不幸は幸福の始まり【完結】

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 さて、当日が来た訳では有るが、レイラ嬢には私の瞳と同じドレスを贈ってしまうと計画が台無しになるから、淡い桃色のドレスを贈っては居る。

 兄の婚約者を探す目的とナタリー様の婚約者を探す目的が記された招待状は、我が国における爵位を持つ者へは「アレクサンダー第二王子様の婚約者となられる可能性の有る女性のお披露目が決まった」と言う事だけが伝えられた。

 騎士服の正装を身に纏い、レイラ嬢が住まいとした私の屋敷へと迎えに行く事にしようか。

 勿論、偽の婚約者を演じる…と言う了解は頂いて居るが、あの第二王子(あほう)を見て怖がらねば良いが…。

 単騎で向かった屋敷前にはローガン殿が娘を心配して見送って居る様子が伺えた。

「レイラ…お前の決断は認めたいが…何も阿呆が来るで有ろう舞踏会へ行くなど…」

「大丈夫ですわ、お父様。アレクサンダー様が偽とは言えわたくしの婚約者となって下さいますのよ?第二王子様でらしても、ジョン王子様と比べるには失礼な程、優しいお方ですわ」

 うん…比べないでくれるかな?ジョン(あほう)は…いずれ残念劇の主人公となるのだからね?レイラ嬢は私の婚約者だと知る頃には、男爵令嬢(阿婆擦れ)としか婚姻を結べない状態になるのだから。

 と内心では思うが、言葉には出さない。

「レイラ嬢、ローガン殿」

 声を掛けるとレイラ嬢は、ふわり…と笑顔を浮かべ、俺はドキリとしてしまった。

「アレクサンダー様・・・屋敷まで迎えに来て下さるなど、普通は有り得ぬのですが?」

 ローガン殿の言い分は判るけど、阿呆が居る王城へレイラ嬢だけで向かわせる事は憚(はばか)れたからな。

「まあ、私が普通ではないから。隣国ヴァリューで騎士姿となって居たのを覚えておりますか?」

「そう言えば…わたくしを屋敷へと保護、下さいましたおりにヴァリュー騎士団の衣装を纏っておられましたわよね?本日の衣装は…ヴィクトリア騎士団の正装…でしょうか」

「ええ。私はレイラ嬢を保護した時、ヴァリューから聞こえて来た噂の真相を探るべく、潜入調査をして居たのです」

「まあ」

「内情を調べるには騎士団は隠れ蓑にするには十分で御座いました。レイラ嬢に巡り合えましたので、感謝しか有りません。しかしレイラ嬢、本当に大丈夫ですか?これより阿呆と阿婆擦れに逢う事になってしまうのですが…」

「大丈夫ですわ。わたくしには新たな婚約者が居るなど、彼らの耳には届いておりませんでしょう?それに、此度の舞踏会は国家的残念劇を引き起こす序章と伺っております。ですので完結を楽しみに待たせて頂く形だと割り切る事が出来ましてよ?」

 流石に聡明で有ったな。レイラ嬢…いやレイラと呼ぶべきだろうか。

「では…レイラと呼び捨てにしても?」

「ア、アレクサンダー様っ・・・」

「アレク…私をアレクと呼び慣れるようになって下さいね」

 これから始まる国家的残念劇が、こうして幕を開ける事となったのだが、あの阿呆と阿婆擦れは、まんまと計画に嵌り、奈落の底へと落ちて行くなどと、考えも及ばない辺りは頭の中が「花畑」だったとしか言いようが無いだろう
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