腐女子が異世界に転生してモブチートで暴れまわる話

３ 転生先は玉道学圏

どすん。
いったぁ～～

お尻からどこかの植え込みの上に容赦無く落ちた。
もしかして、石畳直撃じゃないってところはBL神様の思いやりですの？

「楽しむがよい」

かすかな笑いに乗ってBL神様の声が聞こえてきた。

私はキョロキョロと辺りを見回した。
ここは一体・・・欲張りすぎてどこに落とされたのかすらわかりませんわ。

あった！

「玉道学園」

入り口にある立派な石柱には、大きな看板がかかっていた。

おーどー…いえ玉道学園？
王道・・・ではありませんのね。
たまみち？
それともぎょくどう？

玉？なんで玉？
たま？ぎょく？タマ？！タマタマ？！
まさか念友？念友ってやつですの？衆道…それは武士の嗜み。昔から一定数の女子を滾らせてきたに違いありません。あちこちにいるすでに亡者となった先輩たちとオフ会ができてしまいそうですわ。
そ、そういうことですの？！思わず前のめりになってしまいます！

げふんげふん

まあ、そんなお下劣なジョークをBL神様がおかましになるはずないでしょう？
ふっ。落ち着きなさい私。

そもそも、異世界なのになぜ日本語・・・いえ、無用なツッコミでしたわ。失礼。
キラキラとした美少年たちが笑いさざめきながら門から入っていく姿が見えます。
王道学園だからここは日本？
まあ、どうでもいいことですわ。楽しむことだけが礼儀の世界に違いありません。

でも、玉・・・はっ！もしや。
私はこの世界に送り込まれるときに聞こえてきたBL神様の呆れ声を思い出した。

「王道学園は男子校」

そうです。王道学園とは絶海の孤島などにある良家の男子のみが集まる全寮制の学校。
一体なんで絶海の孤島？というツッコミは固く禁止されています。
ちなみに絶海の孤島のくせに、ネット環境完備ですわ。当然。
あ、もちろんテレビだってBS以外も映りますのよ？七不思議の一つと言われています。
トイレは「ぽっとん」じゃないのかって？下水処理場がないから？
ぶ、無礼者！
美しい方々はトイレには行かないものです。
えー、そう決まってますから！
憲法の前文に書いてあるでしょ！読んだことないんですの！？

ごっほん。話がそれましたわ。

私、あ、見えないかもしれませんけど、灰色の制服を着ております。
それはあそこらへんを歩いているキラキラした男子と同じ制服ですの。
女子なのでスカートですけど。
ということは、つまり！
男子校のはずなのに女子が無理やり入学してしまった。
そのために、「王道学園」の看板を下げなければならなくなってしまった。
でももったいないから、点を足して「玉道学園」として再出発したに違いありません！

もしかしたら、時空が単に歪んでしまっただけかもしれませんけど。まあ、その可能性も大ですわね。

そういえば私、制服だけではなく、手足も心なしか灰色がかっているような気がします。
モブ？モブに転生したってことでよろしいんですの？
こ、こ、これはもしや覗き放題？
イエス！BL神様！！さすがわかってらっしゃる！！

これはきっと神のくださったチートに違いありません。
私は上機嫌でスキップしながら、麗しい受けちゃんやイケてる攻め様を探しにいくことにいたしました。

校門を入り、校庭に向かうと、なんかさっきからふわふわと空に矢印が飛んでいるような・・・？

疲れ目でしょうか。
毎晩聖書びーえるを読みすぎたせいかもしれませんね。
目をゴシゴシこすってみます。
やっぱり見えますわね。なんでしょう？

私が首を傾げていると、雷のように突然の啓示がありました。

「近くに受けがいる」

はっ！BLセンサーが作動しましたわ！チート？もしかして、これもチートですの？
誰からも認識されない、覗き見し放題のチートの他にもチートを授けていただけたんですの？
BL神様！次回はいちまんえん納めさせていただきます！！

まるで妖怪アンテナのように私の髪はふわふわと浮き上がった。
そして、うようよと四方八方を探すように髪の毛の先があっちこっちを指し示しだした。
あ、見えないかもしれませんけど、私ロングヘアーですの。
この光景は結構壮観ですわ。うふふ。

「受けはどこだー」

念を込めてみます。

「はっ！いた！あっちだ！！」

私は一番太い髪束の指し示す校庭に向かって、全速力で走り出した。

「ぎゃあー妖怪だーーー！！」
「ひいいいいい」
「あああ～～、腰が抜けた～～」

遠くから悲鳴が聞こえてきた。

まあ、皆さん騒がしいですわよ？
この世界は美形のみ正義。モブはすっこんでらっしゃい？