そうです。私がヒロインです。羨ましいですか?

藍音

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4 決戦

206 祈る人たち

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馬車の中には、侯爵家の跡取りであるサイラス様とリーラが同乗してくれていた。
リーラは議事堂の中には入れないけど、支えたいし、何かあれば証言できるからと付いてきてくれたのだ。
ケイレブと辺境の騎士たちは、騎乗で同行してくれている。
ブラウン家の馬車はさすがの高級感で、乗っていることを忘れてしまうほど静かに走りだした。

お屋敷の門の前には数十人の人だかりができていた。
皆、祈るように手を組み、固唾を飲んで見守っている。

「あなたのご無事を祈る者たちですよ」

サイラスが言った。
色々な人がいる。若い人にお年寄り、小さな子供の手を引いている人もいる。男の人も女の人もいた。
馬車で通り過ぎながら、皆さんの様子を見ると、皆何かを振っている。

(青・・・藍色のリボン?辺境で祈りを込めたリボンに似てる・・・?偶然かな)

キョロキョロしていると、馬車の外を並走するケイレブと目が合った。
ケイレブはニッと笑うと、私に左手を振った。その手首には、藍地に金があしらわれたリボンが巻かれていた。

やっぱり・・・似てる。
もしかして、ケイレブが配ったの?どうして?

そのまま石畳の道を進んでいくと、だんだん人が増えてきた。
皆左手に藍色のリボンを持ったり結んだりしている。
小さな女の子は髪の毛に飾ったり、男の子はタイのように首元に結んでいる子が目立つ。

もしかして、やっぱり、ケイレブの指示?
私がケイレブの顔を見ても、ケイレブは相変わらずニヤニヤするだけだった。
議事堂までの道にはずっと祈る人、手を振る人がいた。
その姿を眺めつつ馬車は静かに進み、評議会議事堂前の広場に入ると、そこにはたくさんの人がいた。
警備の兵が排除しようとしてもどんどん広場に人が入ってきているようだ。
馬車が進むための道を確保するだけで精一杯という様子で、警備兵が大声で「道を塞がないように!」と怒鳴っている。

辺境から戻ってくるときには、戦闘で敵を蹴散らしていたケイレブは今日はおとなしく馬車に並走していて、文句ひとつ言わなかった。

「聖女様を一目見ようと、民が集まってきているのですね」
サイラスが窓の外を見ながら言った。

「まさか、そんなことが。私は王都では無名の存在ですから」
「無名・・・?100年ぶりに顕れた聖女が?ははは、冗談ですよね?」

キョトンとしてサイラスを見ると、「聖女様について知らないものはいませんよ。教会で光の柱を建てたでしょう?」と言われてしまった。
そう言えばそうでした。
「でも、まだ聖女認定はされてないですし・・・」
「そんなことは関係ありませんよ。この国に聖女様が顕れてくださったことが重要なんです。聖女様の顕現を待ち望んでいた民のためにも、必ず疑いは晴らさないとなりませんね」

サイラスがにっこり笑った。
笑うとジョセフに似ている。

「はい、必ず」

集まってくださった方のためにも、必ず疑いを晴らさなくては。
馬車は静かに進み、そのまま、議事堂の玄関に入っていった。
議事堂のフェンスの外には大勢の人々が詰めかけている。

私はサイラスにエスコートされて馬車から降りると、フェンスの外を振り返った。
大勢の人々が私に藍色のリボンを巻いた手を振っている。
応援する気持ちがわたしに伝わってきた。

私は嬉しくなり、思わず人々に手を振った。
そのとき。

「聖女様ーーー!!」

一人の少女が叫んだ。
それはまるで呼び水のように、人々は次々に大きな声で叫びだした。

「聖女様!ありがとうございます!」
「聖女様ーーー!!」
「聖女様、必ず疑いを晴らしてください!!」
「待っています!!」

口々にかけられた言葉に涙が出そうになる。

私はにっこり笑うと、大きく手をふり、そして議事堂に向かった。



議事堂で私を待ち受けていたのは、人々が私に向けてくれたのとは全く違う、感情だった。

憎しみ、恨み。

議事堂の中、原告として先に来ていたルシアナ様が立ち上がった。
その姿は初めて会った時と同じ。

真っ赤なドレスに身を包み、私を見下ろすその姿。
蔑みと憎しみに満ちたその表情は、悪役令嬢、そのものだった。
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