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2 学園編
56 こっそり鍛錬
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ジョセフと手合わせをしたら、セオドアに青筋立てて怒られた。
ついでに、貴族の令嬢の立ち居振る舞いに常識を学べって言われて、教育係をつけられた。
それって、私に常識がないってこと?
幼馴染と手合わせしたから?
なんで?
弟もいたし、誰もが見られる場所だったから、なにも疑われるようなことはない。
まさか、人に隠れて会うべきだった・・・?それこそ怪しいじゃん。
鍛錬することが、「女らしくない」からいけないのか、それとも「ジョセフと鍛錬すること」が問題なのか分からない。なんでダメなの?さっぱりわからない。
セオドアに聞こうとしたら、秒で逃げられた。ちっ。
とはいえ、ストレスが溜まる。毎日来る嫌がらせの手紙と、ヒソヒソと囁かれる私の悪口。教科書が破られたことだって一度や二度ではない。
・・・
ストレス解消は運動が一番!
バレなきゃいいんでしょ!?
そうだよ、バレなきゃいいんだよ!
私は人目につきづらい早朝に鍛錬をすることにした。
だったら文句ないでしょ?って。
翌朝。
授業が始まる3時間前。
まだ起きている生徒すら少ない時間帯。
気持ちはいいけど、起きるのは辛い。
でも、これも鍛錬のため。いや、健全なストレス解消のため!
運動着に着替え、静かに早朝の剣技場に向かった。
この時間ならば、誰にも会わないに違いない。
・・・いた。
早朝の剣技場には男の人が一人。多分生徒だろう。
背が高く、細身だが、キレの良い動き。
その後ろ姿からは、よく鍛錬をしていることがわかる。
鍛錬用に重くしてあるであろう練習用の剣を軽々と振り下ろし、美しい型を見ただけで彼の腕がいいことが分かる。
揺れる黒髪に併せて筋肉がしなる。
でも、せっかく早起きしたんだし、もし話す機会があれば、黙っていてもらえるように頼めばいいよね。
私は、先に来ている彼の邪魔にならなければいように、こっそりと剣技場の端でストレッチを始めた。
やっぱり、早朝の空気は気持ちがいい。
まだ少し眠いけど、頑張って起きてよかった。
私は男子生徒と目が合わないように彼に背を向けて、清々しい気持ちで朝の空気を吸いながら、のびのびと筋肉を伸ばしていた。
「こんな時間に1人で出歩いているのか」
不機嫌な声がかかる。この声は、まさか?
「全く、お前には監視をつけるしかないのか」
恐々と振り返ると、そこにいたのは、
「王太子殿下・・・」
なんで。なんでいるのよ。こんな早朝に。しかも一人で鍛錬とか、ありえないんじゃないの?
王太子殿下ならもっと大勢引き連れているんじゃないの?いつもくっついてるあの側近だか側近候補だかの男子生徒とかさぁ・・・
驚いて言葉も出ない私を見て、王太子は眉をひそめた。
「お前は・・・全く。はあ」そう言うと、王太子はうつむき髪にぐしゃっと指を入れた。
「・・・ったく。まあいい。おいお前」
「はい?」
「ハルヴァートだ。お前はハルと呼べ。一応とはいえ、婚約者だからな」
「はあ、ハル・・・様?」
「まあ、それでいいだろう」
ハル様?は口の前に拳を持ってくると、そのままそっぽを向いてしまった。
一体何がしたいんだかさっぱりわからない。でも、なんとなーく顔が赤いような?
「暑いんですか?」
「はぁ?」
「顔が赤いなと」
「ばっ・・・・!!馬鹿者、これは、その、運動後だからだ。断じて他の意味などない!」
「はあ」
変なの。暑いかどうかを聞いただけなのに。なんでバカ扱い?ちょっとムカつく。
「いいか、お前」王太子ことハル様が私を睨みつけるようにして言う。
「1人でウロつくな。危険だ」
「学園の中ですよ?どこが」
「あのなあ」ハル様は呆れたように言葉を継ぐ。「少しは自覚しろ。その・・・お前の容姿とか。それだけではない。お前は100年ぶりに現れた聖女候補。学園内の信者が目を光らせているとはいえ、何か取り返しのつかないことが起こったらどうするつもりなのだ」
イライラと話すハル様の言葉にしゅんとなる。
ああ、聖女候補ね。そうでした。危うく勘違いしてしまうところだった。
この人にとって私はあくまでも聖女候補。
まるで私を心配しているかのようなそぶりはやめてほしい。
やっぱり攻略対象者だからなかな。簡単に心を引きずられそうになってしまう。
危ない危ない。
この人は、私を聖女候補として保護してくださる王太子殿下。ただ、それだけ。忘れちゃダメ。
そう自分に言い聞かせても心は晴れない。
「何もかも制約しないでください。」
思わずふてくされたような言葉が飛び出してしまう。
身分制度で言えば、王太子と男爵家の私生児なんて、巨象と蟻ぐらいの差があるのに、言葉を止められない。
「早朝に少し鍛錬しようとしただけです。ジョセフと一緒に鍛錬すれば安全なのにそれを禁じられたのは殿下でしょう?」
反論した瞬間、ハル様が怯んだ。
その目に走ったのは、何?
