そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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4 決戦

205 出頭の朝

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とうとう、その日が来た。

聖女は、「聖女として」評議会に出席するときは、必ず教団にある泉で沐浴をしてから出席することが定められている。
聖女として、というのは時に「王妃として」「王子妃として」出席することがあるからだ。そのときは沐浴は必要とされていない。
でも、今回私は「偽聖女の疑いあり」「たくさんの男性とふしだらな関係をもった汚れた女」であると告発されたため、泉での沐浴は禁止された。
ちなみに泉なので当然水だ。季節は関係ない。いや、むしろ冬は超冷たい。
なので、実はそれほど残念でもないのだが、禁止されると沐浴したかった、と思うのはなぜだろう。
冷たいのに。

なんとなく、聖女としての自信を奪われるような感覚。
私に対する、悪意。
そして、来るべき大評議会への不安。
どんどん自信がなくなり、暗い気分になる。
それこそが相手の思う壺なのかもしれない。

「失礼します」
ノックとともに、侯爵夫人とその侍女の方が部屋に入ってきた。

「聖女様、そろそろお支度の時間でございます。お身体を清めた後こちらのドレスをお召しください」

そういって夫人が広げさせた乳白色のドレスには、繊細なレースがふんだんにあしらわれ、ボディスにはびっしりと百合の刺繍が施されていた。このドレスは・・・

「ディライト領の絹?」

夫人がにっこりと笑った。

「素晴らしいお品ですわね。しかも襟元のレースとボディスにあしらわれた刺繍をご覧ください。見事でございましょう?お義母様の男爵夫人と弟様の合作だそうですわ。ディライト領の方はさすがの腕前だと感心しておりましたのよ?」
「ヴィー様とセオが・・・」

ドレスに近づき、触れた瞬間、涙があふれた。

(頑張れ、負けるな、ステラ)

気持ちが流れ込んでくる。

(信じてる。愛してる。ステラ)

ヴィー様、セオドア・・・
二人が私を応援する気持ち、信じる気持ちが私の崩れかけていた気持ちを支えてくれる。
大評議会の議事堂には、国王陛下と御一族、宰相様、評議会委員たち、教団の幹部たちや一部の大貴族しか入れないことになっている。
そのほか当事者として呼び出された本人と訴えられた人。つまり今回は不当な絹の価格つり上げをしたと訴えられているとうさまと私しか中には入れない。一緒にいて支えることができない二人の心からの思いやり。
胸が一杯になる。

そうだった。私は一人じゃない。
敵は強大だけど、応援してくれる人たちがたくさんいる。
負けられない。
何よりも自分に負けちゃダメだ。
自分のためだけじゃない。
私を信じてくれたハル様、学園の友達。
守ってくれたジョセフ、ガウデン候と辺境の方々。
教団のみなさんも助けてくれた。
いつだって支えてくれる家族。
男爵領の領民たちもみんな困ってる。
私だけじゃない、みんなのために頑張るしかない。

背筋がびしっと伸びた気がした。

「侯爵夫人様、私のこと、綺麗にしてください」
「承りました」

侯爵夫人とメイドさんたちに気合が入ったのがわかる。
やっぱり、女子は戦闘の時は綺麗になりたいよね。負けたくないもん。特に自分に。

あちこち引っ張られながら気合を入れ、絶対に負けないぞと心を決めた。


出立の前、ジョセフの顔を見にいった。
まだ寝てると聞いていたので、そっと起こさないように寝室に入れてもらうと、気持ち良さそうな寝息が聞こえてくる。
この様子なら、容体が急変することもないだろう。
ほっとした。

(わたし、頑張ってくるね、ジョセフ)

心の中で挨拶し、侯爵家で用意してくださった馬車に乗り込んだ。


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