17 / 24
秘め事の結末
1
しおりを挟む晩春の柔らかな陽射しが校舎の窓から差し込み、廊下を温かく照らしていた。
あまねは職員室を出て、ゆっくりと歩を進める。
新学期が始まってしばらく経ち、校内には日常のリズムが定着し、空気も落ち着いていた。
──あの日から、すでに数ヶ月が経った。
清澄と再会し、流されるままに体を重ねた日。
「愛してる」と囁かれ、彼の気の済むまで抱き潰され、理性を失い、背徳と情欲に溺れた、苦くも甘い記憶が、今も鮮やかに胸に残っている。
かつて焦がれた初恋の人と密かに逢瀬を重ねる日々は、確かに幸福だった。けれど、教師と保護者という立場上、やはり倫理的に褒められる関係ではない。
そしてあの日以来、清澄から正式に「付き合おう」という言葉は一度もない。
名前のない関係であることに変わりはない。それでも会うたびに胸が高鳴り、体が自然に反応してしまう自分を、あまねは否定できなかった。
(こんな関係、続けてていいのかな……)
逃げ道を残した都合のいい今の関係に身を置いている自分と、会うたびに強くなる清澄への想い。
その間で、あまねの胸はずっとざわついていた。それでも、日常の中で清澄と会える時間を、心のどこかで楽しみにしている。
歩きながら、あまねは自分の感情と立場の制約の間で揺れる心を、どう整理すべきか頭の中で反芻していた。
頭の中をぐるぐると渦巻かせながら、あまねは今年度から担任を務めることになった新二年生の教室へと歩を進めた。
春も終わりが見え、学期も数ヶ月が経った頃。生徒たちの間には少しずつ日常が流れ、教室も自然な空気に包まれている。
「おはようございます」
あまねが声をかけると、生徒たちがそろって返事をする。
「おはようございまーす」
小さなざわめきや笑い声も混じり、教室は活気に満ちていた。あまねは軽く微笑み返し、教卓に立つ。窓から差し込む柔らかな陽射しを浴びながら、深呼吸を一つ。
HRが始まると、あまねは落ち着いた声で生徒たちに向き直った。
「いくつかお知らせがあります。まず、中間テストの時間割が出ました。廊下の掲示板に貼ってありますので、確認してくださいね」
「やば~」「もうそんな時期かよ」と、ちらほらと小さくため息やぼやきが漏れる。
「それから進路希望調査票ですが……まだ提出していない人は必ず今週中に提出してください。締切を過ぎると進路指導部に呼ばれるので、注意してください」
慌ててメモをとる数人の姿に、あまねは思わず小さく笑みを漏らした。
「報告は以上です。みなさん、今日も一日頑張りましょうね」
10
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛
ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎
潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。
大学卒業後、海外に留学した。
過去の恋愛にトラウマを抱えていた。
そんな時、気になる女性社員と巡り会う。
八神あやか
村藤コーポレーション社員の四十歳。
過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。
恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。
そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に......
八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる