そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

文字の大きさ
118 / 247
3 ヒロインへの道

115 聖女って何したらいいの?

しおりを挟む
「で、王太子殿下と正式に婚約を結ぶ約束をしたから、聖女として覚醒しようとしたってこと?」
「ちょっと、はしょりすぎだよ、セオ~」
「はしょったってはしょらなくたって結果は同じでしょ」
「でもほら気分とかさあ」
「はいはい」

セオドアは呆れ顔でソファーに座り、私も座るように手で促した。
セオの向かい側にちょこんと座る。

「私も、何かの役に立てないかなって思って‥‥‥ハル様とか、ハル様とか、ハル様の」
ソファーの椅子に指先でのの字を書いた。
「色ボケかよ」
「なんで乙女心をわかってくれないのさ」
「むしろ、なんで僕がわからなきゃならないのさ」
「たしかに」
兄弟だもん、そんなもんだよね。

「うーん、でもさあ、私やっぱり誰かの役に立ちたい。せっかく聖女だって言われてるのに、ただ座ってお茶飲んでるだけでいいのかな。正直荷が重いって思うことがないわけじゃ無いけど、でも、やっぱり、何かできないかな」
「確かにね。それはあるよね」

セオドアはしばらく考え込んだ。
私も一緒に考え込む。

「うーん、何も思いつかない」
「僕も‥‥‥人の役に立ちたいなら、立ってきたらいいんじゃない?とりあえず」
「ん?」
「ヴィー様の孤児院の床でも掃いてきたら。役にたつじゃん」
「なるほど!そうだね!じゃ、今から」
「明日にして。こんな夕方から出かけさせて、王太子にバレたら僕がシメられる」
「大丈夫だよー」
「絶対だめ。怒るとめっちゃおっかないんだから。相変わらず、ブレないね、スー」

セオドアに止められてその日は行けないことになったけど、明日は朝から、孤児院の手伝いに行こう!


翌日の朝、早速孤児院のお手伝いに行った。
朝食後すぐにいったのに、もうデボラが忙しそうに働いていた。
子供達の食器を下げたり、着替えを集めたり、トイレに連れて行ったり‥‥‥
デボラが申し訳なさそうな笑みを浮かべて言った。

「朝のこの時間は忙しいんですよ。お構いできなくてすみません」
「いえ、あの、客ではないので、お気にならさず‥‥‥」

慌てて言って、周りを見回すと、子供達は‥‥‥10人以上はいそうだな。
みんな小さい子ばっかりだ。一番上の子が7歳くらい?
あ、でも大きい子も何人かはいるみたい。デボラの指示でみんな忙しそうに働いている。
うん、仕事はいくらでもありそうだ。

「あの、何かお手伝いできることはありませんか」
「いえいえ大丈夫ですから」即答。
「そう仰らずに、何か‥‥‥」
しつこく食い下がった瞬間、後ろでガシャン、と何かが割れる音が聞こえた。

「きゃー」
「うわーん」
「つめてー」

振り向くと、テーブルの上にあった水差しとコップが床に落ちて割れていた。
床は水浸しで、水がかかっちゃった子がいるみたい。
近くにいる女の子がそっとガラス片に手を伸ばした。

「アイラ、触らないで」

デボラが叫ぶと、アイラと呼ばれた女の子は手を伸ばしたまま、びくりと体を震わせ、そのまま泣き始めた。

デボラが近づき、アイラをさっと抱き上げた。

「泣かないでいいのよ、アイラ。わざとじゃないんでしょ?」
「うん」
「じゃ、仕方ないじゃない。形あるものは壊れるものよ」
「う、うん。ごめんなさい」
「大丈夫よ。なんともないからね」

優しい声を聞くと、アイラはデボラの肩に顔を埋めて激しくしゃくりあげた。
デボラって、こんな人だったんだ。
あの、おっかなかったデボラはもしかして、愛情深い人だったんだろうか。
いや、もちろん暴力は絶対だめだけど、なんか、この人って思っていた人と違う。

デボラがアイラの背をとんとんと優しく叩くと、アイラも落ち着いてきたのか、涙が止まったみたい。

「お嬢様、それでは、ガラス片を箒で端に寄せていただけますか」

デボラが箒の場所を指で指した。

「他の子供達が触れないように寄せてくださると助かります」
「任せてください!」
「くれぐれも、ガラスに触ったりなさらないでくださいね。お手に傷でもつけたら取り返しのつかないことになってしまいますので。どうか、お願いします」
「はい」

確かに。平民のデボラが自分の仕事を手伝わせて貴族の令嬢兼王太子の婚約者に怪我でもさせたら大変なことになってしまうだろう。
私もわきまえないと。
大人しく、床を掃きながら、もっと何か役立てることはないかと考え始めた。

部屋の中では、他の子の髪をひっぱっている子、コップの水を飲んでいる子、ゴロゴロ転げ回っている子、なんか‥‥‥自由だな。
この子たちって、日課が決まってるのかな。
もし決まってたら、何か手伝えるかな。

「ねえ」

私は近くにいた利発そうな男の子に声をかけてみた。

「この後やることって決まってるの?」
「この後は洗顔と歯磨きをして着替えたら、ヴィー様が本を読んでくださるんだ」
「そうなのね。みんなは何してるの?」
「言われるまで待ってる。自分が何をするのかわかってない子もいるし。僕はわかってるけど」

男の子は胸を張って自慢した。

「そうか、わかってて偉いね」

褒めると男の子は目を輝かせ、嬉しそうに笑った。

(僕はわかってる‥‥‥わかってない子もいる‥‥‥どうしたら、助けになれるのかな‥‥‥うーん)

私は子供たちを見回した。

(小さな子‥‥‥どうしたら‥‥‥?‥‥‥もしかして?)

やってみようか。

私は子供を見回した。


********************************************************
すみません。ストック切れです。明日もしかしたら更新できないかもしれません。
その時はごめんなさい。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

処理中です...