不幸は幸福の始まり【完結】

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 ジョン元王子…いや、もう面倒だから阿呆で良いかな。

 阿呆から襲撃され負傷してしまった俺は、直ぐに治療魔法を持つ母上に処置をして頂き傷は残ったものの、大事には至らなかった。

 だが、騎士服は鮮血に染まって式に着用するのは難しい状態となって居た。

「折角の軍服が血に染まっただけでなく、切り裂かれてしまっては手の施しようが無いね」

「兄上…(くそっ。もう少し早く気付いて居れば…)」

「ジョージ様、アレク様の騎士服をお貸し頂けますか?」

「レイラ嬢?」

 レイラ、君は何をするつもりなんだい?

「アレク様の騎士服を簡単では有りますが、修繕させて頂けたらと存じます」

「しかしレイラ嬢、ここまで切り裂かれて居て修復は難しいかと…」

「勿論、完全なる修復は難しいですわ。アレク様の花を刺繍しておりましたので少しばかり手を加えれば装飾と見えませんでしょうか?

 私の印で有る花を刺繍して居たのは知って居るが、それを装飾とするなど気が付かなかったな。

「流石だねレイラ」

「アレク、あの阿呆(ジョン)を処刑する方向で進めて良いね?」

「王族への反逆だけでは無いでしょう?王族を殺そうとして襲った訳ですから極刑以外ないかと」

「男爵令嬢にまで逃げられて自暴自棄になったとしか言えないんだろうが、許せる事態ではないからね。アレクの結婚式を終えた1週間後に実行するよう父上にも伝えておくよ」

「お願いします兄上」

 まあ俺がコレ(怪我)の状態では直ぐに再開は難しいからなぁ…。

「そうだ、レイラ嬢に血液が付着したまま、アレクの騎士服を渡したくないから…クリーン(清潔)…」

 こう言う時、本当に魔法は便利だな、と思う。

「ジョージ様・・・お気遣い感謝いたします」

 白の騎士服に残って居るのは、俺が阿呆に切り付けられた刃(やいば)の跡だけ。

 俺の為に刺繍された印の花が飾りとして刃の部分に付けられるのだろうな。

「この部屋には針などは御座いませぬでしょうか…」

「治療する場所には無いが俺の部屋なら置いて有る」

「アレク様の…お部屋に?」

「騎士だからね。ボタンなどの装飾品が取れてしまう事も有るから、下手では有るが縫物が出来るように用意して有るんだよ」

 少し照れ臭いけれど、正直に教えておかないとね。

「じゃあ私は父上に報告しておくから、傷を治す事を優先するんだぞ?」

「判っておりますよ兄上」

 治療魔法を施されたと言っても止血する程度。

 完治して居る訳では無いからの苦言。

「アレク様…」

 申し訳なさそうな顔をしないで欲しいな。

「そんな顔をしないで?阿呆に気づくのが遅れた故の怪我だから君が気に病む事は無いんだから…ね?」

「ア…レクッ…」

「泣かないでくれ…君が俺の騎士服に刺繍布を縫い付けてくれなければ着用できないんだから…ね?」

 泣き笑いの顔ですら可愛いとか…どれだけ彼女に惚れてしまってんだ俺は。

 ぐっ・・・と涙をこらえたレイラは

「アレク様の私室で裁縫道具をお借りしても宜しいでしょうか?」

 と縫い付けてくれる事に意識を向けてくれたので、俺は喜んで私室へと案内し無事に装飾品として縫い付けられ、結婚式の仕切り直しは明後日と決まった
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