14 / 247
1 聖女開眼
14 マーシャさんとの相談
しおりを挟む
父との再会翌日の朝。
マーシャさんが暖かいスープとパンと野菜を持って、小屋を訪ねてくれた。
うーん、今日のご飯も美味しい。
食事をとっていると、マーシャさんが気遣わしげにこちらをみている。
「どうしたの?」
「あの‥‥‥」
「?」
「昨日は、申し訳ありませんでした!」
「え?」
「昨日、お嬢様がデボラさんに殴られて、怪我をしたと旦那様に伺いました。
お守りしなくてはいけなかったのに、私、怖くなってしまって‥‥‥」
マーシャさんの手が小刻みに震えている。
心なしか、身体も震えているようだ。
「ふう」私は息を吐いた。
「仕方ないよ。昨日のデボラさん、怖かったもん」
「でも、お嬢様をお守りしなければならなかったのに‥‥‥」
「マーシャさん」
私はマーシャさんの目を見て話しかけた。
「それは違いますよ。昨日は、私の専属侍女ではなかったですし、私を守る義務まではありませんでした。
なので、自分を責めないで」
「お嬢様‥‥‥」
「じゃあ、もし、悪いと思ったなら、次に同じようなことがあったら、急いで誰かを呼びに行ってください」
「お嬢様‥‥‥分かりました!このマーシャ、命に変えても、急いで助けを呼びに行って参ります!」
「ありがとう」
マーシャの優しさが、嬉しい。私はにっこりと笑った。
「あ、でも!もうあのようなことは起きないと思います!今朝、旦那様が、奥様、ぼっちゃまと使用人一同をお集めになられて、二度とお嬢様に手出しをしないように。命令に背いた者は屋敷から追い出すと宣言されました。」
「そう、あの人が‥‥‥」
「父」という名のあの人にも、少しは情があるのだろうか。
でも、それを信じるのはまだ怖いような気がする。
心を預けすぎて裏切られれるのは、怖い。
「奥様も了承されました。しばらくはこちらでお過ごしになり、タイミングをみてお屋敷に戻られるとも伺いました」
「ふーん‥‥‥」
そうなんだ。それは知らなかった。
もう少し、許される限り、様子を見ていこう。
「ところで、今朝はお食事をお持ちしましたが、昼食と夕食はいかがなされますか?また、これからは男爵家のご令嬢として、家庭教師に学んでいただく必要があります。ぼっちゃまとご一緒の授業もあると伺っております。おそらく、後ほど家令からお話しすることになると思いますが」
「そうなんだ‥‥‥朝食はどうしたらいいの?あと、他の食事も」
「男爵家の方々は、朝食と昼食は各自別々にお取りになっていらっしゃいますが‥‥‥夕食は、旦那様がお留守でない場合は、ご家族がお揃いになって召し上がっています」
うーん。正直、あの家族と一緒に食事をするのは、まだ怖い気がする。
味がしない、確信しかない。
思わず、うつむいてしまう。
「お嬢様‥‥‥もし、ご心配なら、少し、様子を見られては?そう、まだお食事の時にお召しになるドレスもありませんし。今日これから仕立屋が参ります。男爵家の令嬢として相応しい服がありませんから、最初は出来合いのものをお直しすることになります。少しだけゆっくり、お直しをしてもらえるように、仕立屋に頼んでみましょう。」
いたずらっ子のように、笑いながら、マーシャが唇の前に「ナイショ」と指を立てる。
ありがとう!わかってくれてる!
「うん!」
うれしい!もう一つ、頼んでみてもいいかな?
「あの、朝ごはんはこの間のように、みなさんと一緒に食べてもいいですか?」
ずっと1人のご飯は、やっぱり寂しい。
「わかりました。家令のマクシムさんと相談しておきます。上手く言っておきますね。なるべく、お嬢様のご希望が叶うように」
「ありがとう!」
その後、少し話し合って、朝食は昨日のように使用人さんたちとご一緒させてもらうこと、昼食は朝にお弁当を作ってもらうこと、夕食はしばらく慣れるまでの間は、別に取らせてもらうことになった。
後で、家令のマクシムさんに話してくれるって。
よかったあ。
で、この後、仕立屋さんにグリグリとあっちを引っ張り、こっちを引っ張りこねくりまわされて、くったくたになっちゃったのはまた、別の話。
__________________________
お読みいただきましてありがとうございました。
マーシャさんが暖かいスープとパンと野菜を持って、小屋を訪ねてくれた。
うーん、今日のご飯も美味しい。
食事をとっていると、マーシャさんが気遣わしげにこちらをみている。
「どうしたの?」
「あの‥‥‥」
「?」
「昨日は、申し訳ありませんでした!」
「え?」
「昨日、お嬢様がデボラさんに殴られて、怪我をしたと旦那様に伺いました。
お守りしなくてはいけなかったのに、私、怖くなってしまって‥‥‥」
マーシャさんの手が小刻みに震えている。
心なしか、身体も震えているようだ。
「ふう」私は息を吐いた。
「仕方ないよ。昨日のデボラさん、怖かったもん」
「でも、お嬢様をお守りしなければならなかったのに‥‥‥」
「マーシャさん」
私はマーシャさんの目を見て話しかけた。
「それは違いますよ。昨日は、私の専属侍女ではなかったですし、私を守る義務まではありませんでした。
なので、自分を責めないで」
「お嬢様‥‥‥」
「じゃあ、もし、悪いと思ったなら、次に同じようなことがあったら、急いで誰かを呼びに行ってください」
「お嬢様‥‥‥分かりました!このマーシャ、命に変えても、急いで助けを呼びに行って参ります!」
「ありがとう」
マーシャの優しさが、嬉しい。私はにっこりと笑った。
「あ、でも!もうあのようなことは起きないと思います!今朝、旦那様が、奥様、ぼっちゃまと使用人一同をお集めになられて、二度とお嬢様に手出しをしないように。命令に背いた者は屋敷から追い出すと宣言されました。」
「そう、あの人が‥‥‥」
「父」という名のあの人にも、少しは情があるのだろうか。
でも、それを信じるのはまだ怖いような気がする。
心を預けすぎて裏切られれるのは、怖い。
「奥様も了承されました。しばらくはこちらでお過ごしになり、タイミングをみてお屋敷に戻られるとも伺いました」
「ふーん‥‥‥」
そうなんだ。それは知らなかった。
もう少し、許される限り、様子を見ていこう。
「ところで、今朝はお食事をお持ちしましたが、昼食と夕食はいかがなされますか?また、これからは男爵家のご令嬢として、家庭教師に学んでいただく必要があります。ぼっちゃまとご一緒の授業もあると伺っております。おそらく、後ほど家令からお話しすることになると思いますが」
「そうなんだ‥‥‥朝食はどうしたらいいの?あと、他の食事も」
「男爵家の方々は、朝食と昼食は各自別々にお取りになっていらっしゃいますが‥‥‥夕食は、旦那様がお留守でない場合は、ご家族がお揃いになって召し上がっています」
うーん。正直、あの家族と一緒に食事をするのは、まだ怖い気がする。
味がしない、確信しかない。
思わず、うつむいてしまう。
「お嬢様‥‥‥もし、ご心配なら、少し、様子を見られては?そう、まだお食事の時にお召しになるドレスもありませんし。今日これから仕立屋が参ります。男爵家の令嬢として相応しい服がありませんから、最初は出来合いのものをお直しすることになります。少しだけゆっくり、お直しをしてもらえるように、仕立屋に頼んでみましょう。」
いたずらっ子のように、笑いながら、マーシャが唇の前に「ナイショ」と指を立てる。
ありがとう!わかってくれてる!
「うん!」
うれしい!もう一つ、頼んでみてもいいかな?
「あの、朝ごはんはこの間のように、みなさんと一緒に食べてもいいですか?」
ずっと1人のご飯は、やっぱり寂しい。
「わかりました。家令のマクシムさんと相談しておきます。上手く言っておきますね。なるべく、お嬢様のご希望が叶うように」
「ありがとう!」
その後、少し話し合って、朝食は昨日のように使用人さんたちとご一緒させてもらうこと、昼食は朝にお弁当を作ってもらうこと、夕食はしばらく慣れるまでの間は、別に取らせてもらうことになった。
後で、家令のマクシムさんに話してくれるって。
よかったあ。
で、この後、仕立屋さんにグリグリとあっちを引っ張り、こっちを引っ張りこねくりまわされて、くったくたになっちゃったのはまた、別の話。
__________________________
お読みいただきましてありがとうございました。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました
斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。
白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。
その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。
それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。
やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり――
白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。
身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
2/26 番外編を投稿しました。
読んでいただけると嬉しいです。
思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。
とてもとてもありがとうございます!!
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~
しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。
豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。
――食事が、冷めているのだ。
どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。
「温かいごはんが食べたい」
そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。
地下厨房からの高速搬送。
専用レーンを爆走するカートメイド。
扉の開閉に命をかけるオープナー。
ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!?
温かさは、ホッとさせてくれる。
それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。
冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、
食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ!
-
今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる