溶ける背徳、秘め事の灯

春夏冬

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秘め事の結末

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HRが終わり生徒たちが一斉に立ち上がると、教室には椅子の軋む音や笑い声が混じり、日常のざわめきが戻ってきた。

教室を去ろうとしたそのとき、数人の女生徒が弾む足取りであまねのそばへ寄ってくる。

「あーまねちゃん」

気安い呼びかけに顔を向けると、にこにことした視線が注がれた。

「どうしたの?」

教師として柔らかく返すが、少女たちの瞳は妙に好奇心にきらめいている。

「んーっとお、私たち、あまねちゃんに前から聞きたいことがあってえ~」

わざと含みを持たせるような声色。周囲の友人たちも期待を込めてこちらを覗き込む。胸の奥に小さな不安が灯った。

「最近なんかさあ、あまねちゃん綺麗になったよね」

無邪気な笑顔に、胸の奥がふっと熱くなる。思わず言葉を詰まらせ、視線を揺らした。

「えっ……」

さらに別の女生徒が、興味津々といった様子で首をかしげる。

「前から可愛くはあったけど、最近はなんかこう……色気?みたいな」

「男子連中もしょーもないこと言ってたよね。腰のラインがどうとか」

「ねえ、あまねちゃんさ。もしかして彼氏できた?」

一瞬、心臓が跳ねた。けれどすぐに肩を小さくすくめ、笑みを作りながら答えを濁す。

「そ、れは……」


脳裏に浮かんだのは、まるで数時間前のように鮮明な清澄の姿。──抱きしめられた夜、耳に残る「愛してる」の声。

「……プライベートなことだから……秘密だよ」

「え~!なんかあやし~」

「絶対そうだと思うんだけどなあ」

楽しげにからかい合う声に囲まれ、あまねは苦笑いを返す。けれど胸の奥では、誰にも言えない幸福感と、教師としての罪悪感が静かにせめぎ合っていた。

生徒の保護者である清澄との関係を、口が裂けても打ち明けられるはずはない。

今のままの名前のない関係なら、逃げ道も残せる。でも、清澄の存在に触れるたび、胸は痛んだ。

(それでも……)

心の奥底で、「彼の恋人でありたい」と願う思いが強まっていることも、見過ごせなかった。

窓の外から差し込む朝の光は、教室を柔らかく照らしている。けれどあまねの胸の内には、光と影が重なり合うような揺らぎが広がっていた。

それでも、彼に会いたいと思ってしまう。

その想いを抑えきれないまま、あまねは次の逢瀬を待ち望む自分に気づいて、そっと視線を落とした。







放課後、あまねのスマートフォンが静かに震えた。待ち受け画面には清澄からのメッセージの通知が表示されている。ドキドキしながら画面を開くと、そこには彼からの文字が並んでいた。

[お疲れ様。今夜は会える?]

高鳴る鼓動に、あまねは深く息を吸う。そのままスマホの画面をそっと胸に引き寄せた。

(今夜……清澄さんに会える)

教師としての立場をわきまえつつも、知られてはいけない関係の重みと、清澄への想いの強さが胸を押し潰しそうになる。

返事を打つ指先は、ほんの少しだけ震えた。

[仕事が終わったら、行きます]


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