秘密の公爵と淑女レッスン

縁 遊

文字の大きさ
35 / 50

35. 街に出てみたけど

しおりを挟む


「ミレーナ、何処に行くんだ」

今日の監視当番はアイドお兄様ですね。

アイドお兄様なら簡単に騙せるかも…。

「お手洗いです。恥ずかしい事を言わせないで下さい。ついて来ないで下さいね」

私はお兄様を睨みながら言った。

「わかったよ。ここで待っている」

よし!

私はお手洗いに行くふりをして、裏の勝手口から外に出た。

お兄様は私の部屋の前にいるだろうから、庭側の窓は見ることができない。

私は庭から屋敷の外に出ようと考えているのだ。

私が外に出たと気づくのはアイドお兄様なら遅いと思う。

きっと、長いお手洗いだな~くらいにしか考えていないと思うから。

アイドお兄様はそんな人だ。

私は急いで庭を抜けて屋敷の外に出た。

久しぶりに街に出て来たが…気のせいかな、人に見られている様な気がするのだけど。

今は気にしてる時間もないわね。

とりあえずは若い男の人達の集まりそうな所に行かないと屋敷を抜け出して来た意味がない。

キョロキョロと周りを見渡していると、知らない男性から声をかけられた。

「綺麗なお嬢様、何かお探しですか?」

綺麗なお嬢様?私の事?

「不思議そうな顔をしてどうされましたか?」

やはり私の事みたいね。

男性は馴れ馴れしく私の手に触れてきた。

「僕が一緒に探してさしあげますよ。だけど、その前にお茶しませんか?そこに美味しいケーキのお店があるんです」

強引に私の手を引き店に連れて行こうとする。

「あの…私は…」

嫌だ!行きたくない!と言いたいのに言葉が出てこない。

リリル様で男性に慣れたつもりでいたが…。

全然ダメじゃないか~!

男性に掴まれた手には鳥肌がたっている。

そんな私の様子に気づかない男性は、まだ私を引きずるように店に連れて行こうとしている。

誰か…助けて~!

「ごめん…。待たせたね」

その時、私の肩を叩く人物が現れた。

「リリル様…。どうして…」

リリル様の顔を見ると何だかホッとしてしまった。

気がつくと涙が溢れていた。

「だ、誰だよ!彼女は俺とお茶に行くんだから邪魔をするな!」

男性はリリル様に向かって怒鳴っている。

「すまないね。彼女は僕の婚約者で待ち合わせをしていたんだよ。僕が時間に遅れてしまったから誤解をされたみたいだね…」

「なっ、それならそうと早く言えよ!」

男性は私の手を投げつけるように離して、私達からも離れて行った。

「ミレーナを見つけた時は驚いたわよ…」

お姉さん言葉に戻ったリリル様が私を抱き寄せて頭を撫でてくれている。

「姉の買い物に付き合わされて店の外で待っていたらミレーナの姿が見えて…久しぶりに全力疾走したわ…。本当に何をやらかしているのよ」

「ごめんなさい…。ありがとうございました」

リリル様が来なかったら…そう考えると余計に涙が止まらない。

「もう…仕方ないわね。ほら、そこのベンチに座りましょ」

リリル様がベンチにハンカチをひいてその上に座らせてくれた。

その日はリリル様のお姉様がやって来るまでリリル様の肩を濡らして泣いていた。

全然成長してないじゃないか私!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

君を探す物語~転生したお姫様は王子様に気づかない

あきた
恋愛
昔からずっと探していた王子と姫のロマンス物語。 タイトルが思い出せずにどの本だったのかを毎日探し続ける朔(さく)。 図書委員を押し付けられた朔(さく)は同じく図書委員で学校一のモテ男、橘(たちばな)と過ごすことになる。 実は朔の探していた『お話』は、朔の前世で、現世に転生していたのだった。 同じく転生したのに、朔に全く気付いて貰えない、元王子の橘は困惑する。

皇帝陛下!私はただの専属給仕です!

mock
恋愛
食に関してうるさいリーネ国皇帝陛下のカーブス陛下。 戦いには全く興味なく、美味しい食べ物を食べる事が唯一の幸せ。 ただ、気に入らないとすぐ解雇されるシェフ等の世界に投げ込まれた私、マール。 胃袋を掴む中で…陛下と過ごす毎日が楽しく徐々に恋心が…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

27歳女子が婚活してみたけど何か質問ある?

藍沢咲良
恋愛
一色唯(Ishiki Yui )、最近ちょっと苛々しがちの27歳。 結婚適齢期だなんて言葉、誰が作った?彼氏がいなきゃ寂しい女確定なの? もう、みんな、うるさい! 私は私。好きに生きさせてよね。 この世のしがらみというものは、20代後半女子であっても放っておいてはくれないものだ。 彼氏なんていなくても。結婚なんてしてなくても。楽しければいいじゃない。仕事が楽しくて趣味も充実してればそれで私の人生は満足だった。 私の人生に彩りをくれる、その人。 その人に、私はどうやら巡り合わないといけないらしい。 ⭐︎素敵な表紙は仲良しの漫画家さんに描いて頂きました。著作権保護の為、無断転載はご遠慮ください。 ⭐︎この作品はエブリスタでも投稿しています。

〜仕事も恋愛もハードモード!?〜 ON/OFF♡オフィスワーカー

i.q
恋愛
切り替えギャップ鬼上司に翻弄されちゃうオフィスラブ☆ 最悪な失恋をした主人公とONとOFFの切り替えが激しい鬼上司のオフィスラブストーリー♡ バリバリのキャリアウーマン街道一直線の爽やか属性女子【川瀬 陸】。そんな陸は突然彼氏から呼び出される。出向いた先には……彼氏と見知らぬ女が!? 酷い失恋をした陸。しかし、同じ職場の鬼課長の【榊】は失恋なんてお構いなし。傷が乾かぬうちに仕事はスーパーハードモード。その上、この鬼課長は————。 数年前に執筆して他サイトに投稿してあったお話(別タイトル。本文軽い修正あり)

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...