龍神様に頼まれて龍使い見習い始めました

縁 遊

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57. 佐藤くんのお兄さん

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「うおおおぉぉぉーーー!!!」

 佐藤くんが雄叫びをあげながら夕食を食べている。目の前にはカツカレーの大盛が2人前、ミートソーススパゲティーが2人前、豚の生姜焼きが2人前、プリン5個が並んでいる。

「やる気だね。」

雄叫びをあげる佐藤くんの前で冷静に夕食を食べている大谷くん。さすがですね。

 昨日、佐藤くんに大食い大会の事を伝えた。佐藤くんは聞いた直後はあまり反応が無かったんだが、優勝賞品を聞いた途端に目の色が変わった。



「本当に優勝したら食堂食べ放題チケットがもらえるんだよな?!」

 口に大量のミートソーススパゲティーを頬張りながら鋭い目線を俺に送っている。

 そんなに食堂食べ放題チケットが欲しいのか…。

「うん、本当だよ。」

「よっしゃあーー!!!」

 佐藤くんのミートソーススパゲティーを食べる速度があがった。口のまわりには大量のミートソースがついている。

 気にならないのかな…?

「口のまわりにミートソースがついているよ。」

 それを冷静に指摘する大谷くんは流石です。

「知ってる。今は見た目より訓練優先だ!」

 知っていたんだ。これって大食い大会に向けた訓練のつもりだったんだね。

「ねえ八岐くん、その大食い大会って参加者は多いの?」

 大谷くんは違うところが気になっているみたい。

「今のところは10人くらいの申し込みがあったくらいかな。締め切りまではもう少し日にちがあるから増えると思うけど…。」

 …というか、増えて欲しいんだよ。その方が龍達も集まってくれそうだし。

「取材ってできるかな?」

 ああ、新聞部の活動として記事にするつもりなのか。

「たぶん大丈夫だと思うけど、会長に聞いてみてから返事しても良いかな。」

「了解。じゃあ、参加者に先に意気込みを聞いておくよ。」

 あれ?

 俺まだ参加者の名前とか教えてないよね?

「参加者を知ってるの?」

 大谷くんはフフッと笑って食堂を見渡した。俺はその目線を追って見る。

「なるほどな…。」

 今までは佐藤くんの食べっぷりにばかり目をとられて気がついていなかったけど、食堂には沢山の佐藤くん状態の人達がいた。

「あの人達に「大食い大会に参加されるんですか?」と聞けば早いよね?」

 本当に大谷くん凄いです!観察眼が素晴らしいよ。

「じゃあ、善は急げで行ってくるね。ご馳走さまでした。」

 大谷くんは夕食のきつねうどんを食べ終わり、見知らぬ大食いくんの元に行ってしまった。

 俺と大谷くんが話している間も佐藤くんは食べる手を止めないで食べ続けている。今はミートソーススパゲティーを食べ終わりカツカレーを食べている。

「佐藤くんって昔からの大食いだったの?」

「ん?あ~、そうだな。俺は歳の近い男兄弟の中で育ったから何事も兄弟達と競っていたんだ。その中で唯一勝てると思ったのが食べる事だった。だから訓練のつもりで普段から食べるようになったんだ。」

 普段から訓練のつもりで食事をしていたんだ!それに驚きだよ。

「佐藤くんの兄弟って何人いるの?」

 カツを口にほりこみ今は話しづらいのか、
持っていた皿をテーブルに置いて空いた手で数を示した。

「5人いるの?」

 佐藤くんは頷いている。

「ほぉれを入れると6人兄弟ら。」

 たぶん俺を入れると6人兄弟だ…と言いたかったんだよね。全員男か…大変だな。

 そういえば…お兄さんがこの学校にいるって大谷くんが言っていたよな。

「佐藤くんのお兄さんってこの学校にいるんだよね?」

 目線だけを俺に向けて佐藤くんは頷いた。
カツカレーの皿がでかすぎるから顔が隠れていて佐藤くんの表情までは分からない。

 お兄さんと仲が良いのか悪いのか…。

「…兄貴は今年で卒業だ。」

 どうやらカツカレー一皿を食べ終わったみたいだ。皿をテーブルに置いて話してくれた。

「そうなんだね。全く話しているのを見たことがなかったから大谷くんから教えてもらうまで知らなかったよ。」

「兄貴は俺とタイプが違うからな~。どちらかといえば大谷くんに似ているよ。あっ、それに新聞部の部長だしな。」

「え!そうなの?」

 想像がつかないな…。佐藤くんのお兄さんだけどタイプ的には大谷くんみたいなクール系…?

 無理だ、俺の頭の中には陽気な佐藤くんをクールにしたイメージがわいてしまい思わず吹き出しそうになってしまう。

「あ…。」

 佐藤くんが不意に驚きの声を漏らした。目線の先を見ると…。

「お前は何をやっているんだ?」

 スラリとした長身で茶色の長い髪を後ろで一つにまとめている、メガネをかけた理知的な男性が立っていた。

「兄さん…。」

 佐藤くんは小さい声で言った。

「え…!にいさん?」

 俺は驚いて二人の顔を交互に見た。髪の毛の色は同じだけど顔とかは全然似ていないぞ。確かに雰囲気は大谷くんと同じだ。

「お前は…まさか大食い大会に参加するのか?」

 佐藤くんのお兄さんはメガネを触りながらテーブルの上に置いてある物を見ている。

「そうだけど。」

「止めておけ、お前くらいの大食いならどこにでもいるだろう。恥をかくだけだから今のうちに辞退しろ。」

 佐藤くんのお兄さんとは思えない発言だ。佐藤くんってポジティブな感じだけどお兄さんはどちらかと言うとネガティブな感じがする。

 二人の空気が怪しくなってきたよ…。

 どうしたらいいんだよ~!!!

 




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