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66 キス※
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風の音が鳴る。
アリセアは真夜中に静かに目を覚ました。
「呼ばれてる……」
薄らと目を開けたアリセアは、そう呟いた。
風が、ざわざわと木々を揺らしているから?
違う……ざわついているのは、私の心の中だ。
ふいに、誰かに焦がれているような、胸が締め付けられる感情がなだれ込んでくる。
身体の奥底に、まるで、揺れ動く誰かの気配があるような……。
それは、ふわふわとした夢の中のような、不思議な感覚だった。
そっと寝台からおりて、アリセアは隣室にいるユーグが、自室で静かに寝ているのを確認した。
その寝顔を見て、ふわりと心が解ける。
少しだけ、胸のざわめきがやわらいだ気がした。
けれど、それでも……足は止まらなかった。
ランタン1つ。
普段のアリセアなら、真夜中に、しかも1人ではとてもではないけれど行動出来なかった。
けれど、今夜は違う。
気がつけばアリセアは、王族寮を抜け出して、ランタンの明かりを頼りに、川辺へとたどり着いていた。
ふいに、意識がハッキリとし出す。
「あ、あら?……わたし……」
先程まで、まるで夢の中の出来事のように感じていた。
恐怖も感じなかった。
なのに、意識が晴れた瞬間、どっと心臓の鼓動が激しくなる。
(どうして……ここにきたのかしら)
怖い。
足がすくむ。
どうにか、ここから離れようとしたとき。
「っ……」
どこからか小さなうめき声が聞こえてきた。
「え……?」
どうしようか、迷ったのは一瞬だった。
もしかして、誰か倒れている人がいるのかもしれない。
恐怖よりその心配が勝って、おそるおそる、その声が、聞こえる先に近づいていった。
川辺をおり、橋の下へ……。
足元の草を踏みしめていくと、やはり人影が。
「え!?……フォート!?」
明かりに照らされたのは、橋の下の小さな祠の横で、苦痛に顔を歪めて、倒れていた彼だった。
アリセアは駆け寄って膝を着く。
服が汚れるのも気にさえしなかった。
「き、傷が……どうしたの!?」
ランタンでよく見ると、黒の上下の服の隙間からは血が滲み、ところどころ破けている。
その衣服も、少し湿っていて。
彼の身に何かが起こったことが、如実に分かった。
川に落ちた……だけでは説明がつかない状況に、アリセアは気ばかり焦る。
「フォート……?」
そう言って、もう一度、彼の意識を確かめようとしたときだった。
空気が変わったーー重く、どこか異質な……震えるような冷気。
背中がぞくりとして、アリセアが周囲を見回すも、誰もおらず、ただ、闇だけが広がる。
彼の身体に触れていた自身の手さえ、かたかたと震える。
ーーなにか、いる?
「ねぇ、お姉ちゃん」
「っ、……!!」
声が出なかった。
アリセアの、頭と耳に、直接響くように木霊する。
「だ……だれ?」
ふたたび周囲を見回すも、誰もいない。
凄く、楽しそうな、声色。
アリセアの手が、足が震える。
どうしようも無い恐怖に支配された。
「あのね、お姉ちゃんの居場所は、あの人ではなく、このお兄さんの傍にいることなんじゃないの?」
「……え?」
「ふふっ、ほら。お兄さんをみてごらんよ」
「フォート……?」
いつの間にか、彼の意識が回復し、瞳が開いていてーー
倒れていたはずのフォートが、糸に引かれるようにゆっくりと上半身だけ起き上がる。
虚ろな中に、どこか熱を孕んだような光。
むせ返る花々の香りに包まれるような、甘く、狂おしい幻覚のような。
フォートの目が……あの時のように色鮮やかに、光っているように感じたときーー私の強ばっていた体から、力が抜けた。
まるで……彼がいるから大丈夫。
そう思うかのように。
(なんだか、頭が……ぼうっとする)
フォートがそんな私をみてふわりと笑った。
「ルミナ……」
その言葉は、優しさよりも渇きに似ていた。
「ルミナ……?」
あの時、彼が寝言で言っていた言葉。
