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35. 街に出てみたけど
しおりを挟む「ミレーナ、何処に行くんだ」
今日の監視当番はアイドお兄様ですね。
アイドお兄様なら簡単に騙せるかも…。
「お手洗いです。恥ずかしい事を言わせないで下さい。ついて来ないで下さいね」
私はお兄様を睨みながら言った。
「わかったよ。ここで待っている」
よし!
私はお手洗いに行くふりをして、裏の勝手口から外に出た。
お兄様は私の部屋の前にいるだろうから、庭側の窓は見ることができない。
私は庭から屋敷の外に出ようと考えているのだ。
私が外に出たと気づくのはアイドお兄様なら遅いと思う。
きっと、長いお手洗いだな~くらいにしか考えていないと思うから。
アイドお兄様はそんな人だ。
私は急いで庭を抜けて屋敷の外に出た。
久しぶりに街に出て来たが…気のせいかな、人に見られている様な気がするのだけど。
今は気にしてる時間もないわね。
とりあえずは若い男の人達の集まりそうな所に行かないと屋敷を抜け出して来た意味がない。
キョロキョロと周りを見渡していると、知らない男性から声をかけられた。
「綺麗なお嬢様、何かお探しですか?」
綺麗なお嬢様?私の事?
「不思議そうな顔をしてどうされましたか?」
やはり私の事みたいね。
男性は馴れ馴れしく私の手に触れてきた。
「僕が一緒に探してさしあげますよ。だけど、その前にお茶しませんか?そこに美味しいケーキのお店があるんです」
強引に私の手を引き店に連れて行こうとする。
「あの…私は…」
嫌だ!行きたくない!と言いたいのに言葉が出てこない。
リリル様で男性に慣れたつもりでいたが…。
全然ダメじゃないか~!
男性に掴まれた手には鳥肌がたっている。
そんな私の様子に気づかない男性は、まだ私を引きずるように店に連れて行こうとしている。
誰か…助けて~!
「ごめん…。待たせたね」
その時、私の肩を叩く人物が現れた。
「リリル様…。どうして…」
リリル様の顔を見ると何だかホッとしてしまった。
気がつくと涙が溢れていた。
「だ、誰だよ!彼女は俺とお茶に行くんだから邪魔をするな!」
男性はリリル様に向かって怒鳴っている。
「すまないね。彼女は僕の婚約者で待ち合わせをしていたんだよ。僕が時間に遅れてしまったから誤解をされたみたいだね…」
「なっ、それならそうと早く言えよ!」
男性は私の手を投げつけるように離して、私達からも離れて行った。
「ミレーナを見つけた時は驚いたわよ…」
お姉さん言葉に戻ったリリル様が私を抱き寄せて頭を撫でてくれている。
「姉の買い物に付き合わされて店の外で待っていたらミレーナの姿が見えて…久しぶりに全力疾走したわ…。本当に何をやらかしているのよ」
「ごめんなさい…。ありがとうございました」
リリル様が来なかったら…そう考えると余計に涙が止まらない。
「もう…仕方ないわね。ほら、そこのベンチに座りましょ」
リリル様がベンチにハンカチをひいてその上に座らせてくれた。
その日はリリル様のお姉様がやって来るまでリリル様の肩を濡らして泣いていた。
全然成長してないじゃないか私!
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