不幸は幸福の始まり【完結】

文字の大きさ
34 / 45

30.ジョンside

しおりを挟む
 (時は少し戻り、ジョンがレイラたちを襲撃する前の話)


 * * * * * * * *

 サバンナ邸で暮らし始めて1週間も立たないうちに金子が底をついてしまった。

 ひとえに私が王子としての衣食住を求めたからだと理解できて居なかった。

 そんな私をサバンナも見捨て何処かへと消えた事に気付いたのは目覚めた時だった。

「サバンナ…?」

 隣で眠って居る筈のサバンナが全ての持ち物と一緒に消えて居た。

 テーラー邸の家令に

「サバンナを見なかったか?」

 と尋ねたが

「お嬢様は屋敷から出て行かれました。ジョン様とは離縁すると申しておりました」

 な…ん…だと?!サバンナが離縁したがって居る?そんな馬鹿な。

「認めんぞ…離縁など認めぬ!今すぐサバンナを連れ戻せ!」

「・・・無理で御座います。お嬢様はフェリシア王国へと向かわれました」

「な、に…フェリシアだと?」

「はい。詳しく教えては下さいませんでしたが何でも伝手つてが有るそうでして、頼られると申されておりました」

「くそっ!」

 こうなったらテーラー邸に有る家財道具を売り払ってでも贅沢してヤル!


 * * * * * * * *

 売る品も無くなった…サバンナも姿を消した…全て…全て失った原因はレイラ。

 アイツを殺さなくては気が済まない!

 確か今日がアレクサンダー王子と結婚する日だったよな?

 警備は第一王子より厳しくないだろう。

 ならば隙は生まれる…か。

 剣を携えヴァリューからヴィクトリアへ抜け道から向かい、恐らく第一王子と同じ場所での式となる筈。

 結婚してしまえば表舞台には出て来ないだろうからチャンスは1回。

 何が何でもレイラに一太刀、浴びせねば気が済まない。

 王城まで何とか辿り着けたが…見つけた。

 警備の薄い場所は前回の訪問で把握できたからな。

 音を立てずに忍び込まなければ・・・。

 歪んだ憎しみが己の破滅へと向かわせる等、その時の私は考えられなかった。


 * * * * * * * *

「レイラァっ!!死ねぇー!」

 抜き身にした剣を振りかざして、一直線にレイラへと走り寄った。

「・・・っ?!」「くっ…レイラこちらへ!」

 アレクサンダー王子め…邪魔しおって!

「敵襲か?!皆の者、アレクとレイラ、ローガン殿を襲撃者から守るのだ!」

「「「「「はっ!」」」」」

 レイラ目掛けて行こうと試みるのだが、近づけないのはアレクサンダーの所為せいか!?

「・・・隣国の…元王子。レイラを殺(あや)めて如何(いか)に致すのだ?!」

「もう終わりだ…。金子も尽きた…サバンナも私を捨て何処かへ消えた…。私は生活する事すら難しくなったのだ。これをレイラの所為にしなくて誰の所為にしろと言うのだ!?」

「「「・・・お前だろ」」」

 何故、私なのだ?

「ジョン男爵、そなたが王子だった頃の感覚で金銭を使いまくれば『どうなるか』くらい学習できなかったのか?」

 そうだった。兄上は招待を受けて訪問なされて居た。

 兄上ならば理解して下さる筈!

「兄上っ?!兄上ならば私の有用性を理解して下さるでしょう!?私の身分を戻して下さるよう母上に進言して下さい!」

「無理だ」

「何故に御座いますかっ!!」

「お前に有用性など皆無だからだ」

「この私はなのですよ?!優秀なを男爵へなど許される筈が…「ある」ええっ!?」

「1つ学習能力が皆無で有る、1つ一度学んだ事柄を忘れてしまう、1つ身分を剥奪されたら戻す事は不可能だと理解して居ない・・・これらの観点から、お前は有用な人材では無いと判る」

 何故…何故、理解して下さらないのだ?兄上!!

 声に出せない叫びは届く事なく、私は衛兵に両脇を抱えられ、ヴィクトリアの牢屋へと幽閉されてしまった
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる

夏菜しの
恋愛
 十七歳の時、生涯初めての恋をした。  燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。  しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。  あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。  気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。  コンコン。  今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。  さてと、どうしようかしら? ※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。

【完結】旦那様、離縁後は侍女として雇って下さい!

ひかり芽衣
恋愛
男爵令嬢のマリーは、バツイチで気難しいと有名のタングール伯爵と結婚させられた。 数年後、マリーは結婚生活に不満を募らせていた。 子供達と離れたくないために我慢して結婚生活を続けていたマリーは、更に、男児が誕生せずに義母に嫌味を言われる日々。 そんなある日、ある出来事がきっかけでマリーは離縁することとなる。 離婚を迫られるマリーは、子供達と離れたくないと侍女として雇って貰うことを伯爵に頼むのだった…… 侍女として働く中で見えてくる伯爵の本来の姿。そしてマリーの心は変化していく…… そんな矢先、伯爵の新たな婚約者が屋敷へやって来た。 そして、伯爵はマリーへ意外な提案をして……!? ※毎日投稿&完結を目指します ※毎朝6時投稿 ※2023.6.22完結

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」 「……あぁ、君がアグリア、か」 「それで……、離縁はいつになさいます?」  領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。  両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。  帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。  形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。 ★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます! ※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。

処理中です...