やっぱり人名だったの?ーーそう思った矢先。
次の瞬間、彼の手が頬に触れ、迷いなくアリセアに顔を近づけた。
「……っ!」
頭は確かにくらくらした。
けれど、アリセアは反射的に顔を背けた。
胸の奥が警鐘を鳴らす。
なに?この、彼の雰囲気。
それに、違う、私はルミナではーー
「やめて、フォート……私は……」
しかし、強く引き寄せられ、彼の胸に倒れ込む。
「あっ!」
その瞬間ーー。
「んん!?」
唇が優しく重なった。
アリセアの心が、震える。
「もう…………置いていかないでくれ」
フォートの声が、唇に触れたまま漏れる。
懺悔と祈りの入り混じったような、ひどく悲しげな声だった。
(……こんなの、ダメなのに……)
そう思っても、体が動かない。
拒もうとしたのに、なぜかできない。
自分の身体なのに、心とちぐはぐなまま、思考が溺れていく。
何度も唇を重ねられ、息が絡み、彼の熱が移るたびに、心の奥がざわめく。
「……フォート……やっ……ふぁっ」
(……彼を求めてる? まさか、そんな……)
キスが深まるたびに、アリセアが彼を求めてしまっている気がした。
確かに、アリセアの根底に、それはあった。
ふと、フォートの体温に気づく。
(彼の身体が熱い……?)
フォートの意識が朦朧としてるのかもしれない。
(……誰かと間違えてこんな事してるなんて後から知ったら、彼が傷ついてしまうんじゃ……)
「っ……やぁ、フォート……!」
キスはなおも深くなり、呼吸が絡む。
なんとか彼を押しかえそうとするも、やはり、うまく力が入らない。
(この声......アリセア?)
深い微睡みのような意識から、フォートは一瞬浮上した。
彼女に気がつき、目を細めた。
けれど。
「......ん、……アリセア.....」
確かに彼はそう言った。
ルミナではなく、アリセアと。
「な.........なんで?……っ、フォート……離れて……」
もう、ルミナではないって分かったはずなのに。
かすれた声で震えながら彼に答えると、
フォートの瞳が、一瞬だけ揺らいだ。
(分かってる……ルミナじゃない。それでも、君に触れたくて仕方がない)
けれどその迷いを飲み込むように、彼はもう一度アリセアの唇を奪った。
それは、あまりにも強くて、
悲しいほどに愛しい気持ちが溢れていた。
彼の指が、優しくアリセアの背中に添えられると、鼓動が跳ねた。
そのまま、流れるような動作でアリセアの太ももに。
優しく、さするように触れられる。
「!?……だめっ」
「アリセア……優しくするから」
(嫌……嫌なはずなのに……)
どこか懐かしくて、涙が滲みそうだった。
(また、この感覚ーー)
私、この手を知っている?
彼の腕の中にいることが、まるで自然なことのように思えてしまうーーそんな錯覚に囚われていく。
(……彼に懐かしさを感じてしまう……どうして?)
それでも――。
キスの最中、意識の奥に浮かんでくるのは、誰かの笑顔。
あたたかくて、まっすぐで、優しい――
ユーグストの、笑顔だった。
“守る”ことで、私を支えてくれたあの人。
どんなときも、手を差し伸べてくれた、誠実な瞳。
その人に触れられると、怖さが溶けて、心が穏やかになれたーー。
(なぜ……?ユーグ……どこにいるの?)
(......頭がぼうっとする)
花の香りが、まるで幻のように、アリセアの意識をやさしく飲み込んでいく。
「ユー……グ……」
一雫の涙が頬を、伝い。
フォートのキスが、今度こそ、ピタッと止んだ。
誰よりも大切な名前を、最後に思い浮かべたその瞬間。
ふっと、アリセアの意識が闇に沈んだ。
ーーーーーー
ついにフォートが……
さて、お久しぶりです
アルファポリスのメモ機能から、全プロット消えた為落ち込んでおります(> <。)
本編後の第2期や3期まで話も色々考えていたのですが……
感想も良かったらお聞かせくださいね
亀更新申し訳ございません
アリセアは真夜中に静かに目を覚ました。
「呼ばれてる……」
薄らと目を開けたアリセアは、そう呟いた。
風が、ざわざわと木々を揺らしているから?
