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4 決戦
197 柔らかな銀色の光
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「スー、目覚めたって?」
部屋にリーラが入ってきた。
「リーラ、傷は大丈夫なの」
私は慌てて涙を隠すと、リーラの頭の上から足の先まで確認した。
あの時、リーラは最前線にはいなかったけど、一人前の戦士として戦っていた。
あれだけの混乱の中、無傷だったはずはない。
「見た目大丈夫そうだけど・・・リーラも傷を負ったよね」
「私は大丈夫よ。支えるから、ベッドに戻ろう?」
リーラは私の腕の下に体を入れると、よいしょっと持ち上げベッドに戻してくれた。
「スーはすごいね。私もちょっと刺されたけど、スーが力を入れた石を当てたらすぐに治っちゃったよ?一緒にきた騎士たちも、皆元気だよ。スーのお陰だよ」
「そもそも、私のせいで」
「スー、ストップ」
リーラが私の唇に人差し指を当てた。
「みんな聖女を守れたことを誇りに思ってるんだよ。聖女を守ることはこの国を、この国に住む人たちのことを守ることに繋がるからだよ。だから、スーのせいじゃない。スーはただ、ありがとうっって言ってくれれば十分報われるんだよ」
「リーラ・・・」
両目の奥がじんわりと痺れたような熱を孕んだ。
「ジョセフのことだけど!」
リーラが私の目に溜まった涙を見ないようにしながら言葉を続けた。
「ずっと眠ってる。時々リカルド先生がジョセフの様子を見てくれているし、今できることはないかな。ジョセフの近くに水晶を置いておくだけで、スーの力をどんどん吸収して「聖なる石」ができちゃうくらい、光を放ってるから、放っておくしかないみたい。もちろん、近くで誰かは見守っているから安心して。ここはジョセフの実家だから、お母様とお姉さまが交代でつきっきりでお世話しているから。」
(とりあえず、命は助かったのかな)
少しだけほっとする。
でも、目が覚めなかったらどうしよう。
また不安に襲われる。
きっと、ジョセフが目覚めなかったら、2度と楽しい日なんて来ないと思う。
「そういえば、私、どのくらい寝ていたの?」
「まるまる2日ぐらい?」
「そんなに!?」
「全然目を覚まさないし、リカルド先生もますますオカシクなったりして、色々大変だったよ?」
リーラが冗談めかして言う。
「そうなのね」
真剣に返す私に、「一応、冗談だったんだけどな・・・」とリーラがボソッと呟いた。
「ま、リカルド先生のことは置いておいて!」
雰囲気を変えるように、リーラがあえて明るい声を出した。
「ここは、王都にあるブラウン家のお屋敷だよ。騎士団長のメルヴィル侯爵様の王都でのお屋敷だから、守りも万全だからって、私たちまでお世話になっているの」
そうなんだ。と言うことはさっきいた女の人はジョセフのお姉さんか、親族のどなたかなんだろうな。
きっとジョセフに傷を負わせてしまった聖女と助けた聖女の狭間でどう反応したらいいのか戸惑っていたんだろう。
「ジョセフに会えるかな・・・?」
「そうだよね、心配だよね」リーラが少し考え込む。
「少し落ち着いたら、ケイレブ兄様に運んでもらおう。非常事態だから、聖女を抱きかかえても許されるよね」
どう言う意味だろ?とは思ったが、すぐに忘れてしまった。
とにかく、今はジョセフの無事だけが気がかりだ。
「じゃあ、まず食事して。2日も絶食してるんだから、聖女だって死んじゃうよ?」
正直何も飲みたくも食べたくもなかったけれど、薄いスープをなんとか飲みくだし、ようやく部屋を出ることが許された。
私をケイレブが運ぶことについては、絶対許さないと言い張るリカルドとの間に一悶着あったが、自分も疲労困憊で歩くことがやっとなリカルドが折れた。
リカルドは、私が寝ている間にもほとんど寝ずに、ジョセフの様子を見たり、傷ついた騎士たちの世話をしてくれたりしていたらしい。詠唱にかなり気力と体力を使うのにそれができたのは、私が力をこめた水晶のおかげだと感謝されてしまった。返って申し訳なくなってしまう。
そして、この2日間でリカルドの評価は爆上がりらしい。
まあ、もともと攻略対象者だし、スペックの高い人なのよね。変態でさえなければ。
ケイレブに運ばれて、薄暗いジョセフの部屋に入ると、私の動きに呼応するかのように、ジョセフを取り巻く金と銀の光の輪が踊るようにゆらめいた。
その中央にはジョセフが静かに眠っていた。
近づき、頬に手を触れると、温かく、ほっとする。
「ジョセフ・・・どうか、早く良くなりますように」
そう願うと、光が優しく輝きを増した。
銀色の柔らかな光が室内の隅々まで照らしていく。
どうか、ジョセフが回復しますように。
目を覚ましますように。
ジョセフの命が失われる危機が去ったことだけは分かる。
あの時どんどんジョセフの中から流れ出していた命の灯がジョセフの中にしっかりと根を下ろしたことが見て取れた。
ああ、よかった。少なくとも最悪の事態はまぬがれた。
安心して気が抜けたのか、私はまた気を失ってしまった。
意識を失う瞬間に、リカルドの焦った顔がちらりと見えた。
部屋にリーラが入ってきた。
「リーラ、傷は大丈夫なの」
私は慌てて涙を隠すと、リーラの頭の上から足の先まで確認した。
あの時、リーラは最前線にはいなかったけど、一人前の戦士として戦っていた。
あれだけの混乱の中、無傷だったはずはない。
「見た目大丈夫そうだけど・・・リーラも傷を負ったよね」
「私は大丈夫よ。支えるから、ベッドに戻ろう?」
リーラは私の腕の下に体を入れると、よいしょっと持ち上げベッドに戻してくれた。
「スーはすごいね。私もちょっと刺されたけど、スーが力を入れた石を当てたらすぐに治っちゃったよ?一緒にきた騎士たちも、皆元気だよ。スーのお陰だよ」
「そもそも、私のせいで」
「スー、ストップ」
リーラが私の唇に人差し指を当てた。
「みんな聖女を守れたことを誇りに思ってるんだよ。聖女を守ることはこの国を、この国に住む人たちのことを守ることに繋がるからだよ。だから、スーのせいじゃない。スーはただ、ありがとうっって言ってくれれば十分報われるんだよ」
「リーラ・・・」
両目の奥がじんわりと痺れたような熱を孕んだ。
「ジョセフのことだけど!」
リーラが私の目に溜まった涙を見ないようにしながら言葉を続けた。
「ずっと眠ってる。時々リカルド先生がジョセフの様子を見てくれているし、今できることはないかな。ジョセフの近くに水晶を置いておくだけで、スーの力をどんどん吸収して「聖なる石」ができちゃうくらい、光を放ってるから、放っておくしかないみたい。もちろん、近くで誰かは見守っているから安心して。ここはジョセフの実家だから、お母様とお姉さまが交代でつきっきりでお世話しているから。」
(とりあえず、命は助かったのかな)
少しだけほっとする。
でも、目が覚めなかったらどうしよう。
また不安に襲われる。
きっと、ジョセフが目覚めなかったら、2度と楽しい日なんて来ないと思う。
「そういえば、私、どのくらい寝ていたの?」
「まるまる2日ぐらい?」
「そんなに!?」
「全然目を覚まさないし、リカルド先生もますますオカシクなったりして、色々大変だったよ?」
リーラが冗談めかして言う。
「そうなのね」
真剣に返す私に、「一応、冗談だったんだけどな・・・」とリーラがボソッと呟いた。
「ま、リカルド先生のことは置いておいて!」
雰囲気を変えるように、リーラがあえて明るい声を出した。
「ここは、王都にあるブラウン家のお屋敷だよ。騎士団長のメルヴィル侯爵様の王都でのお屋敷だから、守りも万全だからって、私たちまでお世話になっているの」
そうなんだ。と言うことはさっきいた女の人はジョセフのお姉さんか、親族のどなたかなんだろうな。
きっとジョセフに傷を負わせてしまった聖女と助けた聖女の狭間でどう反応したらいいのか戸惑っていたんだろう。
「ジョセフに会えるかな・・・?」
「そうだよね、心配だよね」リーラが少し考え込む。
「少し落ち着いたら、ケイレブ兄様に運んでもらおう。非常事態だから、聖女を抱きかかえても許されるよね」
どう言う意味だろ?とは思ったが、すぐに忘れてしまった。
とにかく、今はジョセフの無事だけが気がかりだ。
「じゃあ、まず食事して。2日も絶食してるんだから、聖女だって死んじゃうよ?」
正直何も飲みたくも食べたくもなかったけれど、薄いスープをなんとか飲みくだし、ようやく部屋を出ることが許された。
私をケイレブが運ぶことについては、絶対許さないと言い張るリカルドとの間に一悶着あったが、自分も疲労困憊で歩くことがやっとなリカルドが折れた。
リカルドは、私が寝ている間にもほとんど寝ずに、ジョセフの様子を見たり、傷ついた騎士たちの世話をしてくれたりしていたらしい。詠唱にかなり気力と体力を使うのにそれができたのは、私が力をこめた水晶のおかげだと感謝されてしまった。返って申し訳なくなってしまう。
そして、この2日間でリカルドの評価は爆上がりらしい。
まあ、もともと攻略対象者だし、スペックの高い人なのよね。変態でさえなければ。
ケイレブに運ばれて、薄暗いジョセフの部屋に入ると、私の動きに呼応するかのように、ジョセフを取り巻く金と銀の光の輪が踊るようにゆらめいた。
その中央にはジョセフが静かに眠っていた。
近づき、頬に手を触れると、温かく、ほっとする。
「ジョセフ・・・どうか、早く良くなりますように」
そう願うと、光が優しく輝きを増した。
銀色の柔らかな光が室内の隅々まで照らしていく。
どうか、ジョセフが回復しますように。
目を覚ましますように。
ジョセフの命が失われる危機が去ったことだけは分かる。
あの時どんどんジョセフの中から流れ出していた命の灯がジョセフの中にしっかりと根を下ろしたことが見て取れた。
ああ、よかった。少なくとも最悪の事態はまぬがれた。
安心して気が抜けたのか、私はまた気を失ってしまった。
意識を失う瞬間に、リカルドの焦った顔がちらりと見えた。
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