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第八十話 殺るか殺られるか
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男が、割れた瓶を振りかぶった。
簡単によけられるスピードだったが、よければエミリアに当たる。
リオは、思わず左腕で頭をかばった。
強い力で振り下ろされた凶器は、リオの左腕の骨を砕いた。
「ぐっ・・・・!!」
かつて痛めた左手に激痛が走る。
だが、ひるんだら殺されてしまう。
リオは男のズボンのベルトを右手でつかみ、横に投げつける。
同時にもう一人の男がナイフで襲い掛かってきた。
(逃げられない・・・!!)
逃げれば、エミリアを傷つけることになる。
とっさにけがをしていない方の足でナイフを持った手を蹴り飛ばす。
「ぎゃっ」
強い力にナイフが吹っ飛び、男が一瞬ひるんだ。
「おい、お前ら。いつまで手間取っているんだ。たかがガキひとり、とっとと始末できないでどうするんだ」
さっきリオの足にナイフを突きつけた男が、立ちあがった。
本当はこの男が首謀者だったらしい。
「さっさと片付けろ」
(殺すしかない)
リオの腹が決まった。
もっと早く、決断すべきだった。
リオがゆらりと立ちあがり、三人の男たちがじりじりと間合いを詰めてきた。
暗く底光りする目には、リオの決意が現れている。
男たちがリオにとびかかった瞬間、リオは素早く身をかわしながら、一人の目をつぶし、もう一人のみぞおちにこぶしを入れた。
だが、その瞬間、後ろから鋭い悲鳴が上がった。
「きゃあああ、なに、なんなの?やめて!!!」
振り返ると、もう一人のリーダー格の男がエミリアにのしかかっていた。
「お嬢様!」
気がそれた瞬間、リオがみぞおちを打った男が、リオを後ろから羽交い絞めにした。
「お前の相手は俺だろ」
「放せ!!」
リオがもがくと、さっき目つぶしされた男が、リオの頬を張った。
エミリアのドレスが引き裂かれ、絹の避ける音が響く。
「いや、いや、やめて、いやーーー!!!」
エミリアが手足をばたつかせると、エミリアにのしかかっている男は「うるせえ」と鋭く言い、エミリアを殴りつけた。
「やめろ!お嬢様に手を出すな!」
「お前はこっちだろ」
男がリオの腹を殴りつけた。部屋の中ではエミリアの悲鳴と鳴き声が響き、殴られるよりもはるかにつらい。羽交い絞めにされたリオには手も足も出ない。
右足からの出血はリオの体力を奪い、左腕も折られてしまった。
体温が奪われ、身体が重くなっていく。
でも、ここで諦めたら、お嬢様が・・・
「邪魔しやがって。クソガキが」
男がまたリオの腹にこぶしを叩き込み、体の中から血の味がした。
「助けて、リオ!」
エミリアが泣きながら助けを求め、リオははっとした。
早く助けなければ。
「うぉぉ!」
大声で気合を入れ、捨て身で関節を外し、大男の拘束から逃れると、さっきリオを殴った男のあごに頭突きをくらわし、後ろ回し蹴りで大男を床に沈めた。そのままの勢いでエミリアにのしかかっている男に体当たりする。がたんと大きな音とともに床に打ち付けられる身体。リオは目の前の男の気道を両手の親指で押さえつけた。
「ぐぅ・・・こいつを殺せ!」
男が叫び、リオを突き飛ばした瞬間、ドアがばん!と開いた。
***********
「リオ!」
アウレリオの視界に映るのは、血のにおいと乱れた室内。
倒れている男たちと、別の男ともみ合うリオ。
一瞬で何があったのか見て取ると、部屋の端で呻いている男二人を容赦なく蹴り、意識を失わせ、リオに襲い掛かろうとしている男を片手で投げ飛ばした。けた違いに強い力で壁にたたきつけられ、男の身体はゴムまりのように跳ね、床に崩れ落ちた。
「何があった」
アウレリオがリオの横に膝をついた。
その顔は蒼白で、目は金色に染まっている。
「アウレリオ様・・・すみません。俺、最初から殺すべきだったのに、読み誤りました」
そう答えたリオは血まみれだった。
「怪我をしてるじゃないか」
アウレリオはリオの傷口に触れないよう、そっと腕をさすり、顔をしかめた。
「ひどい傷だ・・・待ってろ、今手当をしてやる」