違う……ざわついているのは、私の心の中だ。
ふいに、誰かに焦がれているような、胸が締め付けられる感情がなだれ込んでくる。
身体の奥底に、まるで、揺れ動く誰かの気配があるような……。
それは、ふわふわとした夢の中のような、不思議な感覚だった。
そっと寝台からおりて、アリセアは隣室にいるユーグが、自室で静かに寝ているのを確認した。
その寝顔を見て、ふわりと心が解ける。
少しだけ、胸のざわめきがやわらいだ気がした。
けれど、それでも……足は止まらなかった。
ランタン1つ。
普段のアリセアなら、真夜中に、しかも1人ではとてもではないけれど行動出来なかった。
けれど、今夜は違う。
気がつけばアリセアは、王族寮を抜け出して、ランタンの明かりを頼りに、川辺へとたどり着いていた。
ふいに、意識がハッキリとし出す。
「あ、あら?……わたし……」
先程まで、まるで夢の中の出来事のように感じていた。
恐怖も感じなかった。
なのに、意識が晴れた瞬間、どっと心臓の鼓動が激しくなる。
(どうして……ここにきたのかしら)
怖い。
足がすくむ。
どうにか、ここから離れようとしたとき。
「っ……」
どこからか小さなうめき声が聞こえてきた。
「え……?」
どうしようか、迷ったのは一瞬だった。
もしかして、誰か倒れている人がいるのかもしれない。
恐怖よりその心配が勝って、おそるおそる、その声が、聞こえる先に近づいていった。
川辺をおり、橋の下へ……。
足元の草を踏みしめていくと、やはり人影が。
「え!?……フォート!?」
明かりに照らされたのは、橋の下の小さな祠の横で、苦痛に顔を歪めて、倒れていた彼だった。
アリセアは駆け寄って膝を着く。
服が汚れるのも気にさえしなかった。
「き、傷が……どうしたの!?」
ランタンでよく見ると、黒の上下の服の隙間からは血が滲み、ところどころ破けている。
その衣服も、少し湿っていて。
彼の身に何かが起こったことが、如実に分かった。
川に落ちた……だけでは説明がつかない状況に、アリセアは気ばかり焦る。
「フォート……?」
そう言って、もう一度、彼の意識を確かめようとしたときだった。
空気が変わったーー重く、どこか異質な……震えるような冷気。
背中がぞくりとして、アリセアが周囲を見回すも、誰もおらず、ただ、闇だけが広がる。
彼の身体に触れていた自身の手さえ、かたかたと震える。
ーーなにか、いる?
「ねぇ、お姉ちゃん」
「っ、……!!」
声が出なかった。
アリセアの、頭と耳に、直接響くように木霊する。
「だ……だれ?」
ふたたび周囲を見回すも、誰もいない。
凄く、楽しそうな、声色。
アリセアの手が、足が震える。
どうしようも無い恐怖に支配された。
「あのね、お姉ちゃんの居場所は、あの人ではなく、このお兄さんの傍にいることなんじゃないの?」
「……え?」
「ふふっ、ほら。お兄さんをみてごらんよ」
「フォート……?」
いつの間にか、彼の意識が回復し、瞳が開いていてーー
倒れていたはずのフォートが、糸に引かれるようにゆっくりと上半身だけ起き上がる。
虚ろな中に、どこか熱を孕んだような光。
むせ返る花々の香りに包まれるような、甘く、狂おしい幻覚のような。
フォートの目が……あの時のように色鮮やかに、光っているように感じたときーー私の強ばっていた体から、力が抜けた。
まるで……彼がいるから大丈夫。
そう思うかのように。
(なんだか、頭が……ぼうっとする)
フォートがそんな私をみてふわりと笑った。
「ルミナ……」
その言葉は、優しさよりも渇きに似ていた。
「ルミナ……?」
あの時、彼が寝言で言っていた言葉。
やっぱり人名だったの?ーーそう思った矢先。
次の瞬間、彼の手が頬に触れ、迷いなくアリセアに顔を近づけた。
「……っ!」
頭は確かにくらくらした。
