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60. 第二回戦開始
しおりを挟む「おおっと、猛スピードで食べているのは佐藤兄だ~!弟も負けてない、良い勝負だ!!」
目の前で佐藤兄弟のデッドヒート。二人もと後ろに炎が見えるよ。
あ!りゅ、龍が興味を持ってるみたいだ。
佐藤兄弟のすぐ上に姿を見せているよ。
「佐藤くん、頑張れー!」
俺は思わず叫んでいた。今が龍についてもらえるチャンスだ!!
佐藤くんは片手を高く上げて俺の声援にこたえてくれたみたいだ。
いつもは隣にいるはずの大谷くんは新聞部の活動で今日はクラス席にいない。壇上のわきで取材をしているみたいだ。さっきから姿が見え隠れしている。
大谷くんはどっちを応援しているのかな?
友人としては佐藤くんだろうけど…新聞部としては部長の佐藤くんのお兄さんだよね。難しい立ち位置だな。
「ここにきてリタイアが続出だぁ~!!」
食パンはやはり食べにくいみたいで喉に詰まらせてギブアップする人が出てきたみたいだ。
「トップは変わらず佐藤兄弟。デッドヒートは継続中だー!!!」
自分達が決めておいて言うのもどうかと思うけど…よく食パンを大食いできるよね。俺なら一斤も食べる事はできないかも。コーヒーとか牛乳とかスープがあってゆっくりで良いなら一斤食べられるかもしれないけど…。
みんなは水だけでやっているんだよね。
何だか申し訳なく感じてきたよ。経費をけちらずにせめて牛乳くらいは出してあげれば良かった。みんな…ごめん。
「そろそろ第一回戦終了時間だ!さあ、ラストスパートをかけろーー!!!」
「「「「「おおおおお!!!」」」」」
会場の熱気がまたあがってきた。このまま行けば佐藤くんは一回戦通過するだろう。お兄さんもだけどね。勝負は次か…。
だけど龍が側を離れていないから次も佐藤くんには頑張ってもらわないとな。
次の食材って何だったかな?
えーと、食パンの次は…熱い物だと食べにくいんじゃないかということになって…。そうだ、思い出した!熱々の田楽だ!!
蒟蒻って安いし熱さがなかなか冷めないから食べにくくて経費が押さえられるよねって話したんだった。
佐藤くんって猫舌じゃないよね…。
お兄さんが猫舌だとラッキーなんだけどな。世の中そんなに甘くはないか。
ピー!!!!!
「一回戦終了!!」
やはり佐藤くんとお兄さん、二人とも一回戦を勝ち進んだよ。問題は次の田楽だよね…。
基本的に佐藤くんは好き嫌いないみたいだったけど今まで蒟蒻を食べているのを見たことないからわからないな。
「次の二回戦に進出できるのはこの8名だ!!!」
壇上では佐藤くんとお兄さんを含む8名が紹介されている。結構減ったな。でも皆の表情を見る限りかなり辛そうだけどな。食パンがお腹に溜まっているんだろう。口を押さえている人もいる。
次…田楽なんだよね。なんかごめん。
喉が渇くパンを食べさせた後で熱々すぎる田楽を食べさせるなんて考えたら酷いよな。反省します。
「次の二回戦の食材を知りたいかー!!」
「「「「「おおお!!!」」」」」
「次はこれだーー!!!」
司会者がまた料理にかけられた布をとった。
「熱々の田楽だーー!!!」
「「「「「………。」」」」」
会場内が静まりかえった。
「田楽?ってなんだ。」
「ほら、田舎の祖父母とかが出してくれる蒟蒻だよ。味噌をかけたりして食べる…。」
「蒟蒻?あー、あの灰色の食べ物か。」
あれ?こっちの世界では認知度が低いのかな?俺が提案した時は他の人達何も言わなかったんだけど…。もしかして、あれは理解していなかったとかなのか。
周りの反応を見て怖くなってきたよ。佐藤くん…大丈夫だよね。慌てて壇上の佐藤くんを見た。
佐藤くんの表情は…不思議そうな顔をしている。
これは田楽を知らないパターンもあるのか?
初めて食べるものを大食いするなんて考えられない!これって…ま、まずいよね。せっかく龍が寄ってきてくれているのにここでリタイアなんてことになったら俺の計画が全て泡になるよ。
佐藤くんの隣に座っているお兄さんを見ると、お兄さんは驚いた表情をしていない。…知ってるのか?
ヤバイ…これはお兄さんに有利な展開なのでは…。
もう俺って何で肝心な時に駄目なんだ。食材の選択ミスなんて。本当にごめん佐藤くん。
「味噌はつけ放題だからいくらでも食べてくれ!ただし、凄い熱いから火傷に注意だぞ。では二回戦スタート!!!」
ピー!!!
開始の音が鳴る。
佐藤くんは恐る恐る田楽を口に入れている。お兄さんは串に刺さっている田楽を何本も手に持っている。これは、冷ます作戦と見た。
あれ?
佐藤くんがものすごい勢いで田楽を食べ始めたよ。熱くないのかと心配するくらいの速さだ。
どうやらお兄さんは猫舌みたいだな。冷ましてからしか食べていない。
よし!逆転のチャンス!!
「佐藤くん!あとでアイス奢るから頑張れー!!」
その時佐藤くんの目が光った気がした。
気のせいだよね…?
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