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4章
67話 決着
しおりを挟む山岳ゾーンの山頂
山肌は黒く焦げ、大小の岩はマグマの如く溶けている。
その中心で激闘を繰り広げている二人
「燃えろ!」
8つの炎の玉が和歌太郎へと向かう。
和歌太郎は地面を駆けながら、炎を避け、魔刀"霰刀"で切り裂いていく。
(さすがに魔刀といえど炎を斬りすぎたかな…)
超高温の炎を斬りすぎた所為か、刀身に刃こぼれが発生してきていた。
また、直撃はしていないとは言え、炎の余熱により和歌太郎の全身は軽くない火傷を負っている。
「そろそろかな…」
和歌太郎は自身の体力、怪我共に限界が来ていることを感じていた。
故に次が最後の一撃だと
そして、それは山川も同様で膨大であった魔力も底を尽きかけ、攻撃の隙間を突いて襲いくる和歌太郎の斬撃により、ドラゴンメイルの隙間から血が滲んでいる。
「……そうだな終わらそう。」
山川はそう言うと最後の魔力を絞り出す。
紅蓮の魔力は山川の頭上に集まり、大炎となり、龍を形どった。
「発動"物質の支配者。スケッチ、スイープ、バネ生成!スケッチ-押し出し。"組立"」
和歌太郎の足元にバネのついた即席の発射台のようなものが出現した。和歌太郎は腰を深く落とし、刀を居合の如く構える。
和歌太郎の攻撃方法は至って単純。バネの反発を利用し最高速で斬るというもの。
和歌太郎は全神経を研ぎ澄まし、細胞単位まで意識を集中させる。
残り全ての体力を一撃に賭けるために
「では……最後だ…」
山川の炎の龍が唸りを上げる。
「仇は必ず取る!」
「「………」」
一瞬訪れる静寂
2人の殺気が衝突する。
そして、ついに両者が動いた!!
「炎龍王!!」
灼熱の炎の龍が口から炎を吐き出しながら和歌太郎へと迫る。
和歌太郎もほぼ同時にバネの発射台から飛び出した。
炎の龍と和歌太郎が交錯する。
………
………
……
「「ブフッ」」
和歌太郎と山川がほぼ同時に片膝を地面につき、血を吐き出した。
「……はぁ…はぁ…はあ…」
和歌太郎の刀を握っていた右腕は付け根の部分から炭化していた。
加えて、上半身の服は全て焼き焦げ、重度を火傷を負っている。
「……よく…耐えたな」
息絶え絶えの声を出す山川。
胸には折れた刀身が刺さっている。
和歌太郎の攻撃は炎の龍を突き破り山川へ届いたのだ。
「最後にいいかな。何故お前はあの村の人達を殺したんだ…?」
和歌太郎が恐らく死に至るであろう山川へと問いかける。
"闘うことで分かることもある"
それは和歌太郎の師である里石の言葉
命を賭け、全てをぶつけ合う闘いは、お互いの意思を時に言葉よりも如実に語る。
そして、闘った結果
和歌太郎は山川が村人を殺した理由が分からなかった。
「ふっ……殺した理由か。それは奴らがクズで最低な奴らだったからだ。」
山川が胸から血を流しながらも口を開いた。
「あの人達がクズ?あんな優しい人達がクズだと言うのか!」
「あぁ、そうだ。」
怒る和歌太郎に対し食い気味で返答する山川
山川の瞳が和歌太郎を真っ直ぐ射抜く。
「何故あの村に若い人が少ないと思う?何故あの村の人々は俺たちプレイヤーを勇者と崇める?お前は何も疑問に思わなかったのか?」
山川の言葉には苛立ちが篭っていた。
「そ、それは。近くのダンジョンの魔物が襲って来て…、後、勇者と呼ぶのは村の伝説で」
「ダンジョンと村の距離はそこまで近くはないのは知っているだろう。……あの村は生贄をダンジョンへ捧げていた。」
「そんな、そんなのデマカセだよ!」
信じられないと和歌太郎は声を荒げる。
だが山川はさらに言葉を紡ぐ
「お前、村に行ったのならば。あの好待遇を受けたのだろう。そして、村長の家に行ったのだろう?」
「あぁ、言ったよ!それがどう関係ー」
和歌太郎の言葉を遮り山川が話す。
「……関係あるんだ。村長宅は変わった香りがしなかったか?…マワリの花。確かに良い香りだが、その花が良く使われるのは匂い隠し。」
「匂い隠し?」
和歌太郎には身に覚えがあった。
あの時は村長の奥さんが好きだった香りということで一切気に留めなかったが。
おかげで嗅覚の一切が利かなかった。
「村長宅の地下には生贄用の奴隷……人が飼われていたんだよ。」
「なっ……」
和歌太郎は驚きのあまり言葉が出ない。
「俺が何故知っているかというとダンジョンで生贄の少女を助けたからだ。その少女から村の実情を全て聞いた。それはあまりに酷な内容だった。それを10もいかない少女が淡々と話す。守られるべき小さな命を差し出して、自分達は安全な所で甘い蜜を吸う。俺が最も嫌いな人種だ。だから俺が殺した……それが全てだ」
「………」
言葉を失う和歌太郎。
「まぁ…殺しは殺しだ。言い訳するつもりはないがな。だが俺は後悔はしていない。」
「…な……んて事を…俺は」
和歌太郎はその場で崩れ落ちる。
自分が正義だと思い込んでいた物が虚構であった。
物事の表面しか見ておらず本質を見れていなかった。
「…………ん…?」
山川がギロリと鋭い視線を和歌太郎の方へと向ける。
その鋭い視線に和歌太郎は一瞬反応を示すが、すぐ様自分ではなく、自分の後ろだという事に気づく。
和歌太郎は強烈なショックにより気付かなかったのだ。
ーー背後十数メートルまで来ていた6人に
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