天使のように可愛い私と可愛くないお姉ちゃんの話

藍音

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7 第1回プロに学ぶ会

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こんばんは。踊る熊猫亭の看板娘ことクラリスです!
今日はお姉ちゃんのために潜入調査を実施します。名付けて、「第1回プロに学ぶ会」です!
クラリス、頑張ります!


ちょっとその前に、うちのお客さんたちの行動パターンを紹介します。

だいたい騎士も冒険者も行動パターンは同じようなものです。
夕方から酒と食事を楽しんで、夜を楽しんだ後はさっさと寝る。そして夜明けとともに起きる。これ基本。夜は暗いし蝋燭台もバカにならないからね。
うちの宿では蝋燭は2日に1本サービスでそれ以上は別料金でーす。良心的でしょ?
魔力で明るくする人もいるけど、お日様が出ている時間帯に動けばいいんだから非効率だよね?

ちなみに私は毎日夕飯の配膳時間が終わったら自分の部屋に追いやられます。

んとねー私の部屋は屋根裏ね。あ、もう言ったっけ?
2階がうちのお客さんたちが泊まる部屋なんだけど、2階の奥を区切ってあってね、ドアで仕切ってお父さんと大兄ちゃん、サム兄ちゃん、お姉ちゃんの部屋があるの。
でね私の部屋へは梯子で昇るんだけど、毎日その梯子を片付けられちゃうから朝まで降りられなくなちゃんだ‥‥‥

男どもはみんな防犯大事、天使大事って言って守ってるつもりなんだけど、ちょっと不便だよね。

というわけで!

今日も夕飯の配膳時間が終わったら、私は屋根裏に押し込まれて、梯子を外されてしまった‥‥‥
夜に大事な予定があるっていうのにさ。

でも私はお姉ちゃんを守るため、そして何より恋人を見つけてあげるため、プロに会いに行くため、用意しておいたロープをスルスルと降ろし、無事屋根裏部屋の脱出成功!

髪の毛を見られたらお兄ちゃんたちに怒られるから頭からすっぽりストールをかぶり、顔をハンカチで覆うと酒場と化した食堂に潜入した。

酒場はワイワイガヤガヤ。みんなエールを飲んで上機嫌に喋ってる。ちょっと‥‥‥というかかなり酒臭い。
私は目立たないように体を低くするとお目当のお姉さんがいないかキョロキョロした。

いた!
店の奥中央にキレイどころが3人!みんなセクシーだしなんかキレイな気がする。頑張って調査します。
げ、やばいサム兄ちゃんが料理運んできた。

私は体を低くしてハイハイするようにしてテーブルの影を進んだ。
「なんだあ?」酔っ払いが私の方を見る。
見ないでくださーい!用事ありませーん。と心で訴える。
酔っ払いは「変なのがいる」と呟くと首を振ってまた酒を飲み始めた。
やばいやばい。私はまた息を殺してお姉さんたちの方へゆっくりコソコソと近寄っていった。

あれ、一人いなくなっちゃった。
お姉さんの腰に手を当てた冒険者が酒場を出て行った。
ありゃまー、お見事。

ちょっと早くしないといなくなっちゃう!

私は高速ハイハイで奥まで進んだ。今度は大兄ちゃんが厨房から出てきた。なんか、お客さんたちをとりなしてるみたい。喧嘩になりかけてたお客さんたちは大兄ちゃんのとりなしで静かになった。

あと少し、何とかお姉さんまでたどり着かないと!頑張って私!

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