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スヤスヤァ
「シュルク。そろそろ起きないと帰れなくなるよ。」
ん?
タール様の声が聞こえた?
気のせい気のせい…
まだ夢の中なんだ~
もうちょっと寝よ…
「もう1回寝ようとしないの。帰るよ。」
聞き間違いじゃなかった…
「タ…タール様…」
「授業サボってまでお昼寝した感想は?」
「とっても気持ちよかった!!」
「…帰るよ。今日1日分の教育を僕が直々にするから。」
おぅふ
それは勘弁
「帰ります…」
「それでいい。早くしてよ?馬車待たせてるんだから。」
「…早くしてと言われても…階段降りるのに時間が…!?」
私はあることを思いついた。
そして手すりに腰掛けた。
「せ~の~」
「…シュルク!?」
で!!
私は勢いつけて手すりを滑り降りた。
ふふん
この方が早いもんね~
「きゃははは!!早い早い~」
「シュルク!!危ないことはやめなさいって!!」
「タール様が早くって言ったんだもん!!」
私は数分後地上にたどり着いた。
「着いた~」
「ぜぇ…はぁ…」
「タール様?息が上がってるよ?」
「シュルク…が…無茶…するから…」
「無茶?…まぁ何回か落ちそうになったけど…」
「!?シュルク!!2度とこの最上階には登っちゃいけないよ!!」
「ど…どうして~?」
私は目をうるうるさせた。
「う…シュルクが怪我してからじゃ遅いでしょ?」
「怪我しないよ?シュルク…運動神経いいもん。」
「だとしても。」
「だったらタール様が私が無茶しないようにここにエレベーター付けて?」
「…それだとあそこに逃げ込むでしょ?」
「お願い~…」
私は小首を傾げうるうるさせた目でタール様にお願いした。
ふふふ
7歳の子のオネダリはきくでしょ?
「…分かった。父上に言っておくから。」
「やったぁ!!タール様!!早く帰ろ!!」
「…はぁ。心だけが3歳のままか…」
悪うござんしたね!!
3歳の方がやりやすいのよ!!
「…タール様あんまり酷い事言うとシュルクタール様のこと嫌いになるからね。」
「別に構わないよ。どこに逃げようとシュルクは僕のものだ。誰にも渡しはしないよ。」
おお
怖ぇ…
独占ですか?
監禁するおつもりで?
「か…か…帰ろ!!」
私は怖くなって走り出した。
この日以来私が密室にタール様と2人きりになるのが怖くなったのは言うまでもない。
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