「俺より、エミリア様を」
「エミリア?」
アウレリオが顔を上げると、エミリアが壁際で膝を抱え、小さく震えていた。
着衣はひどく乱れ、髪もぐしゃぐしゃだ。
かつてドレスだった残骸が、床に散らばり、丁寧に縫い付けられた白い花も血に染まっていた。
そして、エミリアも殴られたのか、頬は赤く腫れあがり、唇からは血がにじんでいた。
アウレリオは黙って立ちあがると、部屋の隅にあった毛布をエミリアに渡した。
エミリアは真っ青になって震えながら、毛布を体にきつく巻き付け、しくしくと泣き出した。
アウレリオは、エミリアをちらりと見ると、リオに視線を戻した。
リオもしょんぼりとうなだれている。
第三王女につかまらなければ、もっと早く駆けつけることができたのに。
「・・・参ったな。とりあえず、二人とも医者に見せないと」
「俺は大丈夫です。お嬢様を」
「リオを先に」
「・・・黙っててください。ただでさえ、頭が痛いのに」
アウレリオは額に手を当てた。
王宮でこんな騒ぎを起こしては、もう結婚の許可は難しいだろう。そもそも、純潔が保たれたのかもわからない。
だが、まずはリオの手当てが先だ。
先ほどズボンの隠しにナイフを入れたことを思い出し、シーツを引き裂いて簡易な包帯を作る。
無言でリオの足を止血し、腕に添え木を充て、残りの包帯で床に伸びている男たちの腕と足を縛り上げた。
「リオ、背中に乗れ」
アウレリオがリオに背中を向けると、リオはエミリアが了承の意味で頷いたのを確認してから、アウレリオの肩に両手をのせる。
「リオ、安心して、あなたのおかげで汚されずに済んだから。ドレスはぼろぼろにされたけど、でも・・・」
「本当ですか?それはよかった」
リオは小さくつぶやくと、そのまま意識を失ってしまった。
もう、体力の限界だった。
「まずは医者に」
リオを背負ったアウレリオがエミリアを振り返ると同時に、戸口から鋭い悲鳴が響いた。
扉は大きく開け放たれ、第三王女とその取り巻きたちが蒼白な顔をして、息をのんでいた。
************
お読みいただきまして、ありがとうございました。
♡と広告も、いつもありがとうございます。
本当に感謝しています。
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リオは、思わず左腕で頭をかばった。
強い力で振り下ろされた凶器は、リオの左腕の骨を砕いた。
「ぐっ・・・・!!」
かつて痛めた左手に激痛が走る。
だが、ひるんだら殺されてしまう。
リオは男のズボンのベルトを右手でつかみ、横に投げつける。
同時にもう一人の男がナイフで襲い掛かってきた。
(逃げられない・・・!!)
逃げれば、エミリアを傷つけることになる。
とっさにけがをしていない方の足でナイフを持った手を蹴り飛ばす。
「ぎゃっ」
強い力にナイフが吹っ飛び、男が一瞬ひるんだ。
「おい、お前ら。いつまで手間取っているんだ。たかがガキひとり、とっとと始末できないでどうするんだ」
さっきリオの足にナイフを突きつけた男が、立ちあがった。
本当はこの男が首謀者だったらしい。
「さっさと片付けろ」
(殺すしかない)
リオの腹が決まった。
もっと早く、決断すべきだった。
リオがゆらりと立ちあがり、三人の男たちがじりじりと間合いを詰めてきた。
暗く底光りする目には、リオの決意が現れている。
男たちがリオにとびかかった瞬間、リオは素早く身をかわしながら、一人の目をつぶし、もう一人のみぞおちにこぶしを入れた。
だが、その瞬間、後ろから鋭い悲鳴が上がった。
「きゃあああ、なに、なんなの?やめて!!!」
振り返ると、もう一人のリーダー格の男がエミリアにのしかかっていた。
「お嬢様!」
気がそれた瞬間、リオがみぞおちを打った男が、リオを後ろから羽交い絞めにした。
「お前の相手は俺だろ」
「放せ!!」
リオがもがくと、さっき目つぶしされた男が、リオの頬を張った。
エミリアのドレスが引き裂かれ、絹の避ける音が響く。
「いや、いや、やめて、いやーーー!!!」
エミリアが手足をばたつかせると、エミリアにのしかかっている男は「うるせえ」と鋭く言い、エミリアを殴りつけた。
「やめろ!お嬢様に手を出すな!」
「お前はこっちだろ」
男がリオの腹を殴りつけた。部屋の中ではエミリアの悲鳴と鳴き声が響き、殴られるよりもはるかにつらい。羽交い絞めにされたリオには手も足も出ない。
右足からの出血はリオの体力を奪い、左腕も折られてしまった。
体温が奪われ、身体が重くなっていく。
でも、ここで諦めたら、お嬢様が・・・
「邪魔しやがって。クソガキが」
男がまたリオの腹にこぶしを叩き込み、体の中から血の味がした。
「助けて、リオ!」
エミリアが泣きながら助けを求め、リオははっとした。
早く助けなければ。
「うぉぉ!」
大声で気合を入れ、捨て身で関節を外し、大男の拘束から逃れると、さっきリオを殴った男のあごに頭突きをくらわし、後ろ回し蹴りで大男を床に沈めた。そのままの勢いでエミリアにのしかかっている男に体当たりする。がたんと大きな音とともに床に打ち付けられる身体。リオは目の前の男の気道を両手の親指で押さえつけた。
「ぐぅ・・・こいつを殺せ!」
男が叫び、リオを突き飛ばした瞬間、ドアがばん!と開いた。
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「リオ!」
アウレリオの視界に映るのは、血のにおいと乱れた室内。
倒れている男たちと、別の男ともみ合うリオ。
一瞬で何があったのか見て取ると、部屋の端で呻いている男二人を容赦なく蹴り、意識を失わせ、リオに襲い掛かろうとしている男を片手で投げ飛ばした。けた違いに強い力で壁にたたきつけられ、男の身体はゴムまりのように跳ね、床に崩れ落ちた。
「何があった」
アウレリオがリオの横に膝をついた。
その顔は蒼白で、目は金色に染まっている。
「アウレリオ様・・・すみません。俺、最初から殺すべきだったのに、読み誤りました」
そう答えたリオは血まみれだった。
「怪我をしてるじゃないか」
アウレリオはリオの傷口に触れないよう、そっと腕をさすり、顔をしかめた。
「ひどい傷だ・・・待ってろ、今手当をしてやる」
「俺より、エミリア様を」
「エミリア?」
アウレリオが顔を上げると、エミリアが壁際で膝を抱え、小さく震えていた。
着衣はひどく乱れ、髪もぐしゃぐしゃだ。
かつてドレスだった残骸が、床に散らばり、丁寧に縫い付けられた白い花も血に染まっていた。
そして、エミリアも殴られたのか、頬は赤く腫れあがり、唇からは血がにじんでいた。
アウレリオは黙って立ちあがると、部屋の隅にあった毛布をエミリアに渡した。
エミリアは真っ青になって震えながら、毛布を体にきつく巻き付け、しくしくと泣き出した。
アウレリオは、エミリアをちらりと見ると、リオに視線を戻した。
リオもしょんぼりとうなだれている。
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「リオを先に」
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王宮でこんな騒ぎを起こしては、もう結婚の許可は難しいだろう。そもそも、純潔が保たれたのかもわからない。
だが、まずはリオの手当てが先だ。
先ほどズボンの隠しにナイフを入れたことを思い出し、シーツを引き裂いて簡易な包帯を作る。
無言でリオの足を止血し、腕に添え木を充て、残りの包帯で床に伸びている男たちの腕と足を縛り上げた。
「リオ、背中に乗れ」
アウレリオがリオに背中を向けると、リオはエミリアが了承の意味で頷いたのを確認してから、アウレリオの肩に両手をのせる。
「リオ、安心して、あなたのおかげで汚されずに済んだから。ドレスはぼろぼろにされたけど、でも・・・」
「本当ですか?それはよかった」
リオは小さくつぶやくと、そのまま意識を失ってしまった。
もう、体力の限界だった。
「まずは医者に」
リオを背負ったアウレリオがエミリアを振り返ると同時に、戸口から鋭い悲鳴が響いた。
扉は大きく開け放たれ、第三王女とその取り巻きたちが蒼白な顔をして、息をのんでいた。
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