男装令嬢の願い

縁 遊

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32. 記憶の戻し方

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朝早くから屋敷を出て、マリーの知り合いの女医さんの所に向かった。

「マリー、こんなに早くから大丈夫なの?」

「大丈夫です。レオ様の貴重なお時間は有効に使わなければいけません」

マリーって、たまに分からないのよね…。

「でも、女医さんは大丈夫なの?」

「気にしないで下さい。大丈夫ですから…。あっ、到着しました」

マリーと会話しているうちに到着しました。

「ウルラー!来たわよ」

マリー…朝から元気だ。

「はい、はい。聞こえてるわよ」

眠そうな女性が部屋の奥から出てきた。

この人がウルラさんか…。

マリーの話では前にお会いしたみたいだけど…全然思い出さない…。

すぐに、診察が始まった。

「頭が痛いとかはないですか?」

「はい。あっ…何かを思い出そうとした時は頭が痛くなるんです」

「普段は大丈夫なのね…」

「あの…無くなった記憶を取り戻す方法とかってあるのでしょうか?」

私は思いきって女医さんに聞いてみた。

「う~ん…。これだというのは今のところ無いわね。ただ、退行催眠みたいなのはしたりするわね」

「退行催眠ですか?」

聞いた事がないですけど…大丈夫ですか。

「本当は占い師が前世を知るためにやっていたりするんだけど、たまに記憶を思い出すのに使うのよ」

「そうなんですね。私は何をすれば良いのですか…」

「貴女は、ただリラックスして寝るだけで良いのよ」

そんな簡単な事で記憶が戻るんですか…。

「やってもらえますか…それ…」

「わかりました。では、あちらのベッドに寝てもらえますか?」

部屋の角にあるシンプルなベッドに寝ころんだ。

「リラックスして下さいね。大きく深呼吸して…目を閉じて下さい。下に降りていく階段を想像してください。見えましたか…見えたらその階段をゆっくり降りて下さい」

女医さんの指示に従った。

「階段を下りると扉が見えます…開けて下さい。そこは3カ月前の貴女がいる世界です。周りが見えますか…」

扉を開けるとウィッグをつけてドレスを着た私がいた。

こんな格好をしていたのか…。

あっ…お姉様だ。

2人で買い物をしているのね。

あれ?

何だか少しふっくらとしている様な…。

女医さんの声が聞こえてきた。

「歩いているとまた、扉が目の前にあります。開けて下さい…」

扉…あった。

「開けるとそこは今よりまた3カ月前に戻ります…」

私を見つけた…けど…やっぱり…お腹の辺りが…。

この時は幸せで食べ過ぎていたのかしら…。

あれはクリフ様…。

ここで私を見たのね。

「…さあ、また扉が見えてきました。もっと前に戻りますよ…」


一体、どこまで戻るのだろうか…。

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