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12. リリル様の自称婚約者
しおりを挟む今日も朝からいつものように淑女レッスンに励んでいます。
今はダンスレッスン中です。
「痛い!何回足を踏むつもり?」
リリル様の足をすでに5回程踏んでいます。
「…すいません」
ダンスは苦手なんだよね。
人と密着することが恥ずかしいというか…。
リリル様の場合は黙っていればイケメンなのでさらにドキドキがましているんだよ。
お兄様達もイケメンだと思っていたけど、リリル様御一家を見たら霞むわ…。
お兄様達…ごめんね。
「さあ、もう一度やってみましょう」
え?まだやるんですか?
「ちょっと、何をまだやるんですか?みたいな顔をしてるのよ…ミレーナあなた…」
リリル様が何かをいいかけた時レッスン場の扉が開いた。
「リリル様!私という者がありながら他の女性と2人きりなんて、どういう事ですの!」
赤毛に赤い瞳の美人が大声を上げて入って来た。
「サリハ様…マナーがなっていませんね」
リリル様が大きな溜め息をついた。
話し方も声のトーンもさっきまでとは違っている。
「誰ですの?!この女は」
サリハ様と呼ばれる女性はリリル様の前までやってきて私を睨んでいる。
「私の屋敷に行儀見習いに来ているご令嬢ですよ」
リリル様はサリハ様が抱きつこうとしているのを阻止しながら説明した。
「ふん!どうせ、リリル様目当ての女でしょ。残念ね、リリル様にはもう私という決まった人がいるのよ。わかったら、さっさと荷物をまとめてお帰りなさい」
サリハ様は鼻息荒く私を睨みながらそう言った。
だけど…どう見てもリリル様は嫌がっているようにしか見えないんですけど。
「サリハ様…何度も申しておりますが私とサリハ様は恋人でも婚約者でもありません。誤解を招くような発言は控えていただけませんか」
リリル様本当に嫌そうだ。
「まあ、リリル様ってば忘れましたの?私がリリル様の婚約者になって差し上げますわ…と何度も言っているではありませんか。遠慮なんてしなくて良いのですよ」
このサリハ様という方は心臓が鋼鉄か何かで出来ているのだろうか?
私から見てもリリル様の態度は嫌がっているようにしか見えないんですけど…。
私のお兄様も空気が読めないと思っていたけど、この人はその上をいっているわ。
「サリハ様…私も何度も申し上げているはずです。私は貴女と婚約する気はありません。これは、私の本心です。この様に突然訪問されたりしては困ります。お帰りください」
リリル様ハッキリ言った…けど相手に通じて無さそうです。
だって怒っているリリル様を恍惚の表情で見ています。
反省している感じには見えません。
『ミレーナ…誰だあのケバイ女』
さっきまで寝ていたビリー様がこんなタイミングで起きてしまいました。
「ケバイ女って誰のことですの?!」
あ~あ、サリハ様を刺激してしまった。
何だか嫌な気しかしませんけど…。
どうしよう~!?
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