「あいつの名を出すな」
その声は、なぜかかすれていた。
「なぜですか」
ジョセフは大切な友人なのに。理由もなく制限されるなんて、納得がいかない。
「わからん。だが不快だ。」
ハル様は目も合わせてくれない。
全く理由にならない。思わず口を尖らせて王太子の顔を見てしまう。
すると王太子は圧を感じたのか、「今日は私と手合わせするか」と呟いた。
「喜んで」
嬉しくなって、思わず笑顔になってしまう。
現金だけど、手合わせができるとなったら急に嬉しくなり、テンションが上がった。
剣技場の中央に立ち、練習用の剣を合わせる。
カン!
次の瞬間には、小気味好い音を立てて剣が交わった。
気持ちいい!
この人、上手い!
ジョセフとは違った剣筋。
鋭くまっすぐな剣だ。
私の剣を受けながらもまっすぐに斬り込んでくる。油断禁物!
楽しい!
15分ほど剣を交えた後、心配そうに様子を見に来たアナさんに気がついた殿下が、手合わせを終わらせた。
「今日はここまで」
「ありがとうございました。楽しかったです」
まさか、王太子が自ら手合わせしてくれるなんて、思ったこともなかった。
思わずニコニコとお礼を言うと、ハル様は一言だけ。
「そうか」
と言うと、照れたように笑った。
どきん。
心臓が大きな音を立てる。
きゅ、急なデレはやめてよね!心臓に悪いから。
どきん、どきん、どきん・・・
心臓が暴走機関車のように大きな音を立て、どくんどくんと血が流れる音が聞こえる。
まるで世界が変わってしまったような、この気持ちは・・・単なるイケメン補正だから!!!
ほら、攻略対象者だから、だから、だから、イケメンだからだよ!
・・・そうだよね?
ついでに、貴族の令嬢の立ち居振る舞いに常識を学べって言われて、教育係をつけられた。
それって、私に常識がないってこと?
幼馴染と手合わせしたから?
なんで?
弟もいたし、誰もが見られる場所だったから、なにも疑われるようなことはない。
まさか、人に隠れて会うべきだった・・・?それこそ怪しいじゃん。
鍛錬することが、「女らしくない」からいけないのか、それとも「ジョセフと鍛錬すること」が問題なのか分からない。なんでダメなの?さっぱりわからない。
セオドアに聞こうとしたら、秒で逃げられた。ちっ。
とはいえ、ストレスが溜まる。毎日来る嫌がらせの手紙と、ヒソヒソと囁かれる私の悪口。教科書が破られたことだって一度や二度ではない。
・・・
ストレス解消は運動が一番!
バレなきゃいいんでしょ!?
そうだよ、バレなきゃいいんだよ!
私は人目につきづらい早朝に鍛錬をすることにした。
だったら文句ないでしょ?って。
翌朝。
授業が始まる3時間前。
まだ起きている生徒すら少ない時間帯。
気持ちはいいけど、起きるのは辛い。
でも、これも鍛錬のため。いや、健全なストレス解消のため!
運動着に着替え、静かに早朝の剣技場に向かった。
この時間ならば、誰にも会わないに違いない。
・・・いた。
早朝の剣技場には男の人が一人。多分生徒だろう。
背が高く、細身だが、キレの良い動き。
その後ろ姿からは、よく鍛錬をしていることがわかる。
鍛錬用に重くしてあるであろう練習用の剣を軽々と振り下ろし、美しい型を見ただけで彼の腕がいいことが分かる。
揺れる黒髪に併せて筋肉がしなる。
でも、せっかく早起きしたんだし、もし話す機会があれば、黙っていてもらえるように頼めばいいよね。
私は、先に来ている彼の邪魔にならなければいように、こっそりと剣技場の端でストレッチを始めた。
やっぱり、早朝の空気は気持ちがいい。
まだ少し眠いけど、頑張って起きてよかった。
私は男子生徒と目が合わないように彼に背を向けて、清々しい気持ちで朝の空気を吸いながら、のびのびと筋肉を伸ばしていた。
「こんな時間に1人で出歩いているのか」
不機嫌な声がかかる。この声は、まさか?