けれど、アリセアは反射的に顔を背けた。
胸の奥が警鐘を鳴らす。
なに?この、彼の雰囲気。
それに、違う、私はルミナではーー
「やめて、フォート……私は……」
しかし、強く引き寄せられ、彼の胸に倒れ込む。
「あっ!」
その瞬間ーー。
「んん!?」
唇が優しく重なった。
アリセアの心が、震える。
「もう…………置いていかないでくれ」
フォートの声が、唇に触れたまま漏れる。
懺悔と祈りの入り混じったような、ひどく悲しげな声だった。
(……こんなの、ダメなのに……)
そう思っても、体が動かない。
拒もうとしたのに、なぜかできない。
自分の身体なのに、心とちぐはぐなまま、思考が溺れていく。
何度も唇を重ねられ、息が絡み、彼の熱が移るたびに、心の奥がざわめく。
「……フォート……やっ……ふぁっ」
(……彼を求めてる? まさか、そんな……)
キスが深まるたびに、アリセアが彼を求めてしまっている気がした。
確かに、アリセアの根底に、それはあった。
ふと、フォートの体温に気づく。
(彼の身体が熱い……?)
フォートの意識が朦朧としてるのかもしれない。
(……誰かと間違えてこんな事してるなんて後から知ったら、彼が傷ついてしまうんじゃ……)
「っ……やぁ、フォート……!」
キスはなおも深くなり、呼吸が絡む。
なんとか彼を押しかえそうとするも、やはり、うまく力が入らない。
(この声......アリセア?)
深い微睡みのような意識から、フォートは一瞬浮上した。
彼女に気がつき、目を細めた。
けれど。
「......ん、……アリセア.....」
確かに彼はそう言った。
ルミナではなく、アリセアと。
「な.........なんで?……っ、フォート……離れて……」
もう、ルミナではないって分かったはずなのに。
かすれた声で震えながら彼に答えると、
フォートの瞳が、一瞬だけ揺らいだ。
(分かってる……ルミナじゃない。それでも、君に触れたくて仕方がない)
けれどその迷いを飲み込むように、彼はもう一度アリセアの唇を奪った。
それは、あまりにも強くて、
悲しいほどに愛しい気持ちが溢れていた。
彼の指が、優しくアリセアの背中に添えられると、鼓動が跳ねた。
そのまま、流れるような動作でアリセアの太ももに。
優しく、さするように触れられる。
「!?……だめっ」
「アリセア……優しくするから」
(嫌……嫌なはずなのに……)
どこか懐かしくて、涙が滲みそうだった。
(また、この感覚ーー)
私、この手を知っている?
彼の腕の中にいることが、まるで自然なことのように思えてしまうーーそんな錯覚に囚われていく。
(……彼に懐かしさを感じてしまう……どうして?)
それでも――。
キスの最中、意識の奥に浮かんでくるのは、誰かの笑顔。
あたたかくて、まっすぐで、優しい――
ユーグストの、笑顔だった。
“守る”ことで、私を支えてくれたあの人。
どんなときも、手を差し伸べてくれた、誠実な瞳。
その人に触れられると、怖さが溶けて、心が穏やかになれたーー。
(なぜ……?ユーグ……どこにいるの?)
(......頭がぼうっとする)
花の香りが、まるで幻のように、アリセアの意識をやさしく飲み込んでいく。
「ユー……グ……」
一雫の涙が頬を、伝い。
フォートのキスが、今度こそ、ピタッと止んだ。
誰よりも大切な名前を、最後に思い浮かべたその瞬間。
ふっと、アリセアの意識が闇に沈んだ。
ーーーーーー
ついにフォートが……
さて、お久しぶりです
アルファポリスのメモ機能から、全プロット消えた為落ち込んでおります(> <。)
本編後の第2期や3期まで話も色々考えていたのですが……
感想も良かったらお聞かせくださいね
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