42 / 86
42. 噂には疎い
しおりを挟む「八岐~!新入生歓迎会が今度あるんだがそれについて話し合いが行われるから放課後参加してこいよ。」
「はい。」
すっかり委員長として馴染んできた俺…。何かな…。
「新入生歓迎会ってどんな感じなんだろうな。楽しみだな。」
佐藤くんは気楽で良いよな。俺はクラスの代表として上級生達と話し合わないといけないんだよ…。考えただけでも疲れるよ。
「僕の兄から聞いたけど美味しい物もいっぱい食べられるし、いろんな人と知り合いになれるから楽しいって言っていたよ。」
そう話すのは最近友達になった大谷 蘭丸(おおたに らんまる)くんだ。背が低くてよく少女に間違えられるくらいの美少年。いつも長い桃色の髪を後ろでひとつにまとめている。
「そっか、大谷くんはお兄さんがこの学校に通っていたんだったね。」
「うん。去年卒業して、今は神官として働いているよ。」
お兄さんはコースが違うんだね。
「美味しい物…楽しみだな。ここの食事は美味しいからな。」
最近分かった事、佐藤くんは食いしん坊で、しかも大食いだということだ。本当にビックリするくらい食べるんだよ。僕の2倍、いや3倍は食べるんだよ。よく太らないなと感心してしまうほどだ。まあ、運動もしているみたいだけどね。
「佐藤くんは本当に食べるのが好きなんだね。」
「おう。食べるのは楽しいな。神の導きがなければきっと食に関する仕事についていたと思うくらいにな。」
そうなんだ…。神の導きは好きなことに関係した仕事になるのかと思っていたけどそうでもないんだな。
「今年は隣国の皇族もいらっしゃるから、かなりのご馳走が出ると思うよ。」
大谷くん、物知りだね。情報屋なの?
「隣国の皇族が何で来るんだ?」
佐藤くんはそういうの疎いよね。
「知らないの?隣のクラスに王子が留学生としていらっしゃるんだよ。」
「「え!!」」
佐藤くんと声がかぶっちゃったよ。
「2人とも知らなかったの?珍しいね。多分皆知っているよ。」
どうやら俺達は情報に疎すぎるらしい。
「わざわざこの学校に来る価値があるのか?」
佐藤くん…ハッキリ言うね。嫌いじゃないよ。
「王子って言っても第3王子だから、成人したら教会にでも入るんじゃないかな?隣国には神官の学校はないから来たんだろうね。」
本当によく知っているな。
そうか、第3王子にもなると将来をよく考えないといけないよな。賢い王子だということか…。
「そうなると益々楽しみだな。」
佐藤くんの目が輝いている。ヨダレが出てるよ。もう新入生歓迎会じゃなくて食べることのみに集中してるよね。
「取り敢えず行かないといけないから話し合いに行って来るよ。」
俺は重い腰を上げて動き出した。
「おっ、美味しいご馳走を頼んだぞ!」
いやいや佐藤くん、一年生に権限はないと思うよ。
「寮で待っているから何を話したのかを教えてね。」
大谷くんはやっぱり情報が欲しいんだね。
「分かったよ。じゃあ、行ってくるね。」
「「いってらっしゃい!!」」
二人は元気よく送り出してくれた。気は重たいが行くしかないよな~。重たい足取りで生徒会会議室に向かう。
生徒会会議室が見えたと思ったら扉の前でじっとして動かない生徒がいるのも見えた。
「もしかして…一年生の神官クラスの代表の子かな?」
「は、はい!」
緊張しているらしく声が裏返っている。だけど、俺のスカーフを見て一年生だと確認すると態度が変わった。
「なんだよ~、同じ一年生じゃん。緊張して損したじゃないか。誰だよお前…。」
グレイの髪をしたつり目の男の子はかなり感じが悪かった。
「僕はもうひとつのクラスの代表の八岐 竜です。よろしくね。」
一応、同級生だから感じよく挨拶はしてみた。
「あっそう。じゃあ、お前が先に部屋に入れよ。」
何で?しかも挨拶したのに返答なしかよ!失礼な奴だな。でもケンカをするわけにもいかないし、ここはとぼけてみるとしよう。
「え…なんで?先に君が到着していたんだから君から入れば良いよ。」
俺は笑顔で言ってやった。
「はあ?お前…俺の言うことが聞けないっていうのか。」
こいつ…本当に嫌な奴だな。何様のつもりなんだよ。と思いつつも笑顔は崩さす、何も答えずにいると勝手に相手が話をはじめてしまった。
「お前…俺の事を知らないのか?まさかそんなはずは無いよな。」
知らないものは知らないとしか言いようがない。って言うかそんなに有名な人なのか?
ここはハッキリと言っておいた方が良いな。
「知りません。」
俺が答えた途端に相手の顔色が変わってきた。あれ?怒ってる?
「お前…俺を侮辱しているのか?それともからかっているのか?どちらにしても無礼だぞ!」
顔を知らないだけで無礼になるの?おかしくない?そもそも名前も聞いていないしね。
すると外が騒がしいと感じたのか生徒会会議室の扉が開いて中から知っている顔が出てきた。
「声がすると思ったら貴方でしたか…ペリー王子」
えええ~!!!この嫌な奴が噂の隣国の王子!?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる