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64. 準備
しおりを挟む今日はクリフ様が急用が出来たとかで、お休みをとられている。
こんな事は珍しい。
仕事だと必ず私に同行の声がかけられるので、仕事ではないのかな?
でも、顔を見なくて良かったかもしれない。
私を好きだ…と言ってくれたクリフ様の顔をまともに見れる気がしない。
クリフ様は他の方に私がレオナだとは言っていないらしく、仕事場はいつも通りの雰囲気だ。
今日は顔を合わさないように仕事をしようと思って来たけど、いないのならいつも通りにできる。
でも、これからどうしよう…。
結局、私はクリフ様に私も好きだと告げていない。
あの後、クリフ様が今すぐに答えは出さなくて良いよ…と言ってくれたから。
ただ、アルス様の提案はすぐに断ってきてねと言われた。
その日のうちにアルス様には手紙を書いてお断りした。
クリフ様は婚約者の件は僕が考えるから少し時間をくれる?と言っていた。
どうするおつもりなのだろうか…。
だけど…まずはクリフ様との事を考えないといけないのかな。
もし、クリフ様と付き合うとなると…やっぱり、リオンの事を話さないといけないよね。
それに、クリフ様は旅先での事を覚えていないかもしれないし…まずはそこからか…。
でも、どう説明する…恥ずかしすぎるよ。
それに、リオンの事がわかればクリフ様は結婚すると言い出すだろうな…。
本心を言えば私だってクリフ様と結ばれてリオンと3人で幸せに暮らしたいと思うけど…クリフ様はこの国の王子様…気持ちだけではどうにもならない問題もある。
いつも、堂々巡りだな…。
幸せと不幸は隣り合わせだって誰かが言っていたけど本当だな…。
私の幸せは何なんだろう…。
普通に女性として生きたい。
好きな人と一緒にいたい。
子供と一緒に暮らしたい。
どれも叶うことのない私の夢に終わるのだろうか。
フフッ…私は気づいてしまった。
レオンが生きていた頃の私の幸せは、レオンと過ごす時間だけだった。
普通に女性として生きることも諦めていたし、好きな人ができるなんて思ってもみなかった。
ましてや、自分が子供を産むなんて…。
思い返してみれば、生きる事に欲がでてきたのね。
ただ静かに時間が過ぎるのを待っていた幼い頃の自分が今の私を知れば驚くだろう。
あの頃は自分は人形なんだと思い込もうとしていたもの…。
感情を殺して、両親の言うままに生きて…。
そう考えると…恋って凄いのね。
クリフ様を好きになって全てが変わった。
恋をしなければ今の私はいない、昔の人形のような私が今もいたのだろう。
だけど、その恋を教えてくれたクリフ様に迷惑はかけられない…。
やはり…最悪の事態を予想して用意しなければいけないかも…。
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