天使のように可愛い私と可愛くないお姉ちゃんの話

藍音

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15 手を出したとは?

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「だ、出してません!」グレッグが大慌てで答える。
「だ、出してませんからっ、まだ!」
「へぇ‥‥‥?」

なんか、空気が冷たい。あれ、ゆでダコになってたサム兄ちゃんまで冷気放ってる?

えー?でもさー、グレッグさっき手を出したよね?手を出して私の手を握らなかったけ?
それって手を出したって言うんじゃない?
おっかしいの。

でも、なんとなく‥‥‥黙ってた方がいいのかな?

「なんでこんな時間にうちの天使といるんだぁ?うちの天使はとっくに部屋に入っている時間なのに、おかしいよなぁあ?」
お父さんが圧を放つ。

「うちの天使はまだ未成年だってこと、十分にわかってんだろぉ?」

シュッツ!サム兄ちゃんがナイフを装着した音がする。

「ちょちょちょちょっと待ってよ!」私は慌ててお父さんとグレッグの間に割り込んだ。
「グレッグは助けてくれたんだよ?」

「部屋にいるはずのお前をどうやって助けるんだよ?」後ろからサム兄ちゃんの声が聞こえる。

「だから!酒場に来ているお姉さんと間違えられて‥‥‥」
「はああああ?」
「なんだとお!」
「どこのどいつだ!」
お父さんとお兄ちゃん達が同時に叫ぶ。いつの間にやら大兄ちゃんまで参戦している。

「どう言うことだ!」お父さんの雷が落ちた。こわいよー
「理、理由があったのぉぉぉ」
「どんな理由があったら娼婦に間違えられるんだ!」うえーん。

私はすっかり涙目になりオロオロしてしまい、どっからどう説明したらいいのか分からなくなって、あっちをみたり、こっちをみたり目を泳がせた。
グレッグと目が合う。グレッグは私に黙ってろと目で合図すると、しっかり背筋を伸ばした。

「親父さん。俺も、クラリスも、何も、恥ずかしいことや後ろ暗いことはしていません。きちんと説明できます。
クラリスが未成年なことだって理解しています。今日はクラリスが困っていたから、ちょっと助けただけなんです。
だから、今日のところは許してあげてください。」

お父さんはため息をつくと、諦めたように言った。

「分かった。俺だって長年の経験から嘘をついてるかどうかはわかるからな。
まあ、とりあえず、いい。みんな朝の仕事があるからな。
お前も明日の朝食後に、食堂に来い。隊長にもお前が参加できるように話をつけてやる」
「大丈夫です、自分で‥‥‥」

「はい‥‥‥」

なんだか空気が熱くなったり寒くなったり忙しい。

「おい、ゼン。」お父さんは大兄ちゃんに向かって顎をしゃくった。
「クラリスを部屋まで送ってやれ、俺はここでこいつらを見張ってるからな」
そう言うと、腕組みしてふんっと仁王立ちになった。お父さんは大きいし筋肉質だから、こうすると迫力あるんだよね。

「クラリス、おいで」大兄ちゃんに優しく促され、私は自分の部屋に戻った。
その後のことはよく覚えていない。
1日に起こったことの量が多すぎて私の頭は完全にオーバーヒートしちゃったみたい。

部屋のベッドにごろっと横たわるとそのまま、夢も見ないで眠ってしまったんだ。


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