そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

文字の大きさ
152 / 247
3 ヒロインへの道

148 辺境

しおりを挟む
河を越えた直後、私たちの通り道として水位を下げてくれていた川は、元の流れに戻った。
リーラの先導でそのまま城に続く道を駆け出した。

後ろから大きな叫び声と馬のいななきが聞こえてくる。

「川に二人ほど飲まれましたね」

騎士の一人が淡々と言う。

「当たり前ですよ。この川は表面上は穏やかに見えるところも、川の中は複雑に水流が流れていて、足を取られるんです。しかも、雨が一回降れば川底の石が簡単に動いてしまって、流れが変わるんです。だから慣れた俺たちだって渡れないんですよ」
「そうなんだ」
私が感心すると、別の騎士が言った。
「でも俺たちには聖女様がついてるから、百人力ですね!」
「いえ、そんなことは・・・みなさんに守っていただいているのに」
「喜んで、お守りしますよ!また、助けてください、聖女様!」
「こら、聖女様にねだるな」
ジョセフがしかめっ面で騎士を注意する。
「すいません、調子に乗りました!」
とおどけた調子で騎士が答え、皆が大笑いした。

「ジョセフ、そんなにかしこまらなくても」
私が言うと、ジョセフはプイと前を向いた。
その耳が真っ赤になっていることには、気がつかないことにした方がいいんだよね?


しばらく進むと、今までとは全然違う空気が広がっていた。

ピリピリする。最前線の雰囲気。
ここは辺境。
いま、何も起こっていなくても一瞬後には何が起こるかわからない。
そういう土地なんだ。

もし今隣国から攻撃があったとしたら、最初に攻撃されるのはここ。
命のやりとりをするのはここ。

リーラのお父様であるガウデン候は武闘派の堅物として知られているが、それは当然。
この環境で浮ついていたら、即、死を意味するから。
自分だけではなく、領民も王都にいる大勢の人たちの命すら危うくしかねない。

辺境にいる兵士や騎士たちが守っていてくれるからこそ、私たちは平和に暮らせていたんだ、と今更ながら初めて理解した。

ここは厳しい環境にあるからこそ、聖女の慰問が必要とされたんだ。
「慰問」は言い訳じゃなく、本当に必要とされている行為だった。
私は身の引き締まる思いだった。
正直自分が聖女なのかは確信が持てない。
聖女ってなんなのかわからない。
もし、なんの感情もなくただ人を癒すだけの存在であるとしたら、私はそうはなれない。
時にはマイナスの感情だって懐く普通の人間に過ぎない。
正直、ルシアナ様にもアリアにもいい感情を抱いてはいない。
特にルシアナ様はハル様のことを攻撃した時に、大嫌いになった。
身分が低い私のことを蔑んでいたことは知っていた。でも、私の大切な人を攻撃するなんてゆるせない。
その程度の感情的な人間だもの。
特徴があるとしたら、だいぶうっすらとしてきたけど前世の記憶があること、ぐらいしかない。

でも、私が聖女としてしっかり役割を果たすことで、みんなが喜んでくれたり勇気が生まれるのなら聖女として頑張るしかないと、思う。
前世の記憶があるせいで、自分が聖女だと言うことは知ってるしね。
これから、辺境に入り、兵士たちの慰問として何ができるのかわからないが、精一杯の力になれるように頑張ろう。
そう考えると、肩に力が入った。

***************************************************

短めでごめんなさい。
すみません、夏バテ→ストック切れが原因で、毎日更新が難しいです。
なるべく頑張りますが、ストックができるまでは途切れ予想ありです・・・
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。 2/26 番外編を投稿しました。 読んでいただけると嬉しいです。 思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。 とてもとてもありがとうございます!!   

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

処理中です...