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28. 誕生

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サファイアが黒繭状態になってから丸1日が経ったが未だにサファイアは黒繭に閉じ込められたままだった。

リルによればサファイアの心音は中から聞こえているから大丈夫だと言われた。

リルを信じない訳ではないが、この目でサファイアの無事をを確認したい!

昼になっても黒繭に変化はない。

こうなったら、アフロディーテ様に協力してもらおうかな…。

そう言えばいつも用もなくサファイアに会いに我が家にやって来ていた神様達の姿を最近見ないな。

肝心な時になぜいない!

僕が少し神様に怒りを感じて窓の外を見ていたら、後ろから変な音がした。

ビキッピキ!

後ろを振り返るとサファイアを包んでいた黒繭にヒビが入っている。

ソファーでうたた寝していたリルも目を覚ました。

「凄い魔力が溢れている…」

驚いた顔をして黒繭を見ている。

次の瞬間にまた強い白い光が部屋中を包んだ。

「眩しくて目を開けられない!どうなっているんだ?!サファイア!サファイアは無事なのか?!」

叫びながらサファイアの寝ていたベッドの方に手探りで進む。

白い光が治まってきた。

ベッドの脇まで這いながらたどり着き見たものは、黒繭の割れた欠片と…。

「サファイア…そして…お前は…」

僕は自分の目を疑った…幻か?

「はじめまちて…サファルでしゅ」

僕が見たのは寝ているサファイアの隣に裸の赤ん坊がちょこんと座っているというありえない光景だった。

「「は??!!」」

僕とリルの驚いた声が響く。

いかん、驚いている場合ではない!

「誰かすぐに医者を連れて来い!それと赤子用の服を持って来てくれ!」

僕は近くにあったタオルをサファルにかけた。

「ありがとうごじゃいます…」

「本当にサファルなのか?」

だって信じられない、信じられなくて当たり前だろ?

繭が割れたら赤ちゃんが生まれました…なんて。

でも、確かにサファイアの大きくなっていたお腹はへこんでいるし、赤ん坊が目の前にいる。

「はいでしゅ。かあさまの…いのちがきけんなので…でてきました」

「サファイアの命が危険だったのか…」

「おい、アデル!何で赤ちゃんが話してるんだ!何で何事もないかのようにアデルも普通に話してるんだよ!?」

驚いて固まっていたリルが正気を取り戻し大声をあげている。

まあ、確かに不思議だよな。

生まれたばかりの赤ん坊と話す父親。

「ああ、そうだな…サファル今から人が大勢来るからしばらく話せないふりをしろ。赤ちゃんらしくな…」

僕はサファルをサファイアの横に寝かした。

「はいでしゅ…」

「な…な…だから何でだよ~!?」

興奮するリルをソファーに座らせ説明している時に医者や侍女達が大勢やって来た。

サファイアを見た途端に全員が絶句…。

「「「「え!?」」」」

まあ、何とかなるかな…?


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