「全く、お前には監視をつけるしかないのか」
恐々と振り返ると、そこにいたのは、
「王太子殿下・・・」
なんで。なんでいるのよ。こんな早朝に。しかも一人で鍛錬とか、ありえないんじゃないの?
王太子殿下ならもっと大勢引き連れているんじゃないの?いつもくっついてるあの側近だか側近候補だかの男子生徒とかさぁ・・・
驚いて言葉も出ない私を見て、王太子は眉をひそめた。
「お前は・・・全く。はあ」そう言うと、王太子はうつむき髪にぐしゃっと指を入れた。
「・・・ったく。まあいい。おいお前」
「はい?」
「ハルヴァートだ。お前はハルと呼べ。一応とはいえ、婚約者だからな」
「はあ、ハル・・・様?」
「まあ、それでいいだろう」
ハル様?は口の前に拳を持ってくると、そのままそっぽを向いてしまった。
一体何がしたいんだかさっぱりわからない。でも、なんとなーく顔が赤いような?
「暑いんですか?」
「はぁ?」
「顔が赤いなと」
「ばっ・・・・!!馬鹿者、これは、その、運動後だからだ。断じて他の意味などない!」
「はあ」
変なの。暑いかどうかを聞いただけなのに。なんでバカ扱い?ちょっとムカつく。
「いいか、お前」王太子ことハル様が私を睨みつけるようにして言う。
「1人でウロつくな。危険だ」
「学園の中ですよ?どこが」
「あのなあ」ハル様は呆れたように言葉を継ぐ。「少しは自覚しろ。その・・・お前の容姿とか。それだけではない。お前は100年ぶりに現れた聖女候補。学園内の信者が目を光らせているとはいえ、何か取り返しのつかないことが起こったらどうするつもりなのだ」
イライラと話すハル様の言葉にしゅんとなる。
ああ、聖女候補ね。そうでした。危うく勘違いしてしまうところだった。
この人にとって私はあくまでも聖女候補。
まるで私を心配しているかのようなそぶりはやめてほしい。
やっぱり攻略対象者だからなかな。簡単に心を引きずられそうになってしまう。
危ない危ない。
この人は、私を聖女候補として保護してくださる王太子殿下。ただ、それだけ。忘れちゃダメ。
そう自分に言い聞かせても心は晴れない。
「何もかも制約しないでください。」
思わずふてくされたような言葉が飛び出してしまう。
身分制度で言えば、王太子と男爵家の私生児なんて、巨象と蟻ぐらいの差があるのに、言葉を止められない。
「早朝に少し鍛錬しようとしただけです。ジョセフと一緒に鍛錬すれば安全なのにそれを禁じられたのは殿下でしょう?」
反論した瞬間、ハル様が怯んだ。
その目に走ったのは、何?
「あいつの名を出すな」
その声は、なぜかかすれていた。
「なぜですか」
ジョセフは大切な友人なのに。理由もなく制限されるなんて、納得がいかない。
「わからん。だが不快だ。」
ハル様は目も合わせてくれない。
全く理由にならない。思わず口を尖らせて王太子の顔を見てしまう。
すると王太子は圧を感じたのか、「今日は私と手合わせするか」と呟いた。
「喜んで」
嬉しくなって、思わず笑顔になってしまう。
現金だけど、手合わせができるとなったら急に嬉しくなり、テンションが上がった。
剣技場の中央に立ち、練習用の剣を合わせる。
カン!
次の瞬間には、小気味好い音を立てて剣が交わった。
気持ちいい!
この人、上手い!
ジョセフとは違った剣筋。
鋭くまっすぐな剣だ。
私の剣を受けながらもまっすぐに斬り込んでくる。油断禁物!
楽しい!
15分ほど剣を交えた後、心配そうに様子を見に来たアナさんに気がついた殿下が、手合わせを終わらせた。
「今日はここまで」
「ありがとうございました。楽しかったです」
まさか、王太子が自ら手合わせしてくれるなんて、思ったこともなかった。
思わずニコニコとお礼を言うと、ハル様は一言だけ。
「そうか」
と言うと、照れたように笑った。
どきん。
心臓が大きな音を立てる。
きゅ、急なデレはやめてよね!心臓に悪いから。
どきん、どきん、どきん・・・
心臓が暴走機関車のように大きな音を立て、どくんどくんと血が流れる音が聞こえる。
まるで世界が変わってしまったような、この気持ちは・・・単なるイケメン補正だから!!!
ほら、攻略対象者だから、だから、だから、イケメンだからだよ!
・・・そうだよね?
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