男装令嬢の願い

縁 遊

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52. 初顔合わせ

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考えがまとまらないうちに婚約者との顔合わせの日が来てしまった。

素直に2人になった時に断るべきか…。

「レオン、お相手のお嬢様がいらっしゃいましたよ」

お母様の声で振り向くと、そこには小太りの人の良さそうな中年の男性と顔を下に向けたままの女性の姿があった。

「この度は家の娘なんかを婚約者に選んで頂きまして、ありがとうございました奥様」

「フフッ…フリッツ男爵こちらこそ多額の寄付を感謝しますわ」

寄付?

まさか…お金と私を交換をしたの?

「ほら、ナナリー挨拶しろ」

フリッツ男爵が娘の背中を押している。

「…初めましてレオン様。ナナリーと申します」

「初めましてレオンです」

顔は相変わらず下を向いたでよく見えない。

身体は小さくて幼い様に見える。

「奥様、今日は良いお品物が手に入りましたのでそちらもお持ちしたのですが…ご覧になられますか?」

どうやら、商人から爵位をもらった人物みたいだな。

「まあ、何かしら。興味がありますわ」

「では、私達はあちらでお話をしましょう。2人も沢山お話をしなさい」

お母様はそう言って部屋から去って行った。

「ナナリーさんと呼んでよろしいですか?」

「…はい」

彼女はまだ俯いている。

「では、ナナリーさんお茶でも飲みながらお話をしませんか?」

「…はい」

緊張しているのかな…。

1度も顔を上げない。

「どうぞ…ローズティーです」

マリーがナナリーさんの前にローズティーを置いた。

「いい香り…」

やっと顔を上げた…。

まだ、幼さの残る顔立ちをしていた。

「失礼だとは思うのですが…ナナリーさんのお歳を聞いてもよろしいですか?」

「…今年で10歳になりました」

10歳…幼いはずだ…。

なるほどね…両親は幼ければ子供ができなくても怪しまれる事がしばらくはないと考えたんだな…。

「そうですか…。今日はお父様から何と言われて来たのですか?」

「今日は素敵なお兄様に会わせてくれると聞いて来ました」

婚約の事は言っていないのか…。

「…美味しい」

緊張していた顔が笑顔になった。

どうしよう…。

この少女に婚約破棄の話をしても無駄だよね。

父親に言わないといけないけど…聞いてくれるかな。

お母様と懇意にしているみたいだったよね…。

ここは、このままにしている方が良いのかもしれない。

取り敢えず今日は何も言わない事にしよう。

この少女の年齢を考えれば今すぐに結婚とはならないだろうから…。

そう考えていた私は両親を甘く見ていた事をこの後後悔する事になる…。
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