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32. この幸せを守るために
しおりを挟む「産まれました。母子ともにお元気ですよ。」
看護師さんの声が廊下に響いた。
「「「「「良かった~」」」」」
賢人さんと賢人さんのご両親と私の両親がまだかまだかと出産を分娩室の前で待っていたらしです。
「「オギャア!!」」
「元気な鳴き声が聞こえるわね。」
「本当に…。双子と聞いた時はどうなることかと思いましたわ。」
お互いの母親同士が落ち着いて話をしていたらしいのですが私の父は…。
「菫~!!大丈夫か~?!」
…と号泣していたらしいです。その背中を優しく賢人さんのお義父様がさすって下さっていたとか…。
お恥ずかしい限りです。
「賢人、名前は自分達で決めるって言っていたけど…どうなったの?」
そうなのです。最初は誰が赤ちゃんの名前をつけるかでもめていたんですよね。なので私達がつけます!と宣言したのです。
「私は双子ちゃんなのだからお揃いっぽい名前が良いと思うわ。」
「そうですわね。」
母親同士は気があっているみたいなのですが…。
「いや!ここはお互いの両親の名前の漢字一文字をとった方が良いだろ。」
「そうですな。特に男の子はそうした方が良いでしょうな。」
父親同士も気があっているみたいですね。ですが母達と意見は折り合わないんですよ。いつもここから揉めるんです。
「古い事を…。それは菫の時にも却下したでしょう。まだ諦めていなかったの?」
私の母が父を攻撃します。
「あら、奥様の所もそうでしたの?うちもそうでしたわ。」
賢人さんの所も揉めていたんですか…。
「「男の人ってどこも一緒なのかしら…。」」
「まあまあ…。父さん達も母さん達もそのくらいにしておいてください。名前は菫ちゃんと僕で決めましたから大丈夫ですよ。」
「「「「それで!?」」」」
両親達は教えられていないので早く知りたくて仕方がないみたいです。
「菫ちゃんが出てきてからですよ。まずは産まれた赤ちゃんの顔を見に行きましょう。」
「「「「ええええ~!!!!」」」」
両親達は不満に思いながらも孫の顔は見たかったらしく大人しく賢人さんの後をついてきたそうです。
「「「「か、可愛い~!!!!」」」」
「菫さんに似ているわね。」
「いえ、賢人さんに似てますわ。」
「菫に似た孫…。心配だ。」
「確かに男の子の方は賢人の赤ちゃんの時に似ているかもしれない。」
それぞれの両親の感想は違ったみたいですが、暫くは孫の顔を見るためにその場所から離れなかったみたいです。
両家とも初孫ですからね。可愛くて仕方がないみたいです。
私が目を覚ますと部屋には両家とも揃っている状態てした。名前が知りたくて私が目覚めるのを待っていたらしいです。
「やっと目が覚めたのね。大丈夫?」
「菫~!痛いか?大丈夫か?」
お父様…。
「さっ、早く教えて。菫さんは目が覚めたわよ。」
賢人さんがお義母様に急かされています。
「そんなに急かさなくても良いだろ。」
皆が賢人さんをジーと見ています。
「わかった、わかりました。発表します。」
用意していた双子の名前を書いた紙を鞄から取り出しました。
"瑠璃(るり)と凛璃(りり)"
「凛璃が男の子で瑠璃が女の子だよ。」
「りーちゃんとるーちゃんね。可愛いじゃない。」
「でも名前を書くのが大変そうだな。」
「男親ってなんでそんな事が気になるの?可愛いから良いじゃない。」
親達は何やら孫の名前で揉めていますが、ひとまず名前を御披露目したので一段落ですね。
「菫ちゃん…。大丈夫?痛くない?」
賢人さんが私の手を優しく握ります。
「ええ。」
「ありがとうね。あんな可愛い子達の父親にしてくれて…感謝しかないよ。」
賢人さんは私の手の甲にキスをしています。たまに外国人なのかなと思う時があるんですよね。
「私こそ…いつも感謝しています。この幸せがあるのは賢人さんのおかげですから。」
2人笑顔で見つめあっていると両親達が咳払いをし始めました。
「おい、私達がいることを忘れてないか?」
お義父様が賢人さんの肩を叩いて恥ずかしそうにしています。
…いるのを忘れてましたね。
すっかり2人の世界でした。
「まあ、あれだ。孫の顔も見れたし今日はもう帰る。また明日も顔を見に来る。」
「そうよね~。今から孫にプレゼントを買いに行かないといけないし。」
「あら、奥様それでしたら一緒にいきませんか?」
「嫌な予感しかしない…。」
お義父様が小さく呟いた声が最後に聞こえてきましたが両親達は賑やかに部屋を出ていきました。
「やっと2人になれた。」
賢人さんはやれやれといった感じですね。
「いつも2人で過ごす事が多いのに、2人になりたいのですか?」
「当たり前だよ。菫ちゃんの周りには君を誘惑しようとする人達が大勢いるからね。僕はいつも気が抜けないんだ。」
真剣に話していますが誘惑?なんてされた覚えがありませんよ。
「誘惑ですか?」
「は~。菫ちゃんのそういう所も好きだけどね、もう少し自覚した方が良いかな。周りの男達は君と近づきたいとあの手この手を使って誘惑してるんだけど菫ちゃんは気がついていないからね…。まあ、気がつく前に僕が蹴散らしているのもあるけど…。」
最後の方に物騒な言葉が聞こえませんでしたか?
「…そうなんですか?」
「そうなんです。」
「「プッ…。」」
2人で笑ってしまいました。
「そうだ!今度から菫ちゃんに"誘惑はご遠慮下さい!"って張り紙をしておこうかな。」
「張り紙ですか!?それはちょっと…。」
「だって僕には守らないといけない人が増えたからね。忙しいんだ。」
凛璃と瑠璃の事ですね。
「えっと…自分で気を付けます。」
「本当に?」
「はい。」
「じゃあ、約束のキスしようか。如何なる誘惑にも応じませんって誓ってくれるかな。」
何ですかそれ?言えば良いのですか?
「如何なる誘惑にも応じません?」
言い終わると賢人さんが私にキスをしてきました。
「誓いのキスだよ。僕も菫ちゃん以外の誘惑には応じないよ。菫ちゃんの誘惑は大歓迎だけどね。」
ウインクしながら賢人さんが笑っています。
これからの長い人生にはきっと色々な事が起きると思いますが賢人さんとならこうやって笑いあいながら乗り越えていけるんだろうとこの時不意に感じました。
「幸せですね…。」
「そうだね。これからは家族も増えて幸せも増えるよ。楽しみだね。」
「そうですね。」
もちろん苦労も増えるかもしれませんが賢人さんが言うと何とかなると思えるから不思議です。
人を愛する事ができて、家族が出来て、幸せが増えて…苦労も様々な誘惑も多いかもしれませんが何があっても一生懸命生に生きるだけです!
この幸せを守るために!
これで最終話になります。
最後まで読んでくださった方に感謝します。
また、短編で瑠璃と凛璃の成長した話しでも書こうかと思っています。
その時はまた読んで頂けると嬉しいです。
本当にありがとうございました。
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