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第?章 神界最強の刃 その二
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ガガの腕がレーザーブレードで切り落とされて、草原に落下する。その音を聞いて、老いた輝久は感動で打ち震えていた。
(神剣ラグナロクは消えてはいない! あれこそ、神界最強の刃が、戴天王界の覇王達を倒す為に特化した姿! 神と人が合わさった究極の――!)
不死公ガガを凌駕する反応速度と攻撃力。黒流魔弾を未然に防ぎ、攻撃に転じる『グレイテストライト・オールレンジ』。炎魔の心核を封殺する『パノラマジック・メタルフィールド』。かつて、仲間達と語り合った覇王を倒す為の攻略が洗練、或いは昇華され、ラグナロク・ジ・エンドの技となって、ガガを迎え撃った。
(押している! 覇王を!)
それでも、いや、それだからこそ、老いた輝久は歯噛みする。
「敵がガガでさえ、なければ……!」
不死公ガガの本体は別次元にある。体を完全に破壊したところで、別の体が転送されてしまう。事実、光の神撃マキシマム・ライトが破られた後、ティアは、ガガを倒すのは理論上不可能だと言い切った。
しかし――。
『時空壁破壊の遠隔強襲撃……』
ジエンドの胸から、ティアの冷徹な声が響く。レーザーブレードを後方に引き、居合い斬りの体勢をとるや、ジエンドと合体している若い輝久が叫ぶ。
「マキシマムライト・ブレイクディメンション!」
ジエンドが、レーザーブレードで『∞』の軌道を空中に描いた、その時だった。
【ほほほほほ! 何をしようが、届くものか!】
突如、老いた輝久の耳に、ガガの心の声が聞こえた。
半霊半物質の思念体である輝久は、ガガの声の元を辿るように意識を集中させる。すると次の瞬間、老いた輝久の思念体は、アルヴァーナと異なる空間に存在していた。
それは、六畳程の薄暗く狭い部屋。僅かな明かりがデスクに置かれたモニターから漏れており、チェアには誰かが腰掛けている。
老いた輝久は一瞬、そこが地球かと勘違いした程だった。だが、よくよく見れば、デスクもチェアも骨のような物質で出来ており、モニターに繋がれている太いケーブルは、ミミズのようにモゾモゾと動いている。『進化した魔導具』とでも呼べば良いのだろうか。輝久はそんな風に思った。
モニターの前に座っているのは、かぎ鼻の醜い老婆だった。デスクには小さな髑髏が置かれており、それに手を当て、マウスのように動かして操作している。
老婆が眺めるモニターにアップで映し出されているのは、ラグナロク・ジ・エンドであった。背後にはアルヴァーナの光景が広がってる。
思念体である自分が傍にいることに気付かず、老婆は「ほほほ」と、しわがれた声で笑っていた。姿形は違えど、聞き慣れた、あの独特な笑い声で。
(これが、不死公ガガの本体!)
老いた輝久は理解する。ガガは、こうやって安全な場所から、まるでゲームを楽しむように自分と仲間達を殺してきたのだ。
モニターの前で、勝ち誇った笑いを続けるガガ。だが、その背後の空間に突如、輝く『∞』の文字が出現する。
ガガは、何かが背後で光っていることに気付くと、モニターから目を離し、訝しげに振り返って光源を眺めた。途端、メビウスの輪から、光る両腕が現れ、無限の文字を引き裂く。そして、そこから光り輝くジエンドが姿を現した。
ガガは絶叫しながら、チェアから立ち上がり、後ずさりした。
「こ、こ、この次元界に侵入されるなんて!!」
分身した光のジエンドは輝く剣を携えたまま、ガガに迫る。
「来るな! 来るなあああああああああ!」
老婆は部屋の隅まで移動して、ガタガタと震えていた。絶叫し、わめきちらし、手元にあった物をなり振り構わず投げつける。しかし、投げた物は全て、分身のジエンドの体をすり抜けた。
ジエンドは、ガガの目前で光り輝く剣を大上段に構えると、何の躊躇もなく振り下ろした。熱線が物体を焼き切る音と共に、ガガの顔に一筋の赤い線が刻まれる。
「ありえない……ありえない……ありえ……ない……」
そう呟いた直後、ガガの体が正中線に沿って分離した。二つに分かたれたガガの体が、音を立てて、床に落下する。
ガガの意識が潰えると同時に、老いた輝久の思念体はアルヴァーナへと戻った。草むらから様子を窺うと、ジエンドは既に変身を解除しており、若い輝久とマキに戻っていた。その近くには、灰がうずたかく積まれている。もはや、再生も復活もできない不死公ガガの灰が。
老いた輝久の脳裏を、覇王に玩具のように虐げられ、殺されてきた過去が一気に駆け巡った。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
人目も憚らず絶叫して、嗚咽する。
(六万回以上繰り返す世界で、一度たりとも倒せなかった覇王を倒した! 時空の壁を乗り越え、ガガ本体を斬った! 殺され続けたティアと、仲間達の仇を遂に討ったのだ!)
老いた輝久の目から、涙が止まることはなかった。やがて、若い輝久がこちらを見て、話し掛けてきた。
老いた輝久は、ようやく我に返る。
(見えるのか! この姿が!)
ギクリとした。確証はないが、自分が若い輝久に同一人物だと認識されれば、パラドックスが起こるのではないだろうか。もし仮に、触れられでもしたら――。
若い輝久とマキが喋っている間に、老いた輝久は慌てて意識を集中させて、一瞬でアルヴァーナ上空へと移動したのだった。
(神剣ラグナロクは消えてはいない! あれこそ、神界最強の刃が、戴天王界の覇王達を倒す為に特化した姿! 神と人が合わさった究極の――!)
不死公ガガを凌駕する反応速度と攻撃力。黒流魔弾を未然に防ぎ、攻撃に転じる『グレイテストライト・オールレンジ』。炎魔の心核を封殺する『パノラマジック・メタルフィールド』。かつて、仲間達と語り合った覇王を倒す為の攻略が洗練、或いは昇華され、ラグナロク・ジ・エンドの技となって、ガガを迎え撃った。
(押している! 覇王を!)
それでも、いや、それだからこそ、老いた輝久は歯噛みする。
「敵がガガでさえ、なければ……!」
不死公ガガの本体は別次元にある。体を完全に破壊したところで、別の体が転送されてしまう。事実、光の神撃マキシマム・ライトが破られた後、ティアは、ガガを倒すのは理論上不可能だと言い切った。
しかし――。
『時空壁破壊の遠隔強襲撃……』
ジエンドの胸から、ティアの冷徹な声が響く。レーザーブレードを後方に引き、居合い斬りの体勢をとるや、ジエンドと合体している若い輝久が叫ぶ。
「マキシマムライト・ブレイクディメンション!」
ジエンドが、レーザーブレードで『∞』の軌道を空中に描いた、その時だった。
【ほほほほほ! 何をしようが、届くものか!】
突如、老いた輝久の耳に、ガガの心の声が聞こえた。
半霊半物質の思念体である輝久は、ガガの声の元を辿るように意識を集中させる。すると次の瞬間、老いた輝久の思念体は、アルヴァーナと異なる空間に存在していた。
それは、六畳程の薄暗く狭い部屋。僅かな明かりがデスクに置かれたモニターから漏れており、チェアには誰かが腰掛けている。
老いた輝久は一瞬、そこが地球かと勘違いした程だった。だが、よくよく見れば、デスクもチェアも骨のような物質で出来ており、モニターに繋がれている太いケーブルは、ミミズのようにモゾモゾと動いている。『進化した魔導具』とでも呼べば良いのだろうか。輝久はそんな風に思った。
モニターの前に座っているのは、かぎ鼻の醜い老婆だった。デスクには小さな髑髏が置かれており、それに手を当て、マウスのように動かして操作している。
老婆が眺めるモニターにアップで映し出されているのは、ラグナロク・ジ・エンドであった。背後にはアルヴァーナの光景が広がってる。
思念体である自分が傍にいることに気付かず、老婆は「ほほほ」と、しわがれた声で笑っていた。姿形は違えど、聞き慣れた、あの独特な笑い声で。
(これが、不死公ガガの本体!)
老いた輝久は理解する。ガガは、こうやって安全な場所から、まるでゲームを楽しむように自分と仲間達を殺してきたのだ。
モニターの前で、勝ち誇った笑いを続けるガガ。だが、その背後の空間に突如、輝く『∞』の文字が出現する。
ガガは、何かが背後で光っていることに気付くと、モニターから目を離し、訝しげに振り返って光源を眺めた。途端、メビウスの輪から、光る両腕が現れ、無限の文字を引き裂く。そして、そこから光り輝くジエンドが姿を現した。
ガガは絶叫しながら、チェアから立ち上がり、後ずさりした。
「こ、こ、この次元界に侵入されるなんて!!」
分身した光のジエンドは輝く剣を携えたまま、ガガに迫る。
「来るな! 来るなあああああああああ!」
老婆は部屋の隅まで移動して、ガタガタと震えていた。絶叫し、わめきちらし、手元にあった物をなり振り構わず投げつける。しかし、投げた物は全て、分身のジエンドの体をすり抜けた。
ジエンドは、ガガの目前で光り輝く剣を大上段に構えると、何の躊躇もなく振り下ろした。熱線が物体を焼き切る音と共に、ガガの顔に一筋の赤い線が刻まれる。
「ありえない……ありえない……ありえ……ない……」
そう呟いた直後、ガガの体が正中線に沿って分離した。二つに分かたれたガガの体が、音を立てて、床に落下する。
ガガの意識が潰えると同時に、老いた輝久の思念体はアルヴァーナへと戻った。草むらから様子を窺うと、ジエンドは既に変身を解除しており、若い輝久とマキに戻っていた。その近くには、灰がうずたかく積まれている。もはや、再生も復活もできない不死公ガガの灰が。
老いた輝久の脳裏を、覇王に玩具のように虐げられ、殺されてきた過去が一気に駆け巡った。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!!」
人目も憚らず絶叫して、嗚咽する。
(六万回以上繰り返す世界で、一度たりとも倒せなかった覇王を倒した! 時空の壁を乗り越え、ガガ本体を斬った! 殺され続けたティアと、仲間達の仇を遂に討ったのだ!)
老いた輝久の目から、涙が止まることはなかった。やがて、若い輝久がこちらを見て、話し掛けてきた。
老いた輝久は、ようやく我に返る。
(見えるのか! この姿が!)
ギクリとした。確証はないが、自分が若い輝久に同一人物だと認識されれば、パラドックスが起こるのではないだろうか。もし仮に、触れられでもしたら――。
若い輝久とマキが喋っている間に、老いた輝久は慌てて意識を集中させて、一瞬でアルヴァーナ上空へと移動したのだった。
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