き飛ぶ。
「ふん、ざまぁみなさい。ーーくッ……」
馬根を殴り飛ばしたmadderはその場に倒れ込む。
突き刺された腹部からは血が溢れ出し、失った腕からも血が止めどなく流れている。
目の下にはクマが浮かび、顔色は白くなってきている。
限界を遥かに超えた鮮血の姫王の使用による代償。世界の理を改編する神にも等しい行為の代償はかなり大きかった。
倒れたmadderを心配し、和歌太郎とヨーキは急いで駆け寄ろうとするが
『来ないで!』
「え!?madderの声?」
「あぁ、頭に直接響いているような…」
なんとmadderの声が頭に直接流れたのである。
『私の事は後よ。先にあいつを倒すのよ。今のあいつの身体能力は村人並み。神族のスキルのような力"権能"も私が消去したわ。だから後は核を破壊するだけ……核の場所は"奴の両肩に一つずつよ』
「了解。俺は右肩をいくよ」
「じゃあ、俺は左肩だぜ」
『お願い……あの悪魔を、あの人の仇をとって!!」
脳内に流れる悲痛な願いの声
「「もちろん」」
2人はそう返事するや否や、全力で馬根へと駆けた。
体力や魔力もとっくに無い。
限界はとうに超えている。
しかし、託された想いが2人の足を動かす
前にいる馬根は、顔面を押さえ悶え苦しんでいる。
理性が戻った事により、痛みを感じるようになったのである。madderの全力の一撃は顔面を砕き、脳すらも砕いた。
砕けた痛みと回復していく際の痛みが2重となり馬根を襲う
だが、恐ろしい生への執着心が馬根を立たせた。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…死にたくない、死にたく無い、死にたく無い、死にたく無い」
その執着心が消されたはずの権能を僅かに蘇えらせた。
左右の手に黒の瘴気が発生した。
「死にたくない死にたくない死にたくないーー」
向かってくる和歌太郎とヨーキを拒むように両手を前に出した。
和歌太郎とヨーキはその黒い瘴気を見ながらも一切速度を緩めない。
((これで逃げちゃ男じゃねぇ!))
「「うぉぉぉぉぉぉおおぉおぉおお」」
和歌太郎の剣と
ヨーキの短剣が
""ザシュッ""
馬根の両肩を貫いた。
それぞれの切っ先には、核らしき黒い塊が刺さっている。
「終わりだよ馬根。君の罪は重い、地獄で償え」
「ふっ!お前はおの女に負けたんだぜ……」
馬根の身体が砂のように崩れていく。
「……嫌だ……死にたくない……」
崩れゆく自身の身体を見て、恐怖に怯えた声を出す馬根
『馬根 月。アンタは私と境遇は似ていた。だけど、私はあの人の住む世界に興味を抱いた。一方アンタはあの人の世界に嫉妬した。あの人の光はアンタには強すぎだ。でも、アンタの全てを識った今なら少しは理解できる。だけど私は一生アンタを許す気はないけどね。先に地獄に行きなさい。私もすぐに追いかけてあの人の良さを魂に刻んであげるわ』
馬根を含む3人の脳内に流れたmadderの言葉
ーー言葉を聴いた馬根は静かに消滅した。
「あっ!!madder!」
和歌太郎が残りの力を振り絞り急いでmadderの元へ駆け寄る。
ヨーキもそれに追従する。
そばに来て、madderの手首の脈を測る和歌太郎
「……死んでる…」
madderの脈は止まっていた。
「もっと早く倒していたら、俺がもっと強かったら!」
地面を強く叩き悔しがる和歌太郎
「自分を責めるのはやめるんだぜ和歌太郎。こいつはよくやったぜ。おそらく馬根の一撃の時に死んでもおかしくなかった。だが、こいつは気力だけで生を繋いだ。本当にすごい最後だった……」
「…ゔん、そうだよ……そうだよね!!」
涙を手で拭いながら何度も頷く和歌太郎
その時、madderの身体がうっすらと光り輝いた。
『この声は私が死ぬ直前に残したプログラムよ。私は多分死ぬわ。っていうかこれを聞いているってこと自体が死んだって事なんだけど。でも、不思議と未練はないわ。あの馬根の情報を見たとき、あの人の姿を見る事ができた。あの人は死ぬ瞬間まで私の心配をしてるのよ?ほんとお節介にも程があるわ。……でも嬉しかった。そして気づいたのよ、沢山の犠牲の上にあの人を生き返らせてもあの人は喜ばないって事にね。あーあ、ほんと何も分かってなかったわ。って事であなた達2人は悲しむ事は無いわ。後、私の持ち物は和歌太郎だっけ?あなたの元に行くようにしといたわ。
時間ももう無いわね。最後に警告"このDEATH GAME"のプレイヤーに馬根を遥かに超える悪がいるわ。気をつけてね。』
声が流れ終わると、madderの身体の輝きは強くなり、光の粒となり舞い上がっていった。
ーー茜色の空に
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