男装令嬢の願い

10. 親愛なるお姉様

大変な事になってしまった…。

たった一度だけ…抱かれただけ…しかも相手は夢だと思っているのに…妊娠してしまった。

神様は意地悪です…。

女なのに、男として生きなければいけない私の密かな願いをたった１つ叶えただけなのに…。

それが、こんな事になってしまうなんて。

しかも、縁談の話が出ているこんな時に…。

でも、お腹の子には罪はない。

私とクリフ様の子供…産みたい…。

だって、クリフ様に抱かれたあの日に自分の隠していた気持ちに気がついてしまった…。

クリフ様が好きだって…。

ずっと尊敬の気持ちだと思っていたけど…それは、自分の気持ちをごまかす為にそうだと自分に思い込ませていただけだった。

だけど…。
産みたいけど…今の状態では無理だ。
家族に気づかれると、間違いなくこの子は殺されるだろう。だって、私は男でなくてはならないのだから…。

レオンは妊娠などしない…。

それに、お城での仕事もすぐに辞めることなどはできないし、クリフ様にこの事を知られてはいけない。

クリフ様が知ると、別の問題が出てくる。

この子は第一王子の最初の子供…王族の一員になるのだが…。

レオナはこの世にもういない…。
産まれる子供は、幽霊が産んだ子供になってしまうのだ…。

王族の一員は出自がはっきりしていないといけない。
それなのに、母が不明なんて論外だ。

この子はどうなるんだろう…。

いくら考えても良い方法が浮かばない…。

「レオ様…大丈夫ですか？」

侍女のマリーが心配している。
マリーにはクリフ様の事も何があったのかも全部話しをした。

「マリー…どうしたらいいのかな…」

「そうですね…一度、レリア様に相談されてみてはいかがですか？」

レリアお姉様か…。

そうね、私の味方をしてくださるのは、レリアお姉様しかいないわね。

「そうね。一度お手紙を書いてみる」


　　　　親愛なるレリアお姉様

拝啓、如何おすごしでしょうか。

私は相変わらずレオンとしての人生を歩んでおりましたが、１度だけ女性として過ごしたいという願いを叶えた所…大変な事になってしまいました。

…子供を授かったのです。

お相手は言えませんが、どうしても産みたいのです。

両親はまだ、気がついていません。
もちろん、秘密で産むつもりです。

１人で考えていたのですが、良い方法が思いつかず、お姉様にお知恵を借りたいと思い、お手紙をかきました。

お姉様…助けて下さい。
私はどうしたら良いのでしょうか。

　　　　　　　　　　　　　　　　　レオナ


私は手紙をマリーに渡した。
マリーは、一番早く届く方法で出してきます、と言って出ていった。


神様…お願いですからこの子をお